'21年度前期 授業の反省 (1) 授業方針
私が現在の勤務校に赴任した2005年度前期から2019年度前期まで,毎学期欠かさず授業の反省をブログに書いてきました。しかし,2019年度後期の授業の反省を書こうとしていた2020年春にコロナ騒動が始まり,新学期のオンライン授業の準備に追われて2019年度後期の授業の反省は書く機会を逃してしましました。その後,2020年度の前期と後期も忙しくて書くことができませんでした。やっと今学期(2021年度前期)の終わりになって,授業の反省を書く余裕がほんの少しできたので,場所をnoteに変えて書き記したいと思います。長くなりそうなので,まずは授業の方針をどのように定めたかというところから。
前提条件
授業の方針を考える際の前提条件(大学の方針)は以下のようなものでした。
配慮事項
さらに,現在のコロナ禍の下で配慮すべき事項として次のようなことを考えました。
授業方針
以上のような諸条件をクリアしつつ,私がこれまで行ってきた授業が行えるようにと考えた授業の方針は以下の通りとなりました。
ハイフレックス方式の授業が教員にとって難しい点は,教室にいる学生と遠隔で受講している学生の両方に気を配らなければならないことです。本来なら,教員は教室にいる学生に主要な注意を払って授業を行い,補助的スタッフがその授業をZoomで配信し,また遠隔で受講する学生に注意を払うというように,この方式の授業はチームで行うべきだと思います。しかし,すべてを一人の教員が行うことが要請されましたので,教室にいる学生も遠隔で受講する学生と同じように扱い,私は教室でオンライン授業を配信することとしました。教室には学生がいて,顔も見えますが,遠隔で受講する学生が最もよいコンディションで受講できるよう,教卓にカメラを設置し,ヘッドセットマイクを口元に設置して,可能な限りよい画質と音声の映像を配信することに力を注ぎました。なお,教室にいる学生は教室のスクリーン上で配信映像を観ることができ,また教室のスピーカーから音声を聴くことができました(パブリックビューイングのように)。目と耳に対する負担は若干軽減されたと思います。
それでも,1コマ100分の授業をパソコンの前でじっとしながら聴くのは,苦痛以外の何者でもありません。そこで,時間に縛られず,自分の好きなときに視聴できるよう,オンデマンドの講義ビデオを毎週合計約1時間分提供することにしました。教室にいる学生も遠隔で受講する学生も,授業時間の最初から始まるハイフレックス授業(これを私はZoomミーティングと呼びました)のあと,続けてそのままオンデマンドビデオを視聴してもいいですし,好きな時に好きな場所で視聴してもよいことにしました。なお,これは,単に受講する学生の健康を考えてのことだけではなく,マスクをしたまま長時間話し続ける際の教員の息苦しさを避けるためでもありました。
私は講義の後,学生にディスカッションをさせたいと思っていました。2019年度の前期・後期は,毎回の授業の前半を講義,後半をグループディスカッションとしていました。2020年度は完全オンライン授業を行いましたので,教室でのディスカッションはできませんでした。そこで,オンラインでも可能な掲示板(ブログ)を用いたディスカッションを行いました。今年度は教室での授業も可能となったのですが,新型コロナウイルス感染リスクを考えて,教室でのディスカッションは断念し,昨年度同様にブログでのディスカッションとしました。なお,Zoomのブレイクアウトルーム機能を使ったグループディスカッションも技術的には可能でしたが,顔出しを嫌う学生が非常に多く,また音声だけだとスムーズなディスカッションは不可能だと考え,Zoomでのディスカッションも断念しました。
以上のようなやり方は,教室の学生と遠隔の学生に同等の学習を保証することができ,また全面オンライン授業に移ってもまったくやり方を変えずに授業を続けることができます(教室で授業に参加する教員と学生が,自宅等に移動するだけで済みます)。
学期末に受講者に実施したアンケートで学びやすい授業形態について尋ねたところ,オンデマンドの講義ビデオとブログでのディスカッションがともに最も多くの受講者の支持を得ました。できるだけ多くの学生が学習しやすい方法を選択するという条件も満たすことができたと思います。