還暦おやじのスタディアブロードWith ウクレレ㊽ 備前焼を英語で説明
備前焼を英語で説明
マーガリンに成田で録音した飛行場でのアナウンスの書きおこしをお願いしようとしたら、最初の一時間はウクレレの朝練の話になってしまった。
そして後半の一時間は今日の自己紹介の話題となってしまったので、私の持参した本でのレッスンはページも進まなかった。
しかし備前焼についてインバウンド来日された方に英語でどのように説明すればよいのか一緒に考えるというレッスンは勉強になった。
マーガリンから教えて貰ったように、分割して細かいところは気にしないで簡単な文章として説明文を作ってみた。
「The production area of Bizen ware is around Bizen city, Okayama Prefecture.」備前焼は岡山県備前市周辺を産地とする。
「One of the six old kilns in Japan.」日本六古窯の一つだ。
「It uses no glaze and does not draw pictures.」備前焼は釉薬を使わないし絵も描かない。
「It takes many days to fire.」焼成に何日もかかります。
「History goes back to the Kofun period.」歴史は古墳時代まで遡ります。
「It made of local pottery soil.」備前焼は地元の陶土で出来ている。
※「made of.」は、見て材料が分かる時で「made from.」は、見て材料が分からない時。と彼女が教えてくれた。
「Each one is handmade.」一つ一つ手造りです。
「It is used as a daily necessities.」実用的な日用品として使用されています。
「The color changes and becomes beautiful as you use it.」使用するにつれて色が変化し、美しくなります。
「So no one is the same.」同じものが一つもない。
「Please enjoy the charm in your daily life.」その魅力を日常生活で楽しんでください。
これぐらい説明が出来ればよいらしい。
マーガリンはベテランだけあって、フレーズをただ暗記させるだけなく確り考えさせるレッスンをしてくれるので、発音や文法のミスには鬼のように厳しいけど先生としては優秀だ。
マーガリンとのレッスンの後、lineをチェックしてみると、今日も代官からの沢山猫の写真が届いていた。
毎日大量に来るので、適当に見て返事を送信していたが、その中に日曜日の施設の見学について尋ねる内容があった。
それを見てハッとさせられた。そういえばまだフルーツに聞いていなかった。夕食時には必ず聞いて代官に送信しなければならないと、今日やる事リストに追加した。
チャックの行動力にビックリ!
夕食にはまだ間があったが早めに行って事務室にいるフルーツに会った。そして日曜日の高齢者施設の見学について相談させて貰ったらパンフレットを手渡してくれて、日曜日なら何時でもOKとの快諾を得ることが出来た。
食堂の高齢者テーブルに腰かけてパンフレットの外観写真や間取り図を写真に撮って、Lineでメッセージと共に代官に送信したらすぐに返信があった。
内容としてはイベント後に見学をさせて欲しいという事だったので、その旨を事務室に戻ってフルーツに伝えた。
食堂ではスタッフが料理を並べ始めているところだったので、学習者はまだ誰も来ていなかった。私は高齢者テーブルでパンフレットをぼんやり眺めていた。
シ:「Hi! Shige. What are you doing?」やぁ、シゲ。何しているの?
鍵:「Yeah! ショウコ。フルーツから貰った高齢者施設のパンフレットをみているんだが、フルーツの旦那が経営している施設は、アクティブシニアハウスなんだね。」
マ:「シゲも探しているのかい?」
鍵:「いや友達が探しているという事だから、日曜日のイベントを観に来てくれた時に施設を案内して貰う予定なんだ。」
マ:「そうなのか。ところで僕らは明後日の木曜日に、ウクレレの練習会をするんだけどシゲも来ない?」
シ:「そうね。シゲが来てくれると心強いわね。」
鍵:「えっ、どこまで行くの?」
シ:「この間チャックが連れて行ってくれたお店よ。二人で初心者向けにウクレレのレッスンをするのよ。午前中だけだけど。」
鍵:「凄いなぁ。誰に教えるの?」
シ:「店主とチャックの知り合いから始めるらしいわよ。」
マ:「店主家族もウクレレを始めるらしい。」
鍵:「面白そうだね。ところで、ウクレレはどうするの?」
シ:「チャックがお店にプレゼントするそうよ。やるわよね、彼女。」
マ:「スラム街から脱出することが出来た人達を中心に、ウクレレの会を作るらしいよ。ゆくゆくはメイドさん達にも参加して貰いたいんだって。」
鍵:「チャックの行動力は凄いね。金曜日は英会話のレッスンがあり、キャンセルするわけにはいかないので僕はパス。」
シ:「あら、私たちもレッスンはあるわよ。そして、キャンセルしないわよ。先生をタガログ語の通訳として連れてゆくの。スクールにはチャックが話を通してくれたわ。」
鍵:「ひぇ~。やることが大胆だね。参りました。でも、やっぱり僕はパスという事で。それにしてもスラム街の子供たちに教えるのではないんだ。」
マ:「僕もそんな風にチャックに言ったら。馬鹿なこと言わないで、彼らは食べるのが必至でそんな余裕はなんてないって一蹴されちゃったよ。
彼女曰くスラム街の子供たちを救うには、彼らのブレッドオーナーを稼げるようにさせる事が先決なのだそうだ。」
シ:「今日生きるか死ぬかという貧困は、私たちの想像をはるかに超えているそうよ。その現実に寄り添うと人生観もなにもかも変わってしまうので、生半可な覚悟なら踏み込んではいけないと、彼女は言っていたわ。」
鍵:「僕にはそんな覚悟はないので、関わらないようにするよ。」
途中でチャックも参加してくれて、亡くなったご主人が「もし世界が100人の村だったら」という本から抜粋して “もし銀行に預金があり、お財布の中にお金があり、家のどこかに小銭が入った入れ物があるなら、あなたは世界の中でもっとも裕福な上位8%のうちのひとりです” そのことに感謝しなくてはならない。と何時もいっていましたわ。
そして、恵まれているあなたは、恵まれない人の為に力を貸してあげなければならない。しかし大切なことはただ物やお金を渡すだけではダメで、技術などを教えることが大切だ。
そしてスラム街の現状についてレクチャーを受けた。そんな話を聞いてみると普通に食事が出来るありがたさを痛感させられた。チエとユリは我々が深刻そうな話をしていることを察知して、会話には加わってこなかった。
4人に、僕の部屋で後ほど会いましょうと言って席を立った。そしてトレーを片付けるために歩き出したときに、サトエが立ちあがって“Thank you for the directions, Shige”という声を掛けてくれた。
サトエは “指示をありがとう” という意味でこのフレーズを使ったようだが“Advice”の方がしっくりくるけどなぁ。なんて、一瞬マウントを取ってしまった。いけねぇ、いけねぇ。とすぐに反省した。
それにしても彼女の周りには自己紹介前にポツンと一人でいたのとは大違いで、沢山の仲間達がいて会話を楽しんでいた。
僕は彼女に向けてサムアップして心の中で良かったねサトエちゃん、といいながらやさしいおじいちゃんの顔になって食堂から部屋に向かった。
ナイトウクレレ練習会
開け放しているドアからショウコが “いいかしら”と言いながら手ぶらで入ってきた。その後からお供のようにウクレレ2台を背負って、両手にビニール袋を抱えたマサシが入ってきた。
マサシが、手に持ってきたビニール袋のなかみは飲み物とお菓子で、それを皆でいただきながらウクレレの練習をするという彼の思いだったようだが、実際にはそうはならなかった。
ショウコの第一声はチャックを誘ったけど断られちゃったのだった。それは何よりだったと胸をなでおろした。
彼女に来てもらったらウクレレの練習どころではなくなってしまうので、来てほしくないというのが本音だが。そこは、大人の対応として。
鍵:「そうですか。それは残念だね。チャックは他に予定があったの?」
シ:「いいえ。彼女は音楽が大嫌いだからだって。」
マ:「そういえば、チャックはカラオケのイベントにも来たことないな。」
ごめん、ごめんといって、ユリとチエが部屋に入ってきた。
チエがウクレレを背負って、手にはもう一台のウクレレを持っている。そして、ユリが大きな袋を背負っていた。
色白でこぢんまりしたチエと大きな袋を担いだ恰幅のよいユリが白うさぎと大黒様に見えて、笑いをこらえるのに苦労した。
鍵:「その袋どうしたの?」
ユ:「マーガリンから借りたのよ。」と言いながら、袋から取り出して見せたのは着物だった。
鍵:「それどうするの?」
ユ:「高齢者施設での慰問の時に、使えればと思って借りてきたのよ。浴衣セット。」
チ:「踊りたいですわ。」
マ:「♪ふるさと♪と♪赤とんぼ♪を我々がウクレレで演奏して、二人が歌うって聞いていますが?」
チ:「そうなんだけど、シゲは東京音頭を弾けないかしら。」
鍵:「楽譜があれば弾けると思うけど・・・・。」
ユ:「けど?」
鍵:「彼らに聞いてみないといけないだろう。」
ユ:「シゲが英語の歌を弾き語りする予定のところを、東京音頭に替えてくれたら嬉しいわ。日本人の高齢者の人達だって一緒に歌えるし踊れるわよ。きっと、それに浴衣を見て日本を懐かしんでくれるといいじゃない。」
チ:「そうよねぇ。童謡を歌う時もジーパンにTシャツよりも浴衣の方が喜んで貰えると思いますわ。マサシ君もそう思うでしょう。チョットこれ着てみて。」
その言葉に促されて、マサシが浴衣を着た。
シ:「マサシ君、似合うよ。浴衣が短いから西郷さんみたいでかわいい!」
マ:「おいどんは、マニラが好きでごわす!って、あそこまで太ってはないとは思うけど、似ているって言われたことはあるよ。」
ユ:「ウケるわ~。マサシ君は眉毛が濃いからじゃない。その恰好で東京音頭踊ったらどう、踊れる?」
マ:「僕らの年代は、みな東京音頭は踊れるはずだよ、小学校の運動会でやったから。」
鍵:「そういえば、クラスの女の子達と待ち合わせして、町内会の祭りで踊ったなぁ。」
シ:「だれか浴衣を着せられる人いるの?私はむり、角帯だって締められないわ。ユリとチエはどう?」二人とも首を横に振っている。
ユ:「この中にはいないようだわね。これ借りる時にフルーツに聞いたら必要なら探してみるっていってくれたわ。」
シ:「チャックとかできそうよね。今Lineしてみるわね。それに自己紹介で作務衣着ていた人とかに聞いてみない?皆で探しましょうよ。なんだか学園祭みたいになってきて、わくわくしてきたわ。シゲは心当たりない?」
鍵:「マニラで働いている日本人の知り合いに、誰かいないか聞いてみるよ。それにしてもこの盛り上がりじゃ、東京音頭は確定みたいだね。ノートパソコンで動画を一緒に見て練習しよう。」といって、ノートパソコンで東京音頭のウクレレ演奏動画を見ていたら、女性たちはいきなり踊りだした。そして、マサシもショウコに呼ばれて参戦したが、部屋が狭いのでその場で踊るしかなかった。
その日のナイトウクレレ練習会は、一度もウクレレを弾くことなく終わってしまったが、ショウコの指示で役割分担が決まったことでみなが学園祭のノリになってきた。
それにしても、盆踊りは日本人のルーツだという事を再確認した夜だった。しかし、そんななかでも練習会の最後に、イベントとはまったく関係ない炭坑節を踊ってお開きとなるなんてもう笑うしかなかった。
着付けの出来る人探しは、早速ショウコが動いてチャックにlineをしてくれたが、彼女から “着付けなんて出来ないという” 返事が来た。
私も代官にlineをしてみたら日本人スタッフにはいない。フィリピン人スタッフに自分で和服を着ることが出来る人がいるけど、日曜日に高齢者施設まで来てくれるかどうかわ分からない。という返事だった。
それで、我々のメンバーの中では英会話スキルが一番高いショウコが、明日の朝、作務衣で自己紹介したおやじに聞いてみることになった。
私の役割はノートパソコンで東京音頭の楽譜を探して、メモリスティックに入れて、明日の朝チエに渡すことだった。
チエは、事務室で楽譜をコピーして貰ってメンバーに配り、ユリは書道の経験者として、ふるさとの歌詞を模造紙に書くということになった。一方、マサシは役目を与えられなかったことでしょんぼりしていた。
着付けのできる人は意外な人だった。
翌日早めに食堂に行くと事務室のドアが開いていて、チエとユリがフルーツと話しているのが見えた。私は、3人に挨拶をしてメモリスティックをチエに渡し、その会話に加わったが会話の内容が出産についてだったので、軽く会釈してその場から高齢者テーブル席に移った。
高齢者テーブルと中級者テーブルにはまだ誰もいなかった。トレーを手に料理を選んでいる時に、ショウコとマサシがやってきて、少しだけ挨拶を交わした。
そしてマサシは高齢者テーブルに腰を下ろして、チエとユリと筆談を始めた。ショウコは上級者テーブルに向かっていって、一人で食事をしている作務衣おやじに声を掛け隣に座って話を始めた。
しばらくして、彼女が肩をすくめるしぐさをしたので、作務衣おやじも着付けは出来ないのだろう。しかしその後ショウコがサムアップしたのでその意味が分からなかったが、彼女はおやじに会釈してガッツポーズと共に高齢者テーブルに戻ってきた。
彼女の話によるとやはり作務衣おやじは着物の着付けは出来ないという事だった。そして、そのガッツポーズの理由は、このスクールの学習者で一人、和服を自分で着れる女性がいるという情報を貰えたからだった。
そしてその彼女の名前は失念しちゃったけれど、彼と同じ日に自己紹介をした女性なのだそうだ。
そうすると、サトエだ。と、すぐに分かった。
でも、どうしてだろう。
しばらくしてサトエが食堂にやってきたので、私が呼び止めて3人で話をしたが、ショウコは私が口を挟む余地を与えてくれなかった。
ショウコとサトエの会話によると、彼女の通っている専門学校の観光コースでは、日本文化の授業がありその中で着付けも学んだので、自分で着物を着られるようになったそうだ。
サトエは慰問の話を聞いて快く着付け係を引き受けてくれたが、日曜日に8時間、英語の授業を入れているので、着付ける場所はこのスクールでということになった。
今朝もマサシとショウコが私の部屋にきて、ウクレレの基礎練習をしたが、二人は4つのコードをちゃんと抑えられて、童謡の “ふるさと”もゆっくりなら弾けるようになっていた。
この分なら施設のイベントでふるさとを一緒に演奏することが出来そうだ。
二人は弾きながら歌えるようになるというのを次の目標としていると、ウクレレ上達スケジュール表を見せてくれた。
そしてその次のステップは楽譜を見ないで弾き語りが出来ることだそうだ。しかし、この分だとイベントの前には達成出来ちゃいそうだ。そして驚いたことにこのウクレレ上達ステップアップ計画表を作ったのはマサシという事だった。
彼がスマホのExcelで作成した表はこの他にもイベント分担表があり、事務所で印刷して貰ってコピーを私にもくれた。
ショウコはコンピューター音痴なので、彼のそういったところを尊敬しているそうだ。
おしゃべりで仕切り屋のショウコと無口で職人肌のマサシがうまくやれているコツが少しだけ理解出来た気がした。
この分担表はチエとユリの意見も聞きながら作成し、彼女らはこの表に沿って模造紙の買い出しに行ったそうだ。本当に学園祭のようになってきた。
イベントのlineグループ
ジャムからは、レストランへの予約や注文と床屋での英会話をレッスンして貰った。
ランチの時に、チエとユリと筆談で話をしたときに、ショウコとlineで友達になったという事を聞いて私も友達に加えて貰った。
そうしたら早速マサシからLineでウクレレイベントグループへのメンバー登録のお誘いが来た。それをクリックしてメンバーに加わった。
チエの話だとマサシがこのグループを作成しマーガリンを招待。そしてビーナス、大門、クマにも加わってもらうのだそうだ。そして、練習動画を共有したり、会話をしたりするのだそうだが、SNSの使い方は若者のようだと感心させられた。
ショウコが役割分担をマサシに指示しなかったのは、彼なら自主的に自分がやることを見つけてくれると信じていたからだろう。
そう考えるとショウコの仕切り屋、いやリーダシップ能力は高い。流石にペンションを差配しただけの事はある。
それぞれが今までの人生経験の中で身に着けてきた得意分野を生かして、イベントを成功させたいとい思いが強くなった。
マーガリンの協力で早々にlineのグループにビーナス、大門、クマが加わったので、マサシが東京音頭の楽譜を写真に撮ってlineにポストした。
それを見て彼らから英語で届いたコメントに、マサシが丁寧に答えてくれた。彼は英語は話せないけど読み書きは得意そうだ。
そして土曜日の午後にフルーツの家で練習することが決まった。