『ほこりを胸に、ともにうたおう』――SHとわたし。
2020年10月27日。
Sound Horizonはメジャーデビュー16周年……否、Around15周年2周目を迎える運びとなった。
(疑問を抱いてはいけない。公式がそう言っているのだから、今年は16年目ではなくAround15周年2周目である)
記念すべき日から少し時間が経ってしまったが、ここで改めてSound Horizonでわたしの好きな曲をいくつか紹介していきたいと思う。
引用先がApple MusicなのはわたしがApple Music信者ゆえなので、試聴できない場合は大変申し訳ないのだが、他のサブスクでも配信中なので是非ともお手持ちのサービスで聞いて欲しい。聞いてくださいお願いします。
※なお、『いずれ滅びゆく星の煌めき(ヴァニシング・スターライト)』の楽曲についてはここで挙げてしまうとそれだけで軽く1万字を超えてしまう気がするので割愛します。過去の記事で語り尽くしているので良かったら見てください↓
ちなみに、すべてわたし個人の主観と推測・解釈でものを語っているのでそこは了承して頂きたい。
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Yield/『Elysion〜楽園幻想物語組曲』
過去記事でも書いたが、わたしがサンホラを知ったのは中学の同級生がCDを貸してくれたことがきっかけ。
その当時渡されたのが、この『Elysion〜楽園幻想物語組曲〜』だったわけである。
Elysionは一言でふんわり言うと「愛憎渦巻く失恋ソング」の塊。
だいたい登場人物が死ぬと名高い(褒めてます)サンホラ曲の中でも、トップクラスで結構な人が結構な死に方をする。言ってしまえばヤンデレ展開のオンパレード。
だがその苛烈なストーリーと重厚かつ壮大なサウンド、ボーカル・Aramaryさんの美声が絡み合いとんでもなく癖になる。
発売から15年経った今でも、その魅力は全くもって色褪せない。
10曲目の『StarDust』なんて、今でもアーティスト内カラオケランキングは断トツ1位である(10月末、最寄りカラオケ店調べ)。
その中でわたしがいちばん好きな曲が、6曲目の『Yield』。
英訳すると「(農作物を)産出する」とか、「(結果、利益を)生む」とかそんな意味のこの曲は、民族音楽よろしいバグパイプソロから始まる。
物語としては、ひとり娘が収穫のためにせっせと働く様子が描かれる。実りの秋を待ち侘びて種を撒き、夏を過ごす。農業、収穫、農村の風景を思わせるような歌詞やサウンドの中に、巧妙に示唆される娘の恋心。
一夜限りの 情事でも構わない
それをも女は 永遠に出来るから
不毛な恋と 君は笑うだろうか?
やっぱり君は 幸せなんだろうね…
凍える夜は夢を見るの 夏が過ぎれば想いが実る…
結果…収穫…それは果実を産む
最も遅い収穫…それは甘い果実を産む
「―――それでも私は幸せになりたいのです……」という娘の嘆願の後、響き渡るはバグパイプ。このバグパイプがあまりにも好きなんだなあ。
とかなんとか言いながら聞き惚れていると、気がついたらひとり娘は収穫を誤り首を刈り取っていた……とまあ、そんな話である。
首が落ちるSEがものすごくリアルだったり、首落ちた後奏のコーラスがやたら綺麗でゾッとしたりとなかなかトラウマになりそうな曲なのだが、Elysion全楽曲そんな感じだから仕方がない。
(ちなみに若き日のわたしはエルの楽園[→Side:A→]がトラウマになった。今ではとても好き)
でも、このどう足掻いても人を選ぶであろう首刈りソングがわたしはめちゃくちゃに好きで。多感な中学時代、通学BGMは大体Yieldだった。何ならリコーダーでメロディ吹いたりもしていたな。地味に指が大変だった記憶がある。
終端の王と異世界の騎士〜The Endia & the Knights〜/少年は剣を・・・
Elysionの後、同人時代からボーカルを務めていたAramaryさんが惜しまれつつ脱退。その後現在に至るまで、サンホラは多くのゲストシンガーの方々がボーカルに付いた。少年〜はちょうどその転換期に発売されたシングルである。
「初心者にサンホラを勧めるなら?」と聞かれたら、わたしは迷わず終端の王と異世界の騎士を選ぶと思う。
ファンタジーRPGを彷彿とさせるサウンド。まるでゲームのオープニングのようである。
実際わたしは愛してやまない『マジカルバケーション』のオープニングをこの曲で制作した。脳内で。
(↑マジカルバケーションについてはこちらの記事をどうぞ)
サンホラを知らなくても、この曲は聞いたことあるかもしれない!という方もいらっしゃるのではないだろうか。Apple Musicではトップソング先頭だったし。
癖が強くて人を選ぶ(褒めています)サンホラの中でも比較的聞きやすいと思うので、是非ともここから地平線の魅力を知っていって欲しい。そして沼にハマっていただきたい。
なおこの曲の間奏と後奏で入ってくるREMIさんの高音コーラスは、あまりにも伸びやかかつ綺麗なので一生の遺産にするべきだと思う。
朝と夜の物語/『Roman』
少年は〜の後、満を辞して発売されたアルバム、Roman。
舞台はフランス。曲ごとに物語が完結する所謂オムニバス形式をとっている。
で、この1曲目『朝と夜の物語』は、生まれてくる前に死んでしまったイヴェール・ローランという男が自分の携えていた双子の人形達に
「僕が生まれてくるに至る物語を探してきておくれ」
と頼んで送り出す話で、このRoman全体のオープニング的な役割を担っているのだが……
とにかく頭から終わりまでめちゃくちゃにかっこいい。
時計の針とストリングスで静かに始まったと思いきや、急に現れたバンドサウンドとの融合。合間に挟まれる大塚明夫さんのナレーション。後奏で流れてくるのはこれから聞くことになるであろう、他楽曲の音源ないし台詞達。
総称して『そこにRomanはあるから君たちも探せ』と言われているかのような。
なおこの曲にはギターパートがあるが、ライブではイヴェール本人がギターを持って登場する。バンメンのギタリストさんとのソロ回しからのセッションはあまりにもかっこいいが過ぎて、わたしは一瞬で虜になってしまった。
そして何より、朝夜はわたしの進路を決定づけたと言っても過言ではない。この曲にハマってしまったおかげでわたしは大学の二か国語履修をフランス語に決め、そのままフランス言語文化のゼミに進み、フランス言語についての卒論を書いてしまったのだから。
初めて仏和辞典を手に入れて調べた単語は「Hiver」だったし、ネイティブ発音は割と難しくて天を仰いだなあ。懐かしいなあ。
最果てのL/Nein
ラストは最新アルバム(と言っても発売は5年前)より、最後の曲最果てのL。
Sound Horizonメジャーデビュー10周年記念作品であるNeinは、(同人時代を含む)今までの楽曲からいくつかピックアップして、「ちょっと設定やら何やらを否定して結末がどうなるかを見守ってみよう!」というコンセプトで物語が進む。言ってしまえば、公式が投下した盛大な二次創作である。
そして最果てのLでは、ヴァニシング・スターライトのボーカル・ノエルの物語を否定し変えようとするのを「もうやめてくれ」とノエルが否定することで曲が始まる。
ここで過去記事を読んだことがある皆さん、そしてローランの皆さんは「ちょっと待て」と思うだろう。ええ、思っていただいて結構である。だが異論は認めない。
実質この曲はヴァニスタです。
ヴァニスタは割愛するのではなかったのか。否。最果てのLはヴァニスタではなく、あくまでNein収録の楽曲である。
じゃあ許される。許して欲しい。
そもそも、Neinの物語自体がノエルが西洋骨董屋根裏堂で不思議なサングラスR.E.V.Oを手にして、意思をもったそれが動き出すところから始まるのだから仕方がない。
話を戻そう。
わたしが最果てのLを好きなのは、メインボーカルがノエルだからという圧倒的推し贔屓なところもあるのだが、無論それだけではなく。
最果てのLで刺さりに刺さったのは、その歌詞である。
例えば やり直しの効く 物語を 人生と呼ぶのなら
俺は 今 を 本当の意味で 燃えられただろうか?
クソ最低なことばかりが 起こる[第九の現実]だけれど
オマエと出逢えたこの《人生》を否定しないぜ
《グラサン、ヴァニスタメンバー、インタビュアーの三人、市蔵ファミリー、そして、愛のある手紙や声援、これまでの俺の人生においては、信じられねぇくらい温かいメッセージをくれたクソ最高な奴ら》
〜中略〜
だから
《遮光眼鏡型情報端末》(des Rührendes,Evolutionäl und Volzügliches Optikgerät) (R.E.V.O)
《いずれ消えゆく人間》が必死に生きた《現実》を勝手に《悲劇だと決めつけて改竄》しないでくれ
《与えられた命がその檻の中で出逢い懸命に煌めく場所》で
燃えたんだ!
ノエルが歌でぶつけてくる、「人生とは何たるか」ということ。
人生は1回きりだ。やり直しなんて効かない。その中で多くの選択肢があって、選び取った先の未来をわたし達は変えることができない。
それでも人は生きる。死を迎えるその日まで、必死に息をして、必死に選択して、必死に輝くのだ。
それが人生だ、と。ノエルは歌の中で叫んでいる。
この曲を初めて聞いたのが、1年前。わたし自身色んなことがうまくいかずに病みまくっていた時期だっただけに、ヴァニスタサウンドだとかノエルの曲だとかそんな認識も全部ぶっ飛んで、めちゃくちゃ歌詞が刺さってしまった。
この曲の後に『星空の詩』で気持ちを歌にしたR.E.V.Oも、わたしと同じようにノエルの想いが届いたのかなあ。届いていて欲しいな。
***
4曲だけ選抜して書いてみたが、それなりの文字数になってしまった。この時点で4000字を超えている。そんなばかな。
もちろん、Sound Horizonはここに挙げた以外にも多くの楽曲がある。同人時代を含めたら100はいくのではなかろうか。サブスク配信中の曲だけで80曲あるから、恐らく超える。
ちなみにメジャーデビュー後の作品は、Around15周年記念で全盤リマスター復刻を果たしているので、サブスクと一緒によろしくさせて頂きたい。
年数経過やレーベル移籍で廃盤になった数々の作品が普通に店頭で買える、こんな奇跡があってたまるか。ありがとうございます。
(順次リリース中。一昨日、『ハロウィンと夜の物語』が発売。今月下旬にはヴァニスタとNeinが来るのでわたしは死ぬ)
ちなみにわたしはFC限定コンプリートセットを買ってしまった身なので、既に全作品が手元にある(それがトップ画像である)。
このリマスター、Revoさん監修のもとがっつりリマスタリングをしたうえでUHQCDとかいうハイクオリティ高音質媒体へ収録して世に送り出されているため、もう全然違う曲として仕上がっている。
楽譜が読めてちょっと楽器経験があるだけの、趣味程度の音楽知識しか持ち合わせていないわたしでも「何だこれは!?」となった。
あまりにも脳内で消化しきれなかったため、メモに書き起こしたくらいだ。まだ途中までしかできていないが、結構な怪文書になった。
そういうわけで、漸く興味本位で簡単に触れることができるようになったSound Horizon。
本当に今まで音源を手に入れることが難しかったんですよ。何せ最新アルバムも5年前ですからね。ありがとうサブスク。ありがとうリマスター。
このnoteを読んでくださった方のうちのひとりふたりでもいい、是非ともこの魅力に虜になってほしい。そして今冬に新譜が出るから、一緒に感想とい名のクソデカ感情をぶつけ合ってほしい。
(☆7.5th or 8.5th Story BD『絵馬に願いを!』(Prologue Edition)今冬 発売予定です――!)