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『Fallout』サバイバルマニュアル:ヌカ・コーラ(1)
ニューベガスの毎晩賑わう豪華絢爛なカジノから、死の地と化した輝きの海のウェイストランドまで、核戦争後の世界で人々が日々直面しているのは、動くものと動かないもの、有機物と無機物による脅威だけではなく、生老病死、そして日常生活の楽しみでもある。
食べ物と飲み物は、全ての生命活動の基盤だ。水も食べ物もなければ、誰も三ヶ月は生きられない。ある著名なSF作家が「作品を現実離れさせたければ、まずは食事から」と語ったように、このFalloutの世界観を語るコラムも、まずは食べ物と飲み物から始めよう。ウェイストランドで人々が日常的に口にする食べ物や飲み物について見ていくことにする。
Falloutというゲームシリーズにおいて、どこにでもある放射能汚染、レトロなアートスタイル、50年代60年代のポップミュージックの他に、最も印象的な文化的アイコンと言えば、パワーアーマー、ボルトボーイ、そしてヌカ・コーラだろう。今回は、このヌカ・コーラについて語ることにしよう。
ヌカ・コーラ、その名の通り放射性成分を含むコーラだ。ヌカ・コーラ社が製造したこの飲み物は、戦前、最も愛された清涼飲料水だった。戦後のウェイストランドでも、文明の痕跡が残る廃墟の近くならどこでも、動かなくなったヌカ・コーラの自販機を見かける。そこから生ぬるくて炭酸の抜けたコーラを取り出して、喉の渇きを潤すこともできる。飲み終わった後、瓶は武器として使えるし、キャップは通貨として取引に使える。
飲み物に放射性物質を加えるというこのアイデアは、おそらくアメリカの原子力ブーム時代、人々がラジウム入りの水を健康飲料として飲んでいた歴史に着想を得ているのだろう。当時、人々は原子力という新技術があらゆる病を治せると信じていた。これは歴史上の多くの例と同じ心理だ。黒死病の流行時に人々が酢で口と鼻を覆い、電気が発明された直後には電気ベルト(着用者自身を電気ショックで刺激する代物)で胃腸の病を治そうとした。新しく発見された元素として、ラジウムはすぐに健康製品に取り入れられた。でも、先人たちと同じように、こうした商品に効果はなく、むしろ有害だったと言える。
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顎の腐敗や頭蓋骨の穿孔を引き起こし、死後も遺体が光り続けるラジウム水と比べ、ヌカ・コーラはより安全に見えた。『Fallout』の世界の人々は放射性物質の利用にさらに大胆で、戦前と呼ばれる遠い時代には、利尿作用のある菌類から抽出した物質で体内の放射性物質を排出でき、死以外のあらゆる病気が治療可能とされていた。
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このような背景のもと、人々はガンマ線を食品保存に利用し、放射性成分を飲料や菓子にも加えるようになった。これにより、これらの戦前の商品が200年後も食用可能な状態を保っていることが説明できる。さて、本題に戻り、戦前のアメリカで絶大な人気を誇ったヌカ・コーラの起源について語っていこう。
(一)コーラの起源
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ヌカ・コーラは2044年にアメリカ市場に正式投入され、2077年の米中核戦争勃発までに、アメリカで最も人気のある清涼飲料の一つとなっていた。この飲料は2042年、ヌカ・コーラ社の創設者ジョン=ケイレブ・ブラッドバートンが率いる化学者たちのグループによって開発された。我々の世界では薬として始まったコーラと異なり、ヌカ・コーラは最初から飲料水として開発されたものだ。
17種類の果物エッセンスで風味付けされていたと言われ、中にはチェリー、グレープ、オレンジなどが含まれていたと考えられる。これは現実世界のコカ・コーラの謎めいた「7X」フォーミュラを思い起こさせる。製品の成分のわずか1%を占めるこの調味フォーミュラは、様々なスパイスを配合し、地域によって調整されていた。コカ・コーラ社は既にフォーミュラを公開しているが、ヌカ・コーラは果物主体の配合を採用していたため、我々が知るコーラとは明らかに異なる味わいだったはずだ。
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ヌカ・コーラの配合は以下の成分で構成されていたと思われる:
炭酸水
砂糖またはアスパルテーム
カフェイン
リン酸
クエン酸
カラメル色素
安息香酸カリウム
天然香料(様々な果物のエッセンス。我々の世界のコーラとは異なり、薬草エキスではなく果物成分を使用)
これがヌカ・コーラの基本成分だ。これらの成分をベースに、様々なフレーバーが開発された。アルコール入りのヌカ・コーラ・ダーク、果実味を強調したヌカ・コーラ・ビクトリー、ヌカ・コーラ・チェリー、ヌカ・コーラ・グレープ、一体どんな味なのか想像し難いヌカ・コーラ・クォーツ、そして後ほど詳しく解説するヌカ・コーラ・クァンタムなどがある。なお、非公式製品であるイエロー・ヌカ・コーラについては今回は触れないこととする。本稿への反響が良ければ、次回はヌカ・コーラの各種フレーバーについて詳しく紹介したい。
(二)クァンタムの味
もしヌカ・コーラの誕生が一つの物語だとすれば、ヌカ・コーラ・クァンタムの誕生は、まるでブラックユーモアのような冗談だった。
1950年5月1日、ジョン=ケイレブ・ブラッドバートンはヌカ・コーラ社の傘下にテーマパーク「ヌカ・ワールド」を設立した。様々なアトラクションを建設する一方で、当時のアメリカ最高峰の科学者たちを雇い、新しい飲料の開発にも着手した。そして2076年から2077年の間、対中戦争の真っ只中にあったアメリカ軍が、技術や資源、その他の条件と引き換えに、ヌカ・コーラ社との協力関係を結ぶこととなった。
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この協力関係により、ヌカ・コーラ社は望んでいた技術と政府の優遇措置、そして軍事技術の一部使用権を手に入れた。見返りとして、クライアントであるアメリカ陸軍に、戦闘能力を大幅に向上させる新型の放射性同位体ストロンチウム90を提供した。この元素は爆発物の製造やパワーアーマーの動力システムの改良、その他の軍事目的に使用可能だった。
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そして、予想外の展開となった。プロジェクトリーダーのレックス・ミーチャムが、この軍事用新元素を飲料に加えることを提案したのだ。さらに、ヌカ・コーラ社の経営陣もこれに強く同意し、こうしてヌカ・コーラ・クァンタムが誕生した。
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テスト段階で、この飲料は嘔吐から失明、さらには人体を内部から焼き尽くすような事故を引き起こしていた。正式に発売された最終製品でさえ、テレピンと爆発物の技術があれば、危険な爆発物に改造できるものだった。ストロンチウム90の影響で、この飲料は棚に並んでいる時から発光し、消費者が飲んで消化し、尿として排出された後も、クァンタム特有の青い蛍光を放ち続けた。完成版のクァンタムを1本飲んでも、放射性物質やエネルギーで即死や障害を負うことはなかったものの、不健康な飲料というヌカ・コーラの特徴は、クァンタム味で極限まで突き詰められた。
通常のヌカ・コーラ1本で既に人間の1日の必要糖分の120%を含んでいたが、クァンタム味ではそれに加えてカフェインまでも2倍に増量された。そのため、この商品への評価は真っ二つに分かれた。好む人は爽やかなエネルギーの波が体を貫くように感じ、嫌う人は頭痛がして甘すぎると感じた。
ここで、コカ・コーラの「coca」は元々コカインを指していたという話が出るかもしれない。では、ヌカ・コーラには依存性物質が含まれているのだろうか?ヌカ・コーラへの依存性について私見を述べると、確かにFalloutシリーズではヌカ・コーラ依存症は存在するものの、アルコールや薬物依存とは異なり、プレイヤーの場合は時間とともに自然に回復する。また、比較的恵まれた環境で育ったNPCやプレイヤーキャラクター(Fallout 3、4の主人公など)にはヌカ・コーラ依存症が見られないことから、ヌカ・コーラに依存する人々は、コーラそのものというよりも、その素晴らしい味わいと糖分に依存しているのではないだろうか。結局のところ、ウェイストランドには美味しいものなど、ほとんど残されていないのだから。
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(三)瓶詰めとボトルキャップ
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Falloutシリーズは開発の歴史の中でIPの所有者が変わり、エンジンも変更され、2Dから3Dゲームへと進化する中で、ヌカ・コーラのパッケージも画像から立体モデルへと変化した。ブラック・アイル時代の作品、つまりFallout 1、2、そしてFallout Tacticsでは、ヌカ・コーラはガラス瓶の他に缶入り製品も存在した。しかし残念ながら、Fallout Tacticsの舞台である中西部ウェイストランドを除いて、他の地域では缶や他の金属製パッケージの飲料を見つけることは難しい。
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Fallout 3で初めてヌカ・コーラ瓶が3Dモデルとなり、設定によれば青色のガラスを使用していたという。これは、かつてのコカ・コーラが独特の緑色ガラスを採用していたことと似ている。Fallout: New Vegas時代になると、プレイヤーはサボテンとアガベの実、そして空の瓶から自家製ヌカ・コーラを作れるようになったが、アイテムコードやフラグ、効果は通常のヌカ・コーラと全く同じため、独自のモデリングは行われなかった。
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Fallout 4の時代になると、設定上のヌカ・コーラ社も、現実のFalloutシリーズ開発元ベセスダも、著作権問題を避けるため、ボトルデザインをロケットや宇宙船のような形状に変更した。同時に2062年には独自のマスコット、ヌカガールを導入。この宇宙文化は当時のヌカ・コーラだけでなく、戦前文化の様々な面に表れており、子供たちに人気のキャプテン・コスモスなどもその一例だが、それはまた別の話である。
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ボトルキャップについて言えば、Falloutの世界では、これが通貨である。なぜMetroシリーズのように弾丸を使わないのか、その公式な答えは、戦闘時にプレイヤーを制限したくないからだ。では、なぜ紙幣を使わないのか。実際、ゲーム内に紙幣は存在するが、それは核戦争から約200年後、戦後のウェイストランドに最初の本格的な国家が出現するまで待たなければならない。
それまでは、貴金属による取引か物々交換、もしくは戦前の人々が残した貨幣を使うしかなかった。しかし不運なことに、核戦争が起きる前から、アメリカのインフレーションは災害的なほど深刻で、核戦争でさえもこの問題を解決できず、大量の通貨が戦後まで残された。
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ドーナツ1ダース99ドル、薄い雑誌が48ドル。店で焼きたてのドーナツを食べたければ1個28ドル、他の商品はさらに高価だった。この問題に対処するため、アメリカ政府は印刷し続けるしかなく、その結果、戦後のドルは実質的に紙切れとなった。あまりにも一般的で大量に存在し、さらにその価値を保証する国家も消滅していたからだ。
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そこで、一般的でありながら希少で、偽造が難しく、軽くて持ち運びやすいという特性を備えたボトルキャップが、ウェイストランドの人々によって通貨として選ばれた。最終的にはコーラのキャップだけでなく、ビールや他の清涼飲料のキャップ、さらには缶のプルタブまでもが取引通貨として使用されるようになった。最初にボトルキャップを使用したのは西海岸で、西海岸のウォーター・マーチャントがキャップを水の代用として、1キャップ1本の水として価値を定めた。
その後、ボトルキャップは全ウェイストランドの通貨として流通するようになった。
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(四)終わりに
本日はここまでとさせていただきます。皆様はFalloutシリーズに興味を持っていただけたでしょうか。基本的に私の記憶を頼りに書いた文章ですので、抜け落ちや誤りがあるかもしれません。正確な情報については、ベセスダの公式設定をご参照ください。
この記事を読んでよかったと思っていただけましたら、「いいね」を押していただくか、コメントなどで次に知りたいFalloutの設定についてお聞かせください。Falloutシリーズの設定解説が一通り終わりましたら、他の作品も検討したいと思います。ご要望がない場合は、次回はヌカ・コーラの各種フレーバーについて、あるいはパワーアーマーに関する設定について書かせていただこうと考えています。
最後に豆知識を一つ。現実世界では、コカ・コーラの発明者はジョン・ペンバートン、ペプシコーラの発明者はケイレブ・ブラッドハムと言います。この情報を出した意図は、皆様にはお分かりかと思います。それでは、よい一日をお過ごしください。また次回お会いしましょう!
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