見出し画像

『ラストナイト・イン・ソーホー』を観て

今年のクリスマス・イブ、家族はそれぞれ予定があったので、一人で映画『ラストナイト・イン・ソーホー』を観た。

きっかけは、娘が「観たい」と言っていたことと、ネットフリックスのドラマ『クイーンズ・ギャンビット』のアニャ・テイラー=ジョイが出演していて興味をひかれたことくらいで、ほとんど予備知識もなく観た。

東京ミッドタウン日比谷の座席数の少なめなSCREEN6、16時過ぎの回は、平日だというのに満席に近かった。クリスマスということで、やはりカップルが多かったようだ。

主人公のエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)はデザイナー志望、念願かなってロンドンのファッション・カレッジに合格を果たし、コーンウォールの田舎町から単身上京する。相部屋の学生の横暴ぶりに悩まされて早々と寮を飛び出し、ソーホー地区に手ごろな下宿部屋を見つけ、一人暮らしを始める。
しかし、エロイーズは、その部屋で眠りにつくたびに60年代のソーホーに迷い込んでしまう。その世界で、エロイーズは、自分の分身のような歌手志望の美しい娘サンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)と出会い、強く惹かれていく……。

「こんな設定の映画、前にも観たな。そうだ、ウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』だ……」と思いながら、どんどん映画の世界に引き込まれていった。

そして、ラストが近づくにつれ、思わぬ展開に仰天したり、はらはらしたり……、最後にはじわっと涙が出た。


いい映画でした。今年いちばんでした。(あまり見てないけど。)


ジャンルとしてはホラーに分類されているが、そんなに怖くはなかった。むしろ、ドラマとして、ファンタジーとして、秀逸な作品だ。

主役のトーマシン・マッケンジーも、アニャ・テイラー=ジョイも、素晴らしかった。

全編を通して流れる60年代の楽曲が独特な世界を効果的に演出していた。
特に主題歌「A World Without Love」のなつかしいメロディが、我々の世代の郷愁をさそう。

映画の内容について触れようとすると、ネタバレになりそうなので、やめておく。この映画は、ネタバレ厳禁だ。

ただ、映画の出来については、終了後の劇場の雰囲気がしっかりと物語っていた。

誰もが覚えがあるのではないだろうか?

良い映画は、観終わった後に、たまたま劇場に居合わせた観客同士が共有する余韻のようなものがある。
長引くコロナ禍で、声高に感想を表現する観客はほとんどいないが、口に出さなくても劇場全体が感動の余韻に包まれていることが実感できる。

この映画を観て、そんなささやかな幸せを体験できた。

いいなと思ったら応援しよう!