姉弟日記 『つぐない』
空に浮かぶ白と黒の球が重なり、
辺りを墨色に染め始める。
天の虚に手をかざして二人は望んだ。
二人で何往復もした、
水族館のトンネル水槽。
机の引き出しにしまってる、
博物館で買って貰った冥王星。
お母さんの実家で取り合った、
夕ご飯最後のエビフライ。
キャンプで寝袋に包まって、
星が出るまでの眠らない競争。
お願いしすぎて神様に怒られないか、
ちょっと心配になった初詣。
迷子の謝罪のため嫌々乗った、
苦手なジェットコースター。
あの日交わした、
二人だけの秘密の約束──
私達の残りのすべてを。
俺達が捧げて償うんだ。
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