理由は空

不登校の子に「なんで学校に行けなくなったの?」と聞くと、「わからない」と返ってくることが、経験上一番多い。

本当にわからないのか、それとも自分に本音を打ち明けるほどの信頼関係が築けてないのかが難しいところだが、その後に何を話してくれるかでおおよその判断はできる(と思ってる)。

「わからない、それが一番困ってるんだよね」と続けてくれる子は、学校に行けない理由が本当にわからない、と自分は判断しがち。当然他にも色々要素はあるのだけど。
とりあえず、本当にわからなくて困っている子は一定数(個人的には多数、と言いたいが)いる。

行事に参加したい、勉強も受けたい、友達と話したい。でも行けない。
確かに嫌いな人や、気に食わないルールもある。けどそれは友達との愚痴交換によって溶ける程度のストレスであって、絶対に決定打ではないと訴えてくる。

「ある辛いことがあった、とかの方が理由がハッキリしていて助かるんだけど。言い方は悪いけど。これじゃ私がだらしない人みたいで辛い。わからないのが辛い」と訴えてくれる人もいる。

未知を既知にしてくれるというのが病院の役目の一つなので、早急に病院に診てもらう方向に話を持ってくのだけど、流行りの心療内科は3ヶ月待ちだったりし、その間は謎に包まれたまま辛い時期を過ごす。

その間、どうにか自己流で治療しようと自己判断でさまざまな推察や行動に走ったりする。

安定して生理が来てないから学校に行けないんじゃないのかと判断して、ここ数ヶ月の生理周期をある日自分に見せてきて「何かわかることはないか」と相談してくる生徒。

「目が二重じゃないから行けないんだ」として、家族も確かにそうかもしれないと盛り上がり二重埋没を実際にする生徒など、拙い経験の自分ですらさまざまなケースを見てきた。
何かをしたおかげで行けるようになった子は、今のところ見たことはない。

実際そういう姿を見て、自分は無力だな、と感じざるを得ない。「わからなくて困ってるというのは一定数いて、だらしない訳でも考えが足りないとかでもないんだよ」と伝えると少し安心してくれたりもするが、それが本人達の一番納得がいく言葉ではないことは痛いほど伝わる。

現状自分にできることは、理解者としてそばにいて話を聞いたり勉強を教えたり、粛々とこういうことをやっていくしかないんだと思う。未熟さを噛み締めながら。

それはそうと、本当に不安と極度な健康・美容志向を煽る広告って相性最悪というか、もう少しこの空気感はどうにかならないのかな、と感じる。先述した整形した中学生は、整形したんじゃなくて整形させられたんだよな。

不登校の子って、「みんなが出来てることが出来てない人間」というレッテルから脱出する為に、どこかで人生を挽回しないといけないという切迫感があるから、物凄く礼儀正しかったり、自らの欠点を補おうとする。

そんな渦中に不安感を煽る広告なんて見たらすぐ影響を受けるというか、解決の糸口だと判断しちゃう人はいる。結局弱者搾取なんだよね。

そもそも万年健康なんてあり得ないし、世界はどんどんプリクラになってるし、あらゆることが不安定な中どうにか折り合いをつけて生きていくって当然のことが崩れてきている気がする。

まぁ俺も小学生の時のイジメを脱したく10何キロダイエットしたらイジメは終わって普通にクラスのみんなと仲良くなれた、という気持ち悪い成功体験があるから、正直通常になりたいという欲はわかるのだけど…。年々通常という枠組みがイビツな形になっているんだよねきっと。世の中は多様性という言葉が叫ばれているけど。

見てくださってありがとうございます。気の向くままにやっておりますが、どこか、何かの形で届けばいいなと考えています。