「人生の秋、そろそろ主人公になってみませんか?」
「好きに生きる」という考えをわがままと批判する人もいれば、自分を優先することに罪悪感を抱く人もいる。でも本当は、自分らしく生きた方が、周りのためにもなるんじゃないだろうか。
人生には春もあれば秋もあり、思春期になぞらえた「思秋期」という言葉がある。主に40~50代を指し、この時期には心理的危機が起きやすいという。
中年期は、働き盛りと呼ばれる一方で失うものも多い。
体力や知力(特に記憶力!)は下降線をたどり、若いつもりでも、今までのような無理はきかなくなってくる。
子どもは親離れを迎え、定年はまだ先だが、自分の中心を占めていた目標や役割が一段落する頃だ。人生を振り返って達成感を味わえる人はまだいい。今まで信じていた価値観がゆらぎ「自分の人生は何だったんだ」と、多くの人は悩み始める。
いってみれば人生の棚卸の季節。前半生を整理して、残された時間をどう生きるか見直しを迫られる。
棚卸も一筋縄ではいかない。
私の場合、10~30代は家族の世話に明け暮れた。年齢が上がってからは学校や職場で過ごす以外の時間をほぼケアにあてていたので、一日6~8時間を使っただろうか。約30年間、自分の時間なんてなかった。
ケア生活は他者中心になりがちだ。たとえ相手を思ってのことだとしても、ある面では、ケアの邪魔になるような自分の欲求やら、人生の課題やらを「心の押し入れ」に放り込んで、空けた空間に他者を住まわせている状態だと思う。
私は目の前の生活をこなすのに精いっぱいで、押し入れを放置しすぎた。「断捨離でも…」などと開けたら最後、中から恨みお化けが出てきそうである。そうすれば、私は恨みにとり憑かれ「私の人生を返せ~」と周囲に呪いを振りまく、なんてことになりかねない。
そこで最近、「ゼロ秒思考(※)」を始めた。
ただテーマを決めて、A4用紙に4~6行(1行は20~30字)、毎日10枚書くだけ。1分で書くから考え込む暇がない。良し悪しの評価を下さず、感情や考えをストレートに出すことになる。
モヤモヤを気が済むまで書き続けると、いつのまにか心が整理されて静かになっていく。力まずに少しずつ押し入れの断捨離ができそうだ。
思秋期は、人生経験を踏まえて自分らしい生き方を手に入れるか、恨みお化けにとり憑かれるかの分岐点な気がする。自分の軸を大事にするのは周りのためでもあるんじゃないか。誰だって、恨みお化けに呪われたくはないだろう。
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