「水仙」
家の庭に咲いている花を見て、不思議とその花の名前が気になった。
また同時に、自身の小学2年生の頃の校外学習を思い出す。
あれは香川に行った時のことだった。
あの時が一体春だったのか、夏だったのか、今じゃ覚えてないけど多分暖かかったような気がする。
あの時の担任は赤木先生。小学生の目線から見れば大体おばさんくらいの年代で、子どもの話にもちゃんと耳を傾けてくれる優しい先生だった。
そんな優しい先生だったからこそ、校外学習に行ったとき、道端に咲いていた草だったのか花だったのかを興味本位で僕がちぎったとき、それを注意したことが印象的だった。結局僕はその植物に手を合わせ、「ごめんなさい」と謝ったのだった。
その植物が特別綺麗だったとは思えない。実際覚えてないし。
でもあれがどこにだって等しくあるささやかな息吹へのリスペクトだったとしたなら。
どうやら家の庭に咲いている花は水仙らしい。
花言葉は「自惚れ、自己愛」。
2年前の夏のこと。当時付き合っていた彼女に、あの時は一方的に別れを告げられていたような気がしていたけど、着実にふたりの関係に歪みを生み出していたのは、僕自身だったのかもしれない。
茹だるような暑さ、夏、熱帯夜。
なんだか脳がグルグルと回ってきて、僕はスマホの電源を切った。
(物語はフィクションです。)
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