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世界を知っているのはわたしではなく彼女だ。

そこで、じっと向こうを向いて座っている14歳の犬。
小さな頭が円く丘をつくり、その上にふるふると風に揺れる柔い巻き毛の一本一本が自身を囲む空気の隙間を埋めている。
今この時の、この天気、この気温、光、風、しんとした空気、そのあいだに埋め込まれるようにぴったりと存在する生物。
これが、じっと座ることに充足し、満を持して首を傾げ、上目遣いにこちらの心情を覗き込むときには、いつもわたしの存在の心細さと曖昧さとそこに混じる一筋の柔らかな確信とが、細かな細かなバイブレーションに打ち震え、どうしようもなく身悶えするのをぼんやりと追いかけるより他に術がない。

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