TRPG論
シナリオ論
シナリオの舞台装置としての役割
TRPGの中で、シナリオが占める役割はとても大きい。
まずは、シナリオの役割から論じたい。
シナリオがなすべきことは多い。
分類すると、概ね下記の役割に集約されるだろう。
世界観の演出
登場人物像の演出
ストーリーの提供
それぞれ、さらに細分化できるだろう。
世界観の演出
時代背景(When)
シナリオの舞台となる場所(Where)
どういった思想・文化が根底にあるか(What)
登場人物像の演出
誰がシナリオに関与するのか? (Who)
何故、シナリオに関与するのか? (Why)
どのようにシナリオに関与するのか?(How)
いつ、関与するのか? (When)
どこで関与するのか? (Where)
PLに何をもたらしてくれるか?(What)
ストーリーの提供
どのようなストーリーラインなのか? (How)
どこに見せ場があるのか?(Where)
何故、その見せ場を設けたいのか? 作者の意図は? (Why)
誰が、いつ、かかわってくるのか? (Who, When)
何が、シナリオを進めるにあたり重要か?(What)
誤解を恐れずに言えば、上記の質問に即答できないシナリオは、シナリオの精度が悪いか、KPのシナリオに対しての読み込みが浅い。
特に、前者の、駄作ともいえるシナリオが多く巷にあふれていることは、憂うべきだと思っている。
だが、その分TRPGのシナリオ作成が一般化されており、誰でも同人シナリオを作成できる、という自由さを、筆者は愛している。
同人作品から名作が生まれることもある。
それこそ、原作を超えることもあると思っている。
だからこそ、TRPG熱がどんどん盛況になり、もっと多くの参加者がこの界隈に参入してくれることを切に願っている。
シナリオを製作するもの、シナリオを回すもの、そしてPLも、自身が関与する、したシナリオを想定してみてほしい。
そして、そのシナリオに足りないところがあれば、KP/PLのどの立場であっても、サポートしてあげてほしい。
TRPGは、KPとPLで共同して作り上げる即興劇なのだから。
目的は、KP/PLが満足して終えれるセッションのために。
筆者のシナリオに求めたいあるべきこと
上述の舞台装置としての役割を、まずは十全に満たすべきだ。
そのうえで、ここからはKPの趣味になる、補足点について一つずつ語っていきたい。
整理すると、私がシナリオに求めたい+αは4点ある。
おもしろいこと (=感情を揺り動かす何かがあること)
シナリオの最中の目的が常に明確であること
各PLが平等に楽しめること
おもしろさへの時間効率の最大化
おもしろいこと (=感情を揺り動かす何かがあること)
おもしろい、とは何だろうか?
筆者は、喜怒哀楽の振れ幅の大きさだと思う。
シナリオにはそれぞれ筆者がPLに感じてほしい感情があり、その感情の振れ幅が大きければ大きいほど、シナリオとしての評価が高い、と考えている。
上記については異論があるかもしれないが、筆者の定義で進める。
喜怒哀楽、これ以外にも感情はあるが、この例がわかりやすいだろう。
喜 … より難しいシナリオでハッピーエンドにたどり着いた喜び
怒 … より邪悪な敵役に対しての怒り
哀 … より泣けるシーンのあるシナリオ
楽 … より笑えるシーンのあるシナリオ
これらの感情をより揺さぶる要素を付け足すと筆者は面白いと思う。
ここにさらに行動経済学からの知見を補足しよう。
限界効用逓減の法則だ。
これは、同じことを何度も繰り返し行うと、得られるメリットはどんどん減っていくというものだ。
美味しいものは、一口目が一番おいしい、ということだ。
これは、シナリオでも同じだ。
似たようなテイストのシナリオを何度もやれば、心が動かされにくくなるだろう。 何事も、初回が一番感情を動かされるのだ。
だからこそ、シナリオ作者は、SUCCESsというフレームワークに基づいて、自身のシナリオを点検してみてほしい。
特筆すべきは、意外性だ。
意外性を出す方法、アイデアを生み出す方法については、Think Biggerという本がおすすめだ。 それについての解説は、今度別のNoteにまとめようと思う。
シナリオの最中の目的が常に明確であること
これも、筆者は重要視している。
要は、説得力、PLがシナリオにのめり込めるか、だ。
PLを経験した人に一つ質問したい。
特に気になっていないのに、探索箇所はここです、だから調べてください、と言われて、疑問符を浮かべたことはないだろうか?
これは、探索にも動機が必要であることを示していると思う。
探索とは、手段だ。
目的を達するために必要があるから探索を行うのだ。
その目的は、シナリオが提示する場合もあれば、PLが思う目的もある。
中でもたちが悪いのは、シナリオからもPLからも動機づけがないまま行われる探索だ。
何故ここを調べなければならないのか、分からないまま指示された場所を探索する。
これでは、TRPGではなく、ただの作業だ。
面白味は一つもない。
だからこそ、シナリオ側は、最大限、探索に目的が紐づいているかについて、点検しなければならないと考えている。
各PLが平等に楽しめること
筆者が思うに、人間は比較というものをやめれないと思っている。
人間の性は、人との比較だ。
大小あれど、どのような聖人君子であれ、ブッタほど悟った人間でなければ、他人と自分を比較するだろう。
ここから導き出されることは、各PLの感情の揺れは、同程度であるべきだ。
昨今、秘匿HOが流行っているが、このようなことを思ったことはないだろうか?
あー、こっちの秘匿の方が面白かったなぁ、と。
それは、既に無自覚に自身のRPや、他の人のRPを比較しているのだ。
自分がやったほうが面白かったな、と思われている時点で、PL同士で優劣がついていると思っている。
そのような感情は、TRPGの全体最適という観点では不要な感情だろう。
誰かをねたんで、自分の無力さを感じながら終わるシナリオのなんと後味の悪いことか。
だからこそ、秘匿シナリオにおいては、平等感が重要視されるべきだと思っている。
おもしろさへの時間効率の最大化
長時間シナリオは面白さが確約されたものだと思っている。
だが、短時間シナリオは常に長時間シナリオに劣るだろうか?
筆者はそうは思わない。
筆者は、おもしろさの時間効率を重要視する。
よくこのようなことを聞かないだろうか?
難しいことを難しく伝えるのは簡単だ。
難しいことを簡単に伝えるのこそ、真に難しい。
これは、シナリオの時間効率にも通ずる話だと思っている。
筆者がPLに問いたいこと、感じてほしいことを、端的に伝えるべきなのだ。
そのうえで、シナリオが長くなってしまうことは仕方がない。
だが、ただ肉付けされて探索箇所が多いだけのシナリオに、価値はあるだろうか?
筆者は、ない、とあえて断言させていただく。
勿論、探索をいっぱいしたい、いっぱいダイスを振りたい、などTRPGに求めるものは人それぞれ違うことは分かっている。
だが、シナリオという作者の意図を伝えるという目的から即せば、必要ないことは削るべきなのだ。
そのうえで、PLのやりたいRPでTRPGを彩るべきだ。
だからこそ、情報を全て抜かなければ回答がわからないシナリオを、作者は駄作と断定する。
一本道シナリオを悪いとは言わないが、ショートカットも用意すべきだ。
不要な部分はできる限り削ぐべきだ。
KP論
KPの舞台装置としての役割
KPの舞台装置としての役割は、ファシリテータだ。
ファシリテーターとは、会議の進行役を一般にさすが、原義として「人々の活動が容易にできるように支援し、上手く事を運ぶようにすること」を指す。
筆者がKPに求めたいのは、上記をさらに意訳すると、下記3点に集約されるだろう。1,2は事前準備、3,4はキーパリング時の注意事項だ。
シナリオの解釈
シナリオの至らぬところを補足・検討
時間通りに終わらせるタイムキープ
感情をより動かせるアドリブ力
それぞれ説明しよう。
1. シナリオの解釈
シナリオが何をしたいのか? どのシーンが一番感情を揺さぶられるか?
作者が思い描いた風景とは何なのか?
他にもいろいろ考えるべきところはあるが、シナリオをより深く理解すること、これに尽きる。
シナリオとの解釈不一致を起こした状態で、シナリオに不満がある人が回すセッションは、とても良いものとは思わない。
回したい、と思ってくれたからこそ、KPにはよりシナリオを深く読み込むことをお勧めしたい。
また、他のKPが回しているキーパリングを参考にしてほしい
2.シナリオの至らぬところを補足・検討
シナリオの舞台装置としての役割のところに、シナリオが担うべきことについては記載した。
これらのどれかがかけている場合、シナリオの具体性がかけていると言えるだろう。
これも前述のSUCCESsを元に、評価・補足してあげてほしい。
同人シナリオには、残念ながら編集者はいない。
だからこそ、KPがその役割を務めるべきだろう。
PLの人生の一部を彩るために、全力を務めてほしいと思うし、PLに楽しんでもらうことは、KPの責任ととらえている。
3.時間通りに終わらせるタイムキープ
タイムキーピングは、ファシリテーションの中でも基礎だ。
だが、この基礎をおろそかにするKPは、大体質が悪いと言える。
TRPGのタイムキープは、事前準備と当日の卓進行の2種類に分かれるだろう。
〇事前準備
所要時間の推定、アジェンダの作成、日程調整、予備日の設定
〇当日の卓進行
アジェンダと比較した進み具合の確認、遅れた場合のリカバリー
タイムキーピングが悪く、最後に駆け足で…などというのは、下の下のタイムキーパリングだ。
所要時間の推定は、まずもってバッファを設定すべきだ。
また、シナリオを区切りのいいところで区切り、そこまでの所要時間を検討しておく。
そのうえで、必要な日数を確保し、予備日も確保しておく。
そして、卓当日は、用意しておいてアジェンダに対しての進み具合を常に確認し、遅れた場合はリカバリー策をアドリブで用意してあげてほしい。
4.感情をより動かせるアドリブ力
1~3を達成できていれば、既に100点満点だと筆者は思う。
そのうえで、+αを狙うのが4番だ。
TRPGはその性質上、毎回のセッションで常にアドリブ力を求められる。
シナリオ通りに回せれば及第点だが、シナリオ外の質問などは当然飛んでくるだろう。
そこにアドリブでどこまで説得力を持たせれるか。
ここがキーパリングが上手い、下手を分けると筆者は思う。
アドリブ力が低い人間のキーパリングは、シナリオ厳守、シナリオ外の行動はすべてNG、PLの提案は常に拒否…
そのような人は、キーパーが上手いとは筆者は思わない。
シナリオ至上主義も行き過ぎれば息が詰まるのだ。
だからこそ、シナリオを原典としつつ、あなただけのセッションをあなたのアドリブ力で描いてほしいと思う。
そのアドリブ力が、満足感につながるものであれば、なおよいと思う。
KPに求められる素質
上記を達成するために必要なキーパーに求められる能力は、下記の4つに集約されると考えている。
好奇心
コミュニケーション力
参加者を信じる力
公平であること
1.好奇心
好奇心というと難しいかもしれないが、こうなったら、どうなるだろう?という、探求心だ。
これが足りない人間は、往々にしてマニュアル人間だ。
つまり、作者が憎んでやまない、シナリオ至上主義者だ。
だが、少しの好奇心があれば、それらも解消されるだろう。
2.コミュニケーション力
これについては、言うまでもないだろう。
TRPGはコミュニケーションがメインのゲームだ。
あって損することはない。
3.参加者を信じる力
シナリオが難しすぎて、アイデアのロールが飛び交うセッションを、あなたは面白いと思うだろうか?
筆者はNoだ。
むしろ、高難易度大好きマンなので、アイデアなんて振らせようものならアレルギーでヘッドホンを投げ捨てるレベルだ。
自身で悩み、解決策を導き出し、PCに演じさせる。
それもTRPGの醍醐味だろう。
だからこそ、KPは参加者を信じなければならない。
PLなら、このシナリオをハッピーエンドに導いてくれる…面白いRPをしてくれる…このようなことを信じるべきだ。
むしろ、信じれない人間と卓を回るべきではない。
筆者が野良卓を面白くないと感じる大半の理由は、この3番だろう。
参加者のことをあまり理解しないままで回すセッションは、ここが上手くいかないケースが多い。
4.公平であること
会議の場で参加者に軋轢があってはならないように、TRPGにおいても参加者間に不公平感が残ってしまうセッションは、すべからく失敗した、と言えるだろう。
キーパーは、事前に参加者がTRPGにどのようなことを望んでいるかを理解し、それが達成されるように最大限のことを配慮すべきだ。
その配慮が、ある人に偏っていてはいけない。
この人にこのシーンをやらせたかったんだよ!なんて、間違っても言ってはいけない。
それ以外の人がそれを聞いたときに、俺たちはおまけかよ?と思ってしまうだろう。
PL論
PLの舞台装置としての役割
さて、最後にPLについて語る。
PLの舞台装置としての役割は、主役だ。
筆者は、KP/PL論争については、断言するが、PLが主役であり、PLが望むことは、よほどのことがなければ採用すべきだと考えている。
だが、2人以上のシナリオについては、サポーターに回ることもあるだろう。
だが、あくまで主役だと断言したい。
自分の人生の主人公は、自分だ。
だが、他の人の人生にとって、あなたは登場人物の一人でしかない。
それを認識せずに、常に自分が主役だと言ってきかない人と回ったセッションは、苦痛にまみれたものになるだろう。
自身が主役だと疑わず、ただ、他PCにとっては、単なる登場人物の一人でしかない、という視点が必要だ。
PLとして必要な素質
KPに必要な素質を、PLは備えるべきだ。
そのうえで、ファシリテーション以外の部分で必要だと思う部分を下記にまとめる。
主役を務めるうえでの素質
1. 自信
2. アドリブ力
3. あきらめない心
他の人のサポータ―としての素質
4. 他人に感謝する心
5. 人の喜びを自分のものとして味わう心
1.自信
主役は悩みながらも、決断を下し、前へ進む。
TRPGにおいては下記の流れだ。
事件に巻き込まれ→探索し→悩み→決断を下し→エンディングを迎える
そこに、後悔や反省はつきものだろう。
だが、決断を下すことを恐れないでほしいと思う。
逆に言えば、決断を下せない人は、HO1などのスモールナンバーを握るべきでないし、握らせるべきではない。
筆者が思う主人公の素質とは、何であれ大きな決断を下せる人間だと思う。
だからこそ、人の言いなりになるような人間は、主役ではない。それは、ただの誰かの操り人形だ。
人生で誰かの操り人形になる人もいるだろうが、せめてTRPGでは、いつも以上に主役を演じて見てもいいのではないだろうか?
2.アドリブ力
良いシナリオは、想定外が多くあふれていると思う。
だからこそ、状況を素早く察知し、論理を組み立て、決断を下していく必要がある。
そこには、アドリブ力が必要だ。
また、RPについてもアドリブ力が必要だ。
アドリブ力がない人間は、常にRPに時間がかかる。
その時間は、参加者全員が共有する負債なのだ。
人生とは有限だ。
参加者の人生を、あなたが悩んだその時間、奪っているのだ、という自覚を持つべきだ。
少なくとも、私はアドリブ力ないから時間がかかるんですよね、と開き直っているような人と二度と同卓したいとは思わない。
3.あきらめない心
自信にも通じる話だが、PLとしての自分の能力を信じ、自分ならこのシナリオでハッピーエンドを迎えれるはずだ、という諦めない心を持っていてほしいと思っている。
安西先生も、諦めたらそこで試合終了です、という名言を残している。
想像してみてほしいが、死ぬことが決定した瞬間に、どうでもいいわ、と投げ出すような人と一緒にセッションをして面白いだろうか?
そのような自暴自棄は、他プレイヤーにも悪影響を及ぼすのだ。
良識のあるプレイヤーは、死が確定する最後の最後まで、諦めない心を持ち続けてほしいと思う。
4.他人に感謝する心
TRPGは複数人で行うゲームだ。
誰がいなくとも、成り立たない。
それを理解し、最大限の感謝・敬意を払うべきだ。
感謝さえしていれば、人に失礼なことをすることもなくなるだろう。
感謝がなくなると、人は無礼になるのだ。
そして、もう一つ覚えてほしいが、無礼は積もり積もると、心が離れていく。それが、一瞬で来るか、徐々に距離が離れるか、それは無礼を受けた人次第だろう。
私は、率直な人間なので、無礼を働かれたら、無礼で返す。
目には目を、歯には歯を、というスタンスだが、このようなスタンスで真っ向からぶつかってくれる人はそんなにはいないだろう。
基本的には、徐々に距離感が開く。
自分の心に手を当てて考えてほしいが、仲良くしたい人から距離を取られてはいないだろうか? 何かのセッション後に、次のセッションから誘われなくなったりしなかっただろうか?
人間は単純接触効果により、その人に抱いている感情が増幅されることは、よく知っている人も多いだろう。
これは、好きが増幅されるケースもあれば、嫌いが増幅されるケースがあることを重々承知したうえで、身のふるまいは考えてほしいと思う。
身のふるまいを考えるうえで、人当たりを良くしようと思うのであれば、他人に感謝する心を忘れないことが、第一歩だと思う。
5.人の喜びを自分のものとして味わう心
TRPGは複数人で楽しむゲームだ。
他人のRPを楽しむ、他人の気持ちを自分のものとして味わう心は持ち合わせるべきだと筆者は思う。
会議、TRPGも本質は同じだが、話者は一人、というところに本質があるように思う。
つまり、話者と聴衆が目まぐるしく入れ替わり、タイムリーにシナリオを完成させていく遊び。
これこそが、TRPGの本質だと思う。
だからこそ、話者としてRPしているときに楽しむことはもちろん、他の人のRPも聴衆として楽しんでみてほしいと思う。
この心がない人は、自分が話す時間が少ないと不満を言うが、それだけではないはずだ、と筆者は思う。
筆者の信条として、面白いことを面白く、面白くないことも面白く、ということを生きる上での指針としている。
この信条が生きる上での幸せにつながるのか、筆者はまだ答えが見いだせないが、少なくともポジティブに生きていく上では少しは助けになるだろう。
まとめ
色々と書きましたが、全て筆者の世迷言です。
最近TRPGが多かったのですが、いろいろと思うことがあったので、まとめました。
全てをできるべきとも思わないですし、これですべてだと言い切るつもりもありません。
ですが、私が現状の文才で書けるものを、最大効率で書きだしました。
長文になりましたが、読者の皆様の、何かの気づきになれば、と思います。
色々書いたけど、特定個人を攻撃する意図はありません。
全体攻撃です。
殴ったら殴り返される覚悟はあるので、私自身、上記のことは常々意識しようと思います!
それでは、良きTRPGライフを!
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