ショートショート/「理想形」
日の光が強くなるほど、生まれ出る影の闇もより濃くなるように、科学の驚異的な発達は時に大きな弊害をも生み出す。
銀河連盟は、度重なるアンドロイドの暴走と反乱に悩まされていた。労働力として彼らの存在は不可欠だが、下手をすると使役のために製造した彼らによって自らが滅ぼされてしまう可能性も無いとはいえない。
銀河連盟の指揮官は眉間にしわを寄せ、深いため息をつきながら母船窓外に流れる宇宙オーロラに目をやっていたが、そこに部下の1人が走り込んできた。
「指揮官、良いニュースです!製造元や製造プロセス等の情報は未確認ですが、理想的なアンドロイド群が発見されました。我が連盟でも採用検討の余地ありかと。これをご覧ください」
部下は空中のスクリーンにレポートの一部を映し出した。
・ヒューマノイドとほぼ同様の感情、情動がセットされており、指示系統との円滑なコミュニケーションが可能
・自由意思は最小限に限定。指示系統に対して忠実(暴走、反乱の要素なし)
・常時、設定能力の極限まで業務を遂行
「しかも、アンドロイド間の争いも最小限に抑制されています」
「素晴らしい!望み得るアンドロイドの理想形と言ってもいい。どこで、これを?」
指揮官は片方の眉を上げながら、スクリーンを指さした。
「惑星モニタリングチームからの調査報告です。こちらの惑星で使用されているアンドロイドとのことです」
部下はスクリーン画面を切り替え、別の情報を映し出した。そこにはこう記されていた。
<付帯情報>
惑星:天の川銀河太陽系第3惑星「地球」
リージョン:「日本」
アンドロイド群名称:「サラリーマン」
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