ワタシの感覚を見つける、シェアする鑑賞ツアー|インクルーシブな心地よさ
六本木アートナイトの「ワタシの感覚を見つける、シェアする鑑賞ツアー」に参加しました。とっても素敵な体験だったので、気づきや考えたことをまとめます。
「感覚特性」って聞いたことありますか?
たとえば・・・
「大きい音が苦手」
「電気がまぶしすぎる」
「特定の味やにおいが区別できない」
など、刺激に対して過剰に反応する「感覚過敏」や、逆に反応がにぶい「感覚鈍麻」があります。
今回の企画は、「アート鑑賞をとおして、個人個人の感じ方をシェアする」というもの。ファシリテーターは感覚特性を持った方。普通とは異なる感覚を持つ人の視点が加わることで、“違い"が多層的になりそうです。
あなたがリラックスできる感覚は?
十数人の参加者のうち、過半数が感覚特性や何らかの障がいを持った人でした。耳が不自由な方もいるので手話通訳つき。
はじめに自己紹介として、「自分がリラックスできる感覚」を順番に話します。みなさんの回答は・・・
など、「わかる〜」というものもあれば「へー!」と意外に思うものも。さっそく感覚の違いが表れていて、おもしろい質問でした。
ちなみにわたしは「飼っている猫にさわって、あったかさを感じるとき」です。あなたはどうですか?
よく見たつもりでも、ひとりじゃ気づけないことがある
2グループに分かれて2作品を鑑賞し、感じたことなどをシェアします。五感に加えて「気持ち(どういう気持ちになった?)」や「思考(何を考えた?)」などにも着目して作品を観ました。
まずはこちらの作品。
わたしは「おもちゃ箱みたいでワクワクするな」「デコボコしてて手づくり感がある」なんてことを考えていました。
他の方の感想を聞いていたら、裏や上のほうにも要素があるとのこと。気づかなかった……! 1か所をじっくり見ようとしすぎて、視野が狭くなっていたのかもしれません。
作家の平山亮さんと平山匠さんは兄弟で、兄で障がいを持つ亮さんの絵や設定をもとに、弟で健常者の匠さんが立体をつくっているとのこと。お兄さんのイマジネーションを弟さんが具現化しているという、おふたりの関係性もぐっときますね。
続いてこちら。
六本木アートナイト自体のテーマが「都市とアートとミライのお祭り」ということもあり、華やかでダイナミックな作品です。
またしても他の方に言われるまで気づかなかったのですが、台座に作品が映って反転していました。黒い台座なので「のぞきこむと宇宙みたい」とのこと。
「感情を表現したみたい」「かき氷みたいで甘そう」なんて感想も。2階にのぼって上から眺めたら、また印象が変わりました。ひとりだったら、ぱっと見て「派手だな〜」くらいで終わっていたかもしれません。
歴史とか理論とか忘れて、自由にアートと向きあおうよ
みなさんの感じ方を聞いていて思ったのは、「わたしも、もっと自由にアートと向きあおう」ということ。
わたしは美術史や芸術理論を学んだせいもあり、どうしても理屈っぽい見方をしがちです。作品の細部を見るより先にキャプションを読んでしまう。
文脈や背景を知ること自体は悪いことではなくて、作品に深み・重みを感じられるというメリットもあります。でも、「作者は何を考えていたのか」とか「美術品としてどういう価値があるのか」とかに気を取られると、
という素直な感想がスルーされてしまいます。
このツアーで出会った方たちは、自分が思ったことや感じたことに真っすぐでした。そして、それを自分の言葉でシェアしてくれたし、ほかの人の言葉もしっかり受けとめてくれました。
みんなちがって、みんないい。感じ方の違いを楽しむ
想像にすぎないので、安易かもしれないのですが・・・
感覚特性や障がいを持っている人たちは、「自分と他人はちがう」ということに気づき受け入れるのが、普通より早いのではないでしょうか。
他人の感じ方なんてどうやったって共有できないし、がんばったってできないこともある。他人のことだけでなく、自分のことも受け入れて生きていくこと。それぞれの違いを楽しむこと。小学校で学んだはずの「みんなちがって、みんないい。」を、改めて考えていきたいと思いました。
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