シンガポールで子供を育てるのは微妙かもしれない理由
シンガポールはガリ勉国家です。親も学校も子供にひたすら勉強をさせる国です。
ガリ勉について念のために説明すると、とにかく試験勉強ばかりやっているのです。そして幼少期からガリ勉に没頭している子供たちが目指すのは公務員です。シンガポールの公務員の待遇がいいのは有名ですよね(昨今ではより待遇のいい外資系企業も人気が出てきています)。
実はこの国のガリ勉文化はローカルの学校以外にも根付いています。シンガポールにあるインターナショナルスクールや日本人学校も児童・生徒に学校のお勉強を頑張らせる傾向にあり、そのため他国のインターや日本人学校よりも学力が高いです。
ここまでこの記事を読んでくれた人の中には「なんでそれが微妙になるんだ?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。実は私がそう感じた理由は「自分の子供に公務員になってほしいと思っていない」からです。もちろん本人が自ら公務員になりたいと思いその手段として試験勉強に明け暮れるのであればシンガポールにいてもいいと思います。しかし私は子供にはより幅広い選択肢の中から自分の可能性を見出して欲しいと思っており、それだとシンガポールでは不都合なのです。このガリ勉国家には子供の頃に映像、音楽、スポーツ、ファッションなどに夢中になり、その分野で自分を最大限高められる環境がありません。もちろん趣味程度に楽しむ場所はありますが、日本の部活や本格的な習い事のように必死になって取り組み、人によってはその道で飯を食うことができるようになるという代物ではないのです。そもそもシンガポールではシンガポール人による芸能、芸術、スポーツなどは必要とされていません。みんな外国の映画やドラマを楽しみ、外国の音楽を聴き、外国のスポーツを観戦し、外国ブランドの服を着ているのです。また、このガリ勉国家で育った子供には起業家の精神が育まれるとも思いませんし、そもそも市場が小さい上にあらゆる業種(上述した芸能などを含む)で外資系が市場を席巻しているので起業するのに向いていません。言語や慣習が独特で内資企業が有利になり、それなりの市場規模もある日本とは事情が異なります。結局ガリ勉はガリ勉でしかなく、公務員や同じような性質の仕事に就くしかなくなるのです。
シンガポールがガリ勉国家、公務員志向であることは街中でも垣間見ることができます。まず子供の行儀に対して異常に厳しい親が多いです。子供がうるさくしていると怒鳴ったり手を上げて言うことを聞かせます。日本も昔は体罰当たり前でしたが、戦時中の軍国主義→戦後の体育会系→体罰禁止の法定化と徐々に薄れていき今では街中で体罰を見ることなどありません。一方シンガポールでは兵役があり成人男性はみんな軍人か元軍人のため、極端に厳しい指導方法が許容されている風潮があります。また、体罰以外にも日本では考えられない手段で子供を黙らせている様子を目撃することがあります。レストランでよく見かけるのですが、子供が静かにしているように席に座ってから立ちあがるまでずっと携帯でYoutubeを観せているのです。子供のマナーについては社会全体でかなり厳しく、うるさい子がいると親よりも前に知らない大人がキツく注意しにくることもあり、それでみんな神経質になっている可能性はあるのですが。
メイドに子守をさせている親も多いですが、子守り中に子供のことを無視して隣で携帯に夢中になっているメイドを見かけたりもします(メイドは悪くないと思います。とにかく安い賃金で働いている人たちなので家事一般をこなせてる時点で十分なサービス品質と言えるでしょう)。
子供をまともな人間として扱ってないんじゃないかと感じる現場を目にするたびに、こんな育て方では人間味と創造力を兼ね備えた大人にはならないのではないかと思っています。目的が公務員になることでしょうから、ルールを守って勉強さえできれば良いと思っているのかもしれませんが。