春の一人旅 〜大隈詣と関西巡り〜①
(1)大隈詣になったわけ
学生の長期休みたるもの、一度は旅に出ないと面白くない。とりわけ、この冬はよく働いた。貯金するのもよいけれど、「学割」や「旅行支援」を駆使できるのは今しかない。そんなこんなで、夏休みの“Jurassic Tour”に続き春も旅行を決意した。
(当時の旅行記、だいぶ経った為に書くモチベがなくなってしまった。同じ事態を避けるため、今回は旅行と同時進行で記事を書くことにした。今これを書いているのも船の中だ。)
さて、どこへ行こうか。旅を企画したのが2月だったのもあって、寒さへの懸念から西へ行くのは決めていた。しかし、“Jurassic Tour”では大阪(USJ)と福井(恐竜博物館)をガッツリ訪れている。今回は当時より予算があるから、折角ならもう少し先へ行きたい。
最初に思いついたのは広島だった。原爆資料館、そして大和ミュージアム。この頃『宇宙戦艦ヤマト』にハマっていたのもあって、魅力的な選択肢だった。広島行きなら片道飛行機、18きっぷで引き返してくるのが相場だろうが、直前まで迷ったこともあり飛行機はどこも値が張っていた。故に、断念。
でも、飛行機に躊躇していたらそれより先には行けないはず。悩んでいたところ、フェリーという交通手段を思い出した。宿代込みと考えれば飛行機よりコスパがいいし、何より船旅なんて心が躍る。よし、今回はこれに決めた。
東京近辺から出る長距離フェリーは主に2種類。いずれも新門司行きである。一つは有明から出るオーシャン東九フェリー。徳島を経由する為かかる時間は長いが、朝に新門司に着くのでその日から観光が可能だ。もう一つは、横須賀から出る東京九州フェリー。直通で早く着くものの、深夜に門司着となるため初日は宿泊のみとなってしまう。
私は後者を選択した。昨夏に家族旅行で訪れていたこともあって、門司自体を観光したいわけではなかったからだ。小倉あたりで1泊して、次の日遠出する方に魅力を感じていた。とはいえ、博多や太宰府には高2の修学旅行で訪れたことがある。折角なら、まだ行ったことがない場所に行きたかった。門司・小倉から1日で行けて、かつ未踏の地。日本地図を眺めて、メインの目的地を探した。下関は件の家族旅行で、長崎は件の修学旅行で訪れたから一旦除外。となると、残るは佐賀か大分。この二択なら佐賀だった。別府温泉もいいけれど、佐賀には大隈重信の生家がある。早大生でいるうちに、一度は訪れておきたかった。丁度3年秋学期に大隈に関する講義があったこともあり(出席率は芳しくなかったが、教科書は読み込んだし試験は頑張った)、今がベストタイミングと判断した。
こうして、旅の骨組みが決まった。横須賀→門司・小倉→佐賀と進んで、近畿に引き返しつつ陸路で東京へと戻る。このプランなら当初の広島にも寄れそうなものだったが、博多→大阪の夜行バスを船と同時期に取ってしまっていてパス。一人旅だし、あとは行き当たりばったりでなんとかなるだろう。3月は進路関係で何かと忙しいのもあり、ここまで考えて当日を待つ運びとなった。
(2)3/9(木) 出航の日
東京九州フェリーは23:45発のため、夕飯までは自宅で。21時前の出発だ。大谷選手の登板も、何回か見る余裕があった。
横須賀中央駅に着いたのが22時過ぎ。トランクケースの集団が多くいるかと読んでいたが、ほぼ姿はなし。多くの利用者は車で訪れるのかもしれない。それもそのはず、駅から船着き場までは歩くと少し遠かった。しかも、舞台は夜の埠頭である。ドラマの見過ぎだろうか、その手の人に絡まれないかと心細さを抱えながら(?) 半頃に船着き場へと辿り着いた。
旅行支援と学割適用のため、カウンターで受付を済ます。身一つ客の乗船時間は23時からとのことだ。船着き場には何もないから、早く来すぎず却ってよかった。
ロビーを見ると客層は、大学生から家族連れ、高齢者まで様々だ。飛行機や新幹線より安いことから(今回、私は7680円でこの便に乗っている)学生多めかと思っていたので、この配分は意外だった。カップルもちらほらいて、少し羨ましくなった。そんなことを考えていると、すぐに乗船時間である。連絡橋を道なりに、冒険のはじまりだ。
まずは自分のベッドを確認。今回は「ツーリストA」という、カプセルホテル型の一番安い部屋を取っている。このタイプは周りの目線が気になるところだが、予約段階で端のベッドを押さえた甲斐あり、向かいには誰もいない。こうなると約4000円追加の個室「ツーリストS」とほぼ変わらない状態だ。ベッドは放っておいても船側が指定してくれるけれど、自分でも選べるのでこれから予約される方は注意されたし。
荷物を置いたらテラスへと。横須賀を出るまでは、記念艦「三笠」を別アングルで眺めることができる。海辺の夜景とあって、街の灯りと対比が映える。
そうそう、船旅の話だ。箱根芦ノ湖の海賊船や、海遊館⇔ユニバの高速船など短時間の移動こそ何度かあれ、長時間船に乗るのは人生で3度目だった。前回は中1の合宿で三宅島を訪れたときだが、往復で2つ数えているので実質2度目かもしれない。けれどこれも大分前のことになるし、寝ていれば着いたのであまり船内の記憶がない。そんな暴論を許せば、「物心ついて初の船旅」である。そりゃあ、ワクワクもする。
これまで私にとって客船は、文学やアニメ・ゲームに見る乗り物であった。『伊豆の踊子』然り。『千と千尋の神隠し』然り。『ポケットモンスターBW』の、ロイヤルイッシュ号然り。そんな「船」に、旅するために自分が乗っているのである。しかも横須賀発というのは、大隈詣には最適な場所だったかもしれない。旧幕府の借金未済を理由に一度フランスに押さえられた横須賀造船所を、外債募集によりなんとか取り返したのは、ほかならぬ大隈重信であるからだ。こうした諸要因により、テンションが上がっていた。
よい気分とあれば、お酒でスタートを切るに限る。前情報で調べていた船内夜食に向かい、ハイボールとマグロで乾杯だ。遠くなっていく陸地を眺め、しばし悦に浸る。
と、こんなことを書いているが、時刻は0時を回るころだ。消灯の時間が近づく。十分に満足するとベッドへ戻り、後半の旅程(未定である)を考えつつも眠りについた。
(3)3/10(金) 船の暮らしと小倉での夜
翌朝は5時に目が覚めたが、早すぎると判断し二度寝。次に起きたのは8時だった。朝食が7時~8時と誤解してずいぶん焦ったが、実際には7時半~8時半で救われた。昨夜と同じレストランでの朝ごはん。船の食堂は、食事時毎に違うメニューを提供している。朝はお粥セット+もずく酢と、軽く済ませることにした。やさしい味。Region Payで実質無料、ありがたい。
身支度をして、午前中は読書である。船で電波が通じないことは知っていたので、旅の前に神保町で古本を買い込んでおいた。新幹線や特急移動の間でも役に立つだろう。あとは、折角大隈詣をするので『大隈重信自叙伝』を。新書や大学の教授が出している研究書は読んでいたが、何気にこれ自体は読んだことがなかった。古本部門では、ヴェルヌ『氷のスフィンクス』など。陸地はもう見えないが、水面を眺めながらの読書は気分がいいものだ。さながら「太平洋の波波波に」といったところか。(注:『月月火水木金金』です、通じたら通じたでまずい。)
時間は飛ぶように過ぎ、気づけばお昼時。ランチは、博多一番鶏の唐揚げと門司焼きカレーを。以前門司を訪れたとき焼きカレーをえらく気に入ったが、今回の旅程では現地で食べることができない。だから、船で堪能しておくほかない。メインを2品頼んだのでそこそこ値が張ったが、Region Payがあるのでどうにかなるだろう。と思ったら、沖にいて電波が通じないので使えないらしい。ここは現金で払って、夜に割引を使おう。
午後はnoteの作成。ここまでの部分は、全てこの時間で書いたものだ。記事が時間に追いついたので今からひと眠りするが、その前に窓を覗くとイルカの群れが跳ねている。幸運のきざしだろうか。あまりに一瞬でカメラに収められず、読者の皆さんに見せられないのが心残りだ。とにかくそんなところで現在、13時50分。一旦おやすみなさい。
18時半、続きを書き始める。あれから自室で3時間ほど横になっていた。実際に眠っていたのは1時間と少しだろうか。動くと寝るを繰り返せるのが、夜行バスと違う贅沢だ。陸地の近くを通ったのか途中少しだけ電波が戻り、旅の画像を編集するなどしていた。
起き出した後は、ここまで取っておいたイベントへと。大浴場である。海を眺めながらの浴場と、潮風感じる露天風呂。おまけに、スキマ時間を選んだのでほぼ貸し切り状態。日々の疲れが洗われる。門司まで急ぎでない人は、これに乗るべきだと強くお勧めできる。風呂上がりにはエナドリと、ルーティンも完璧だ。いつも銭湯では「オロナミンC」を選ぶのだけれど、自販機になかったので「デカビタ」で。
荷物を片付けテラスに出ると、もう暗くなりかけている。日の出から日の入りまでを船で過ごすことになるわけだが、存外リフレッシュになった一日だった。レストランの夕食枠は5時半からやっているけど、降りてから食べたいものがあるので今回は訪ねず。小腹が空いたら、カップラーメンの自販機でなんとかしよう。21時の到着までは、本を読んで過ごそうと思う。それではまた。最後の追記は寝る前に。
荷物を再度確認し、シーツを畳んで船を降りる。入り口で待つ無料バスに乗り、小倉駅まで一直線。門司駅にすら30分かかったので、船着き場は駅から相当遠いところにあるようだ。20分くらいが経つと、街がにぎわいを見せてきて。門司駅で、半分ぐらいの乗客が降りる。彼らからは地元トークがたくさん聞こえたから、門司降車組は帰りが多めなのかな。
もう20分バスに揺られて、ようやく小倉駅。本日の宿はアパホテル。チェックインを済ませて荷物を置いたら、再び街中へと繰り出す。時刻は22時を過ぎている。結局昼以来何も食べずじまいで、とっても腹ペコだ。
そこまでして組み込んだのは、北九州のうどんチェーン「資さんうどん」。門司近く出身の友人に勧められたものの、組み込めるタイミングがここしかなかった。その人が「うどんもおでんも美味しいよ」と言ってくれたので、おでん3種ともつ鍋うどんをチョイス。ゆったり過ごしたとはいえ、長旅で疲れた体におでんダシが沁みる。モツの歯ごたえもたまらない。東京でうどん屋に入っても「どれだけ安く」しか考えないから、心置きなく食べるのは久しぶりのことだった。いやあ、美味かったな。帰りがけにコンビニで朝ごはんを買って、ホテルへと戻ってきたというわけだ。
時間はやっぱりカツカツで、これを打っている今はもう0時半。明日は小倉→博多→佐賀と出て一通り観光した後、夜行バスに間に合うように博多まで戻ってくる。夜は水炊きを頂くつもりだ。(今日の鶏からといい、帰りがけに予定している名古屋コーチンといい、今回の裏テーマに「鶏肉」がある。私は豚や牛よりも鶏が好きなので、自由な一人旅くらい鶏ばかり食べていこうという算段だ。もちろん、美味そうなものがあれば限定はしないけれど。)
それと一つ。普通旅行記というものは旅行が終わった後に書くものだが、今回はリアルタイムで書いているので、皆様の反応によって展開が変わりうる。noteのコメントに目を通す余裕はなさそうだが、知り合いの方はおすすめの場所等あればDM等で教えてほしい。特に、12の神戸周辺と14の名古屋周辺。神戸は初なので定番どころを、名古屋は3度目なのでディープなところを探している。
では、今日はここまで。明日は夜行バスだから更新は難しそうだが、明後日はホテル泊なのでそこでまとめてしようと思う。おやすみなさい。