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文明の進歩は一直線ではない。

近代文明の飛躍的な発展は人類の生活を一変させた。
とくに二十世紀の航空機の普及やインターネットの発明は、地球上の距離や空間の制約から人間を物理的にも心理的にも劇的に自由にした。
人類の生活は、百年前と比べてどんなにか、豊かで、便利で、快適になったことだろう!

もちろん、文明の進歩によって、戦争や貧富の格差やパンデミックといった問題が解消されたわけではない。それどころか、行き着くところまで来た近代文明は、いまや地球環境に大きな副作用をもたらしつつある。
今日の環境問題の代表とされるのが、地球温暖化と海洋プラスチック汚染だろう。
特に地球温暖化は、ここ数年、世界中で毎年のように繰り返される豪雨災害や森林火災の一因であるともされる。

私は、子どもの頃から、文明による環境破壊は最終的には人類を滅ぼすことになるだろうと漠然と考えていた。ひょっとしたら、恵まれた一部の人びとだけは新たな星を求めて宇宙空間に脱出できるかもしれない……などと。

しかし、今では、そのような破局は避けられると楽観的に信じている。
世界中で環境意識の高まりが不可逆的に進行していることが理由の一つだ。

EUをはじめ多くの国が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げている。世界最大のCO2排出国である中国も「2060年に排出実質ゼロ」目標を発表した。
そして、つい先日、日本でも菅首相が「2050年排出実質ゼロ」目標を宣言するに至った。
もし、バイデン氏が大統領に就任することになれば、アメリカも早々に同様の目標を打ち出してくるだろう。

そうなのだ。文明の進歩は一直線でなくてもよい。必要であれば回り道や方向転換だってすればよいのだ。
先進国では、すでに多くの国で、化石燃料から再生可能エネルギーへの燃料転換が進んでいる。それに伴い、産業構造も大きく変わりつつある。

自動車もガソリン車から電気自動車(EV)や水素で走る燃料電池車(FCV)へと徐々にシフトしていくだろう。
金融分野では、ESG(環境・社会・ガバナンス)が投資先を選別する上での判断基準となり始めている。例えば、石炭火力発電所を開発する企業に対して、金融機関が融資を停止する動きが広がっている。

要するに、市場全体が、環境分野のイノベーション(技術革新)を積極的に後押しする時代となった。

そのような時代の要請に応え、人間の英知は、さまざまな分野で困難な技術的要求をクリアし、非連続的なイノベーションを実現して、高度な環境技術によって現在の危機をきっと乗り越えていくだろう。

化石燃料がカーボンニュートラルなエネルギー源に100%代替されれば、必然的に、石油や天然ガスを原料とするプラスチックは別の素材に置き換わることになる。
もし、航空燃料がすべて石油から水素に変わる日が来たら、グレタさんだって飛行機に乗ろうと思うかもしれない。

その時、文明は、現在よりもさらに高い水準に「進化」したと言えるのではないだろうか。
そう考えると、未来への希望でワクワクしてくるようだ。

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