宮下ヨシヲ

サイフォン・グラフィカというデザイン事務所を運営しています。お仕事は浜松。紙の素材感と印刷物の匂いが好き。 https://siphon-graphica.net

宮下ヨシヲ

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マガジン

  • 浜松注染そめプロジェクト

    • 10本
  • 90年代名古屋インディー群像(仮)

    僕の経験した90年代半ばの名古屋の小さなインディーポップシーン。インターネットの記録に残っているものから人々の記憶からも薄れてしまっているものまでゆっくり思い出しながら綴っていこうと思います。

  • 片隅の音楽アーカイブ2016-2019

    ル・プチメックのWebサイトに連載させていただいていたコラムをアーカイブ化しました。2016年〜2019年にかけて執筆した文章になります。

  • MUSIC from HAMAMATSU

  • デザインノート

最近の記事

クリエイティブの民主化。

これは第一回目の連載でも少し触れたのだけど、僕はサイフォン・グラフィカというデザイン事務所を主宰している。サイフォンというのは半分器械任せのコーヒー器具で、ハンドドリップとコーヒーメーカーの中間的な手間がかかる。1990年代半ばからデザインを始め、MacやAdobeといったデジタル技術がなければ出来ない、自分のグラフィックデザインに対する自虐と自負を込めたネーミングだった。自虐と自負というのは、基礎があまりに足りないのを自覚していたし、センスとアイデアがあれば新しいデザインは

    • 大人になれば。

      最近知ったのだけど、インディーミュージックのデジタル配信やCD/LP、グッズ販売をしているBnadcampがアメリカに実店舗を構えたそうだ。レコードの販売やライブイベントが出来るようなファンの交流の場を作りたかったということだ。インターネットの登場によって便利な時代になり、自分の好みの音楽やカルチャーを探すことが容易になった。一方で現時点では自分の価値観の外にある本当は好きかも知れないものに出会う機会は失われているのかも知れない。僕はその両方が必要だと思っている。自分の好みで

      • 音楽で再現する構成主義。

        先月、Between The Wars期のアートについて書いたら丁度よくそんなアート性を強く感じるイギリスのバンドが現れた。Between The Warsは第一次と第二次世界大戦の時期のことで、西暦でいうと1910~1930年代にあたる。Between The Wars期にはロシア構成主義やキュビズム、アールデコというスタイルが生まれ、ネットもない時代にも関わらず世界中に瞬く間に広まり、グラフィックデザインやイラストレーションという新しい時代の造形表現も生まれた。日本では大

        • パステルR&Bは新しいムーブメント。

          このル・プチメックのwebサイトでも『好物歳時記』というコラムを連載している岡本仁さんが2000年頃に編集長を務めていたrelaxという雑誌があった。伝説的にすらなっていて、影響を受けた人も多いこの雑誌をあらためて書くことも躊躇われるので多くは書かない。僕は書店でrelaxを購入する際に背表紙をまず見るのが好きだった。例えば「いちばん保守的だと思っているものが、一番過激だったりすることもあるよ。(2001年No.50)」、「流れていくものの中から流されないものを見つけることが

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          41本
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          10本

        記事

          “視点”の時代。

          20数年前、学生の時作っていたZINEでのインタビューで「あなたにとってインディーミュージックとは何ですか?」の問に「インディーミュージックは僕にとって外の世界に開かれている窓みたいなものだ。色々な人の見ている景色を音楽を通じて僕も見ることが出来る。」と答えたのはアメリカのバンドTullycraftのシーン・トレフソンであった。それ以来、僕の中でのインディーミュージック、というよりは音楽やアートに接する時のスタンスは一貫してそのようなものになっている。僕が音楽に求めているもの

          “視点”の時代。

          元祖サンプリング楽器。

          先日AIが作曲したビートルズ風の曲というものを聴いた。人工知能に過去のビートルズなどのポップソングを大量に学習させ、新たな曲を仕立てるというプロジェクトだ。歌はさすがに人間が歌っているので、言われなければコンピュータが作ったとは気付かないレベルのクオリティであった。AIってもはやこんなレベルまで来ているのだなあと驚いてしまった。数年前、浜松の幼稚園や小学校に配布される絵本の企画として、“楽器のまち”浜松の未来像を書いたことがある。そこでは歴史上のあらゆる音楽家の作風を解析、ア

          元祖サンプリング楽器。

          コーヒーと音楽。

          僕は文字が好きな割に小説はあまり読む方ではないのだけれども、このところ獅子文六の文庫本シリーズをついつい買ってしまう。獅子文六は戦前から戦後にかけて活躍した小説家で、最近再評価され続々と復刻されているらしい。装丁に若い人気イラストレーターを使いなんとも可愛らしい佇まいなので若い人も手に取っているそうだ。僕も本の企画者の目論見どおりジャケ買いしてしまっているくちだ。しかしこれがどうして洒脱な文体は実に現代的、話の着眼点など今読んでも新鮮。書店で見つけては購入し、一気読みしてしま

          コーヒーと音楽。

          今の気分はこんな音楽。

          グラフィックデザイナーの職業病なのか、ついつい出かけたときに手に取ったフライヤーやショップカードなどの紙ものを捨てられずにいる。先日ファイルの一つを整理していたら2002年に企画されたgroovisions展のフライヤーが出てきた。裏面を見ると編集者・岡本仁さんのコメントが掲載されている。文の出だしはこうだ。『人は何と呼んだらいいのかわからない未知のもの薄気味悪さを感じるからだろうか、なんでもいいからとにかくテキトウな名前をつけて整理分類したがるものだ。』その後、『分類された

          今の気分はこんな音楽。

          誰が為に音は鳴る。

          夏頃に予約注文していたロジャー・ニコルスの企画盤が届いた。アプレミディシリーズの橋本徹さんが90年代渋谷系のバイブル的レコードガイド「Suburbia Suite」の25周年を記念して企画したアナログレコード10枚による7インチボックス・セットだ。彼らの1stアルバムを中心に選曲されていて、曲自体はすでに再発されているCDなどに収録されているものばかりだが、すべてモノヴァージョンであることや箱入りという見た目についつい惹かれてしまった。しかもT社で予約しているのを忘れててA社

          誰が為に音は鳴る。

          嬉しい巡り会い。

          高校生の頃は帰宅部だったので大学に入ったら音楽系のサークルに入ろうと決めていた。楽器でも弾けるようになったらいいなとか、音楽的に趣味の合う人がいるだろうくらいの軽い理由である。入った大学におそらく7、8個は音楽サークルがあったと思う、音楽系のサークルにほぼ占拠されたクラブ棟が校舎から遠く離れた端にポツンと建っていた。一応ぐるりと各サークルを見学したように憶えているけれど、当初の目的の一つ音楽の趣味が合うサークルは皆無でひどく落胆したのを憶えている。1994年春、渋谷系がブレイ

          嬉しい巡り会い。

          寄り添う音楽。

          実はつい先日までフェスというものに行ったことがなかった。正確に言うと野外コンサートには何度か行ったことがある。キャンプ場や公園をまるごと借りきって複数のステージや露店が並ぶあの感じに少し苦手意識を持っていた。音楽はじっくり集中して見たいタイプなのでワイワイと騒ぎながらというのに違和感があったのだろう。今年は青葉市子とCHAIといったどうしても見たいミュージシャンがいたので愛知県蒲郡市で開催されている森、道、市場に思い切って行ってみた。初めてのフェスが森道というのも良かったのか

          寄り添う音楽。

          愛おしい日常の音楽。

          今年は桜も咲くのが遅れ、なかなか寒い春だったのですっかり油断していた。蓋を開けてみたら8月半ばまで30度を下回らないなんて予報もあるそうで、早くも今夏を乗り越えられるかどうか不安だ。子どもの頃は真夏日なんて聞くと最高ランクの暑さだと思っていた。しかし今や猛暑日なんてさらに暑い日が訪れるのも普通のことになってしまった。数年前までは地球温暖化を防ぐためにエアコンの設定温度は下げましょうとか、なるべく節電しましょうなんて言われていたのに、最近では逆に室内でも熱射病の危険があるので積

          愛おしい日常の音楽。

          名古屋で紡がれる音楽。

          名古屋には18歳から31歳までの13年間を過ごした。大学入学と同時に名古屋で一人暮らししたので思い出も多い。道に困ったりしない程度に土地勘はあるが、離れてから10年も経つので、通い慣れた店が無くなっていたり、知らない景色が徐々に増えてくる。こうなると久しぶりに帰省した故郷みたいな感覚になるから不思議だ。名古屋は僕にとって程よい距離感のある心地よい町である。 SmileTVは18歳の時に創刊した僕にとって初めてのZINEだ。今は亡きrailというレコード屋に置かせてもらい、こ

          名古屋で紡がれる音楽。

          繋がって深める。

          三島市にあるCRY IN PUBLICへ行った。ここに来るのが目的というわけではなかったのだけど、三島に用事があり近くにある面白そうなお店ということで立ち寄ったのだ。zine(小規模な出版物・同人誌)を中心に扱うスペース兼リトルパブリッシングというくらいの予備知識しかなく入ったが、すぐにここが特別な場所なのだなと理解した。それほど広いお店ではないその一角を使ってオーナーたちが個人的に買い集めたzineが誰でも手に取れる図書館(その名もzine library)のようになってい

          繋がって深める。

          愛すべき生まれて育ってくサークル。

          ディック・ブルーナが亡くなった。もちろんミッフィー(うさこちゃん)で有名すぎるオランダの絵本作家のことだ。僕にとっては最も影響を受けてたグラフィック・デザイナーであった。僕が20代半ばの頃デザインの世界はスイス・タイポグラフィのリバイバルで湧き、多分に洩れず僕も感化されそういうものを目指していた。しかし自分がデザインするとしっくりこなくてものすごくスランプだった時期でもあった。そんな時に知ったのがブルーナのデザインだ。シンプルであるのにユーモアがあって何より愛嬌がある。大げさ

          愛すべき生まれて育ってくサークル。

          HOMEMADE MUSIC。

          親も音楽家であるミュージシャンがデビューするのは別に珍しいことではないが、自分世代の親を持つ人達が出てくるとさすがに歳をとったなぁなんて痛感する。2年の夏頃だったか、当時高校生だったシン・リズムがano(t)raksからデビューした時それを強く感じた。リズムくんのお父さんは正確には僕よりも少し上の年代だけれども、自分が20歳前後の頃好んで聴いていたようなネオアコやギターポップを子守歌にして聴いて育ってきた世代がデビューした!ことはそれほどに鮮烈な印象であった。同時にスティーリ

          HOMEMADE MUSIC。