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ザ・マリ・オン・ザ・ビーチ「Belles créatures. Elle nom est la musique.(美しい生きもの。彼女の名前は音楽。)」のこと

前作(Songs titled my girlfriend (or not)'s name)を録り始める前から、早朝家の外に出た時に聞こえてくる朝の音を録音しておきたいという気持ちがあった。いろんな鳥の鳴き声や風で揺れる木々の葉の音。遠く聞こえる車の音。前作の「環境音も含んでいて構わない」のコンセプトもその辺りが発端。

前作をリリースしたのち、ひとつそのアイディアも形にしてみようかと、とりあえず音風景の採集から始めてみた。休みの朝、玄関前でいつもの朝の音を録ったり、家族で海に近いショッピングモールに出掛けた際に浜辺に寄る時間を作ってもらって録ったり。

朝の環境音にどこかの家から漏れ聞こえるピアノの練習の音が混ざるようなイメージから始まった。最終的な音源の仕上がりは環境音に楽器などの音を添える感じを基本線に考えて、朝の音、波の音、雨の音、と録り進めたものの、いろいろと突き詰めて考え始めるとその場の音以外に何を足す必要があるのか?みたいな禅問答のような状態に。当初はもっとほかの音風景も録るつもりでいた。自動車の音、電車の音、空港の音、真夜中の音…。場の音として成立してたら、そんなに乗っける音もないな、と思うに至って早々に採集は終了した。とはいうものの、どんな音を載せるかは思案が続いた。いわゆる曲になってしまっては聴かせたい音が背景になってしまう。かといって無加工で波の音だけではSEだ。それだけで音楽だと言い切るのは今回のコンセプトとは違ってくる。

なんの思いつきだったか、なんとなく「Sound」を録り始めてみて、何か光明が見えた気がした。この曲は他の曲とはそもそも構造が違うのだけれど、音が重なったら十分音楽だなとかそんな気づきがあった。「和音が」とか「旋律が」とか、そういうことが音楽を音楽たらしめているわけではない。考えてみたら当たり前のことなのだけど。

最初の最初、音風景を録り始めるか録らないかくらいのタイミングでは、6~8曲程度のボリュームを考えていたけれど、「Sound」のようなアプローチは欠片も考えていなかった。突然湧いたアイディアで、これがなかったら途中で放り投げてたかもしれない。

録音は前回同様MTRの内蔵マイクを使用。メリハリが欲しい部分もあったので、今回はマイク周りや機材触った際の操作ノイズを消したりその辺りは前回よりは手間をかけた。電子ドラムも電子ピアノもラインでキレイに録れてしまっては当たり前すぎるので、本体スピーカー鳴らしたり(普通だ)、ドラムはアンプ通して拾ったり。
そして今回もドンカマも同期もなしのアナログリズムで。演奏時間の把握、配分のためにストップウォッチを使用した。

メロディやコードワークなど考えるような、いわゆる作曲をしていない。前作は過去曲のリメイクだったので新曲を作曲しなかったけれど曲の体はなしていた。最初にも書いたけれど、今回は環境音をメインに、楽器などの音を添える感じが念頭にあった。アンビエントか?と問われたら、アンビエントとも違うニュアンス。鍵盤を押さえてコードを探っていると、どうしても曲っぽく展開や構成を考え始めてしまった。なので勢いで録らずにクールダウンしてはシンプルなシーケンスにとどめるよう意識した。展開しないように心掛けたという感じか。

アルバムタイトルは早い段階で決めた。
「Sound or Music」というのを考えたりしたもののどうもしっくりしないなと思っていたところに「彼女の名前は音楽。」というフレーズを突如思いつき、「彼女」が何であるか補足する意味で「美しい生きもの。」を前に置いた。アルバムタイトルはずっと英題をつけてたけど今回はフランス語でかっこつけようと思った。
Belles créatures. Elle nom est la musique.
悪くない。そもそも日本語でも詩的というか文学的というか美しい響きなので、邦題もジャケットに併記することにした。ニューロン、マリ通じて、ジャケットに日本語を載せるのは初めてじゃないか?

ジャケットのメインイメージは悩んだ。
今回のタイトルなら女の子が写ってるのが自然かな、と「#自撮り」とか「#被写体になります」なんてタグ付けて投稿してる女の子のinstagramを眺めてイメージに合う人がいないか探したりから始めた。ただ、女の子は可愛かったり綺麗だったりだけではダメで、その佇まいのようなものに「音楽」を感じられなければ意味がない。ジャケットに写っている女の子はアルバムタイトルの「彼女」を体現しているべきだ。となるとなかなか難しかった。

「彼女」とイコールに思えるモデルが見つからないのであれば、たとえば大きな池の水面を漂う水鳥の群れや観覧車を下から見上げた写真、いい感じのグラデーションの空と雲とか、そういう風景写真の方がそこにいない「彼女」をあぶり出せたりするかもしれないとも考え始めていた。

そんな中、なんかいいが画像のストックがないものかとPCの画像フォルダを漁っていたら、以前Twitterで見かけて保存していた亀さん(ジョリッツ、ぐしゃ人間)の自撮り写真を見つけた。進行中の版下データにはめてみたところこれ以上ないフィット感で、以前から楽しそうにカッコよくギターを弾いてる写真など見てたので、またギタリストとしてだけでなく作り手でもある亀さんなら前述の「彼女」問題も解決すると感じた。不躾とは思いつつもご本人に使用許諾をとったところすぐに快い返事を頂けた。12月21日。あまりにも嬉しかったので日付も残しておく。これにてメインイメージ、ジャケットデザインに関しては解決した。良いジャケットが出来ると一刻も早くこのジャケットデザインを公にしたくて録音に向けてのモチベーションも上がる。

年末12月29日に全ての曲を録り終わり完成。全4曲。なんとなく2曲/2曲でAB面な気分がある。配信でもCDでもAB面はないのだけれど。これは音楽なのかどうか。はたして面白いのかどうか。前作以上にコンセプトありきで、人が聴いて面白いのかどうかがわからない。自分自身「聴きたいものを作った」より「作りたいものを作った」印象だ。

どうぞよろしく。

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