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ショートショート/「雲消し」

「先生は空の雲を自在にお消しなることができると伺いましたが、本当でございましょうか?」

スピリチャル雑誌、月刊「パワーフィールド」の編集者は目の前の老人に向かって尋ねた。
この手の雑誌はどうしても同じようなテーマの使い回しにならざるを得ない。
超能力、UFO、宇宙人、古代遺跡、未来人・・・

そのため、何か珍しいトピックはないかとSNS、テレビ、口コミ等に目を光らせるのが、編集者の常となっていた。
今回は、空の雲を自在に消せるというブロガーが目に留まり、まあ当たれば儲けものというノリでインタビューに臨んだのだ。

老人は飄々と答えた。
「あ、雲な。ナニ、雑作もないことじゃ。いま、やって見せるでな」

「え、いま?本当でございますか?」

「ああ・・・。ほれ、あの東の空に浮かぶ大きな雲があるじゃろ」

老人は窓の外を指さし、編集者にそれを確かめるよう目を向けた。

「はい、確かに・・・」

「今から念をかけるでな」

「念・・・を」

「ただ、ずっと待っておるのは大儀じゃろう。消えたところを見せるで、後でまたここに来なされ」

「後で、でございますか」

「さよう。・・・1時間後に、な」

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