見出し画像

【のりたまダービー】観戦記 ひぐらしvsドラキー戦

 開店休業状態となってしまった「のりたま将棋クラブ」を救うべく、のりたま競馬部の有志が開催した「のりたまダービー」も、ついに終幕しました。

 参加したみなさんの積極的な対局で、想定したより早く全対局が無事に終わりました、お疲れ様でした。

やはりレートは正しいのか

優勝は見事に全勝したあかりんさんでした! おめでとうございます!
 全てが香損あるいは香落ちでの対局でしたからストレスもあったと思うのですが、上位者の貫録をまざまざと見せてくれましたね!
 唯一の競馬部外からの参戦でしたが、外からやってきて無双して去っていくという強者ムーブでしたね(香車にかけているんですよ)。

2位はジンバさんでした、4勝2敗の好成績です。
 得意の筋違い角は発動しませんでしたが、手札はたくさんあるんですねえ。
 どうやらまだまだ隠し玉がありそうじゃないですか、これはまた参加してもらわないといけませんねえ。
 しかしやはり筋違い角を見たかったですねえ、スピニングトーホールドを出さないファンクスのような感じです、例えが古いですね。
 ハンデの関係で後手ばかりとなったことも一因だと思いますね、次回ではルール改正をお願いしたいと思います!

3位はモコナさんでした、4勝2敗ですね。
 上位2人以外にはしっかり勝ちました、以前から思っていたのですがモコナさんはレートより相当強いですよ。
 オリックスの試合を見てる暇があったらレート戦を指して適正レートに近づけるのです!

4位はひぐらしさんでした、3勝3敗ですね。
 指し分けなんですけど、上位のジンバさんに1発入れているのが素晴らしいです。
 ひぐらしさんもジンバさんのように変わった戦法好きという印象でしたが、今大会ではオーソドックスな戦法が目立ったように感じました。

5位はドラキーさんでした、2勝4敗です。
 昔のように中飛車1本じゃなくなっているんですねえ、安心するような寂しいような複雑な気持ちです。
 まあ戦法にも流行り廃りはありますからね、また新たなドラキー流を見せてくれるのでしょう!

6位は兜さんでした、2勝4敗です。
 
思うように星が伸びませんでしたね、みんなが強すぎたのもあると思うんですけど。
 それより何より衝撃的だったのは兜さんが飛車を振っていることですよ! 私の中の兜さん像はブレない居飛車党というイメージでした、まさにリー・ヴァン・クリーフのようなガンマンのイメージだったのにー。
 でも人は変わっていくものですからね、佐藤天彦先生も飛車を振るようになったと聞きますし、リニューアルされていくものなのでしょう。

7位はなおきさんでした、6敗です。
 これは意外でしたね、なおきさんは強いんですよ!
 それ以上に周りの人たちが強かったんでしょうか、これはいけませんねえ、低級帯の人が参加しにくいじゃないですか。
 なおきさんは今大会の主催者として尽力くださいました、ありがとうございました。

 結局レート最上位のあかりんさんが全勝し、上位のジンバさんが2位となってしまいましたから、ハンデが適正だったかについては今後の課題となりそうですが、よりルールをブラッシュアップして良い大会に育てていきたいものですね。

 私の方で集計した戦型についてご紹介したいと思います。
 全21局のうち
・相居飛車  3局
・相振り飛車 4局
・対抗形   14局
 でした。

 対抗形の内訳は
・中飛車   6局
・四間飛車  5局
・向かい飛車 2局
・三間飛車  1局
 でした。

 ほとんどの対局でどちらかが飛車を振っていたわけですね、これはハンデの影響もありそうです。

 
 さて最後にひぐらしさんとドラキーさんの対局を紹介します!

 では対局者の紹介からいきましょう。

 まずはひぐらしさんです。

ひぐらしってセミの一種なんですねえ

 ひぐらしさんはのりたま競馬部の創設メンバーです、予想やPOGの指名では独自の理論で我が道を行くという印象です。
 ワイドが好きなのか大半はワイドを買っていますね、しかし堅実にというよりは1発狙いが多い気がします。

 将棋のほうも独自路線な気がします、私とは通信将棋で1局指しただけなんですが、まさかのアヒル戦法ですよ! 頭を抱えた記憶が蘇りますね。

 24のレートは1059、81のレートは1556です。


 ドラキーさんは以前の記事で紹介したので割愛します、競馬部の部長にして中飛車使いです。


 さあさあ今回も解説者をお呼びしましたよ!

 くりそらさんです!

この絵かわいいなあ

 くりそらさんはのりたま名人戦で名人への挑戦経験もある強豪です、何でも指せる人なので解説役にピッタリですね。本当に競馬部は人材が豊富です。

 くりそらさん対局者の印象はいかがですか?

くりそら「ひぐらしさんは、実は将棋よりも競馬部員のイメージが強かったです。先日のドラフトでのストレート指名が記憶に新しいです。 将棋はてっきり居飛車党なのかと勘違いしていたのですが、振り飛車なども指す多芸な棋風なんですね。そう考えると器用な将棋なのかもしれません。ただ、本局はオーソドックスな居飛車を選んでいます」

 むむ、ネタバレしてしまいましたね! 実際は棋譜を見ながらやり取りしてるんですが、記事はリアルタイムで見ている体で書いていきます。

くりそら「ドラキーさんものりたま競馬部で活躍していますね。部の中心人物です。前期の新馬杯では首位争いをしていたように、なんとなくですが予想も新馬の指名もうまいイメージがあります。 将棋は振り飛車党で、特に中飛車――先手中飛車のイメージが強いです。対振り飛車(相振り飛車)での中飛車左穴熊が特に印象的。一方で、後手番の戦法には悩んでいるのかなと思いました。ゴキゲン中飛車には超速という強敵がいますからね。本局の四間飛車も、後手番の試行錯誤がうかがえる選択だと思いました」

 おちりすさんも対中飛車に超速を使うと言ってましたね、中飛車側の対策は確立されていないんでしょうか?

くりそら「中飛車側が打ち出したいくつもの対策たちが、プロの将棋などの最先端のところでは居飛車にすべて破られている、というのが現状だと思います。 もちろん先手を持った人が対策をすべて破れるかどうかは使い手次第なのですが、ムードとしては、中飛車側が苦しさを感じているのだと思います。 ちなみに、私では先手を持ってちゃんと中飛車の対策を破る自信はないです」

 ふむーん、中飛車受難の時代というわけですかー。

実家のような安心感です

 局面はドラキーさんが6手目に△4二飛で四間飛車にしたところです。
 オーソドックスな対抗形になりそうですね、くりそらさんはどちらを持つことが多いですか?

くりそら「定番中の定番で、四間飛車党なら親の顔よりも見た局面ですね。 私は居飛車党ですが、振り飛車も指すことがある……という変わったタイプなので、どちらを持つこともあります。割合で言うと、すこし居飛車を持つことが多いと思います」

 こういう普通の出だしを見るとホッとするんですよ。


定番こそ王道なんですよ

 局面はひぐらしさんが31手目に▲3五歩で仕掛けたところです。
 私は左銀が上がってきたら急戦だぞ、と思うことにしているんですが、まだ定跡の範囲内ですよね?

くりそら「ほぼ定跡形だと言えると思います。ひぐらしさんが仕掛けの前に▲1六歩と間合いをはかる手を指しているのがポイントになりそうです。ドラキーさんは自然に高美濃を組む順に向かいましたが、この▲1六歩と△6三金の交換が入っていない形が、いちばん多い定跡の形でした」

 定跡から外れる瞬間こそが形勢が変わるときなのかもしれません。


まだ定跡なのかな?

 私が気になったところです。
 ひぐらしさんの▲3八飛に対してドラキーさんが△4五歩と角道を開けました。
 ドラキーさんが銀取りを上手く切り返して1本取ったと思っていたんですよ、ひぐらしさんの飛車は浮いているし王様が露出してるから強く戦えないと思っていたんです。
 でもこの後の展開はひぐらしさんペースになりましたから、角道を開けたのは良くなかったのでしょうか?

くりそら「△4五歩と角道を開けた手は妥当な手段だと思います。替えて、△4三銀と銀を引くくらいでは、▲3五銀と銀を五段目に出てこられてさばきが難しくなってしまうでしょう。 この後なのですが、先手の銀が▲5七銀引と下がったところで、後手は本当は△4三銀と引いて飛車交換を挑みたいところだったと思います。ただし、本局の形ですと、陣形が高美濃になっているせいで、銀が浮いてしまいまって飛車交換に向きません。高美濃への発展がマイナスになったのかなと思います。 もしかすると、ここが誤算だったかもしれませんね」

 なんと、私は高美濃信者なんですよ! ひぐらしさんの仕掛けにどう対応するのが良かったのでしょうか?

くりそら「高美濃を目指すにしても、△7四歩のほうを先に突くのが一案でしょうか。ここから実戦と同じように進むと……」

くりそら「こんな局面を迎えます。この図であれば、△4三銀と引いて▲3三飛成△同桂、と飛車交換の進行にする対応がありました。 これなら4三に引いた銀が浮かないですし、駒の損得がないまま大駒交換ができたので、振り飛車にも不満がないと思います。互角のさばき合いだったのではないでしょうか」

 ふうむ、なんとなくで王様を囲っていてはいけないのだなあ。

 くりそらさんがポイントだったと思うところを教えてください。

53手目の▲7五桂
65手目の▲6三香

くりそら「2手でセットみたいな攻めの手です。 拾った桂香を美濃囲いの痛いところにセットできました。高美濃攻略の手筋で、居飛車党も、受ける側の振り飛車党も頭に入れておきたいお手本のような手だったと思います!」

 これは痛いですねえ、泣いちゃいそうです。

 他に決め手となったのはどこでしょうか?

鋭い1着です

 局面はひぐらしさんが79手目に▲5五角と打ったところです。

くりそら「この▲5五角が勝着になったと思います。ちょっと善悪はわからない角打ちなのですが、対する実戦の△5四金では受けにならなかったので、そこから先手が後手玉を寄せる展開になりました。ここが分かれ目でした。 寄せに入ってからは、ひぐらしさんがよどみなく最後まで指したと思います。後手としても、この後ははっきりとチャンスがなかったというところでしょうか」

 うーん、ひぐらしさんが築いた中央のお城が手つかずのままでしたからね。謎の囲いでしたけど取っ掛かりもなかったなあ。

くりそら「▲3九歩の底歩っぽい歩が堅かったですね。ここの歩を打つとしぶといのは、舟囲いのコツなんですよ」

 なるほど攻めも守りも盤石だったんだなあ!

 くりそらさん1局を通しての感想をお聞かせください。

くりそら「序盤のやり取りで、一瞬にしてリードが開いた印象です。ひぐらしさんはリードを守りつつ、最後は突き放す指し方が的確だったと思います。 ドラキーさんはあまり攻めの手が回ってこなかったですね。力が出なかったと思います」

 定番の対抗形でしたけど学びが多かったですね、くりそらさん解説ありがとうございました!


 さてこれにて第1回「のりたまダービー」の観戦記も終わりとなります。
 参加者のみなさんお疲れ様でした、解説に協力してくださった方々にも深く御礼申し上げます。
 記事内で失礼な言動があったかもしれません、大会を盛り上げたいという一心でしたことですのでどうかご容赦ください。

 この大会が今後も盛り上がっていくことを願って記事を締めくくりたいと思います。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

 観戦記者 シロ・ヤマオカ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?