眠り

眠りにつくために目を閉じる。加湿器の稼働する音だけが静かな部屋に響く。昔、寝る時に考え事をしてはいけないと言われたのを何となく思い出す。仕事の事、今日の事、明日の事。子どもの頃は布団に入ればいつの間にか眠りに付けていたのに、大人になり様々な事を計算して器用にこなせるようになっている筈なのに、眠る事が下手になっている。ウトウトしているのに納まりが悪く、眠りに落ちる事ができなくて、何度も寝返りを繰り返す。
考えない様にと思えば思うほど明日の仕事の段取り、働く人間への指示だし、事務的な業務内容に、締め切り間近の報告書、やる事は沢山ある、1つ1つか確実に片付けているのに、比例して仕事が舞い込んでくる。
仕事があるのはありがたいし、仕事を任せてもらう事も苦ではない。けれど、振り返った時に自分の為の時間があとどれくらいで残っているのだろうかと不安になる。その不安が夜、眠りにつく頃にムクムクと頭をもたげてくるのだ。
人生は有限である。そして、明日の自分の命さえ定かでないのだ。その中で私が私自身の時間として使えるのはきっと年数で言えば幾ばくかもないのだろう。
眠ることが怖い、眠りたい、自分の時間を少しでも起きている状態で感じていたい、身体を休めなければ明日が来る。
時間に追われるようになったのはいつからだろ、時間が自分を追い越すのはいつだろう、その瞬間が来るまで、私は後何度眠につくことができるのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?