【のりたまダービー】観戦記 兜vsジンバ戦
のりたまダービー開幕からおよそ50日が経過しました。
現在進捗はこんな感じです。
まだ対局は残っていますが、すでに優勝者は決まっています。
あかりんさん(satoha2)が全勝で見事に優勝を飾りました!
上位4名まで決まっていますね、これは全対局が終わってから詳しくやりましょうか。
さてこの記事では兜さん(kabutoshiro)とジンバさん(zinnba)の対局を書いていきます。
では対局者の紹介からいきましょう。
まずは兜さん。
兜さんはのりたま将棋クラブの古参会員です、正統派の居飛車党として知られていましたね。
熱烈なカープファンとしても知られています、今年はウハウハになるでしょうか?
アイコンのおじさんは俳優のリー・ヴァン・クリーフ、西部劇の悪役など多数の出演作があります。
強面のイメージ通り豪胆な人物を演じることが多いですね、銃口を相手にピタリと向けて微動だにしない姿が居飛車党の兜さんに重なります。
悪役なんだけどかっこいいおじさんなんですよ!
しかし兜さんの肉声は可愛かったという証言もあり、私の中の兜さん像が揺らいでいます。
24のレートは1096、81のレートは1582です。
続いてジンバさん。
ジンバさんは競馬部の創設者にして初代部長です。
現在競馬部内の仮想通貨として使われている「ジンバ」はジンバさんの功績を称えて命名されているんです。
競馬の予想では血統背景から馬場の特徴まで幅広い知識で圧倒的な精度を誇っています、棋馬戦に参加されないのが残念ですねえ。
一方将棋の方では変わった戦法ばかりやってる印象です、私も1度だけ指したのですが、左玉とかいうわけのわからないことをされて困惑しましたね。
しかしながら実力はたしかです、のりたまダービーではあかりんさんに次ぐレートを誇ります。
24のレートは1458、81のレートは1803です。
ジンバさんの方が1ランク上なので兜さんの先手で対局ですね。
さてさていつものように解説者をお呼びしています。
まじくりさんです!
まじくりさんはのりたま名人戦でも実績のある実力者です、そしてアイコンにもある通り、筋違い角愛好家でもあります。
実はこの記事が遅れたのはこれが原因だったのです、ジンバさんの筋違い角をまじくりさんに解説してもらいたくて、実現するのをずっと待っていたんですよ!
しかしながら希望は消えてしまいました、意外と実現しないものなんですねえ。
まじくり「角道を開けないという、最強の対策がありますからね…こればっかりは仕方がありませんね」
いやはや残念です、でもこの対局も楽しみな1戦ですよ!
まじくりさん対局者の印象はいかがでしょうか?
まじくり「兜さんは居飛車も振り飛車も指せてオールマイティな感じのイメージです。24のレート以上の実力があると思われ、事実今行なっている通信将棋ではボコボコにされています」
おや、私の認識と違いますね。
まじくり「兜さん居飛車党でしたっけ、僕のイメージでは何でも指せる感じでしたー」
昔はそれこそ居飛車一本だったはずですよ、最近は知らないんですけどね。
ジンバさんの印象はどうですか?
まじくり「ジンバさんは作戦の幅が広く、知識が深いのだと思います。筋違い角などの力将棋を主戦とし、形にとらわれない腕力タイプでしょうか」
ああ、筋違い角・・・見果てぬ夢でした。
さあ気を取り直して対局にいきましょう!
局面は兜さんの中飛車に対してジンバさんが8手目に△8四歩で居飛車の意思表示をしたところです。
居飛車党の兜さんが飛車を振ったのに驚きましたね、角道を止めるクラシックな中飛車とでも言うのかな?
まじくりさんはどちらを持って指すことが多いですか?
まじくり「僕は鬼殺し風の将棋は詳しくないですが、角道を止めた振り飛車を指すという意味で兜さんの方を持つことがありますかね」
たしかに桂馬をすでに跳ねているのは変わっていますね、それにしても兜さんが振り飛車、それもよりにもよって中飛車とはなあ!
リー・ヴァン・クリーフについて熱く語ったばかりなのになあ!
まじくり「プロでも居飛車党の先生が飛車を振ることもありますからね」
ふうむ、ところで展開はどうなりそうでしょうか。
まじくり「中飛車にもいろいろあり、5筋をつかないものや、逆に5筋位取りをするもの、左金の扱い、穴熊に囲う…など。本局の局面主導権はジンバさんがにぎりそうですが、兜さんがどのように迎え撃つかも必見ですね」
ふむふむ、これは楽しみです!
局面はジンバさんが26手目に△3四飛で石田流のようにしたところです。こういうのをひねり飛車って言うのかな?
でも飛車先の歩も切ってないし、8筋の歩を突いた分だけ手損になってるような気もするんですけど、どうなんでしょうか?
まじくりさんはこういうのやりますか?
まじくり「飛車先を交換せずに、ひねり飛車のように飛車を転換する作戦は、つくつくぼうし戦法という名前がついていますね。つくつくぼうしと言えば、セミを思い浮かべるかもしれませんが、つくつくぼうし戦法はセミから来たのではなく、2筋と7筋の歩を突くから、つくつくぼうしという名前になっています。自分の土俵で戦いたい、真剣勝負で研究合戦になるのを避けたい、中終盤が得意という方に適した作戦かなと思います」
ははーん、ジンバさんがつくつくぼうしがどうのと言っていたのはこれのことだったのかー。
まじくり「私は指したことはありませんが、ひねり飛車が有力ならばこのつくつくぼうし戦法も有力ではないかなと思います。注意点は玉頭のキズと、ひねり飛車と比べて歩の交換ができていないことでしょうか」
ううむ、変わったことをされると困るんですよねえ。兜さんがどう対応するのか注目ですね!
局面は兜さんが美濃囲い、ジンバさんが銀冠に組んだ後に、兜さんが飛車を2筋に振ってから57手目に▲6四歩で歩を取り込んだところです。
相振り飛車は、にらみ合いが続いてなかなか戦いが始まらないことが多いんですよね。
これも仕掛けと言っていいのかわからないんですが、どうなっているんですかねえ?
これどっちが有利なんでしょうか?
まじくり「相振り飛車は駒組みでいかに攻め筋を組み立てるかが腕の見せどころですね。形勢判断の指標としては 手番 ・駒の損得 ・玉の堅さなどあるのですが、まず手番は先手が握っていますね。駒の損得は互角。玉の堅さは銀冠と美濃囲いで後手に分がありそうですが、美濃囲いは4枚なのでこの瞬間は互角です。 形勢としては互角ですが、戦いが先手陣の玉頭周辺で起こっているのでどうでしょうか。ある程度の駒得や駒効率を獲得しないと不利に陥るかもしれません」
なるほど、どちらに形勢が振れるのでしょうか。
ちょっと戻るんですけど、私が気になったところです。
兜さんが43手目に▲8六歩と突きました、これで歩を手持ちにしましたけどジンバ玉が安定してしまった気がするんですよね。
これはどうなのでしょうか?
まじくり「8筋の歩交換は先手にとって権利のようなものですから、急がなくてもよかったかもしれません。それよりも堅さで負けないように先手も銀冠を目指し、その後穴熊までいければ長い戦いになったと思います」
なんと、開戦したことが良くなかったかもしれないということなのですか。
まじくり「歩の交換も価値があるのですが、それ以上に玉を固めた方が価値がありそうでした」
やはり相振りは難しいなあ!
まじくりさんがポイントだと思う場面ですね。
局面はジンバさんが62手目に△6七歩と打ったところです。
まじくり「この△6七歩が利いたのが大きかったです。取れば美濃囲いから金が離れてしまい、どう対応しても制約が残ります。非常に鋭い一着でした」
なるほど形を乱す手裏剣だったんですねー、やっぱりジンバさんは強いなあ!
局面はジンバさんが76手目に△3七飛成と飛車を切ったところです、これは決断の1着ですね!
まじくり「そしてこの豪快な決め手の飛車切り。後手は銀冠が堅く、攻めに専念すればよいです。△6七歩の効果で角が浮いており、非常に厳しい手になっています」
びっくりした飛車切りでしたけど、自陣は鉄壁ですからね。その後の王手飛車を見せながらの攻めが強烈でした。
これは決め手なんでしょうけど、勝負の分かれ目というかポイント的なものはどういったところだったんでしょうか?
まじくり「ポイントとしてはやはり、『戦いを起こす場所』にありました。歩の交換や飛車角交換でも、美濃囲いの上部が弱体化するようなやりとりは先手にとって不利に働きました」
すると2筋に飛車を振ったのが良くなかったのでしょうか?
まじくり「2筋に飛車を振り、右銀と角の連携で右辺で戦いを起こす構想が疑問だったかもしれないですね」
ううむ、難しいなあ。
まじくり「しかし7五歩5七銀の形で上部から銀冠を攻めるのは難しく、それだけジンバさんの立ち回りが見事だったということだと思います」
なるほどなあ、ところで敗着的なところはどうですか?
まじくり「飛車切りでしょうか」
局面は兜さんが69手目に▲2四飛で角を取ったところです。
まじくり「玉頭にはすでに火がついており、相手の駒台に強力な手段を追加してしまいました。飛車切りをすぐに取らなかったのも大切なところで、飛車を犠牲に火消しをしようとした先手の望みが砕かれました」
兜さんの大駒が両方使いにくかったでしょうか、ジンバさんの冷静な対応も光りましたね。
まじくりさん1局を振り返っての感想はいかがでしたか?
まじくり「鬼殺しの出だしで、それを外しつつ相手の想定していない形を選んだ兜さんの中飛車が好着想だと思いました。しかし鬼殺しが不発だった時の第2段としてつくつくぼうし戦法を繰り出したジンバさんの手球の多さもお見事でした。組合いから戦いが始まった場所が先手にとって不運でしたが、両者力のこもった読みの入った応酬でした」
変わった立ち上がりでしたけど熱戦になりましたね。
まじくり「変則的な立ち上がりだったとは思えない本格的な戦いで、実はこのお2人とも相矢倉を指しても強いのでは? と思いました」
実はのりたまダービーで相居飛車はほとんどなかったんですよね、振り飛車党率が高かったのかな?
まじくり「ハンデ棋戦ということも寄与したかもしれませんね。香車落ちは上手が飛車を振ることが多いですからね」
ハンデ棋戦という新たな試みでしたからね、これからますます発展させたいものです。
まじくり「同じ棋譜はおそらくこの世に存在しない、唯一無二の棋譜が誕生したと思われます。対局者のお2人、お疲れ様でした」
兜さんジンバさんお疲れ様でした、そしてまじくりさん解説ありがとうございました!
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