世界一"速い"美術館!現美新幹線に乗ってみた
「世界一"速い"美術館」が日本にあったのをご存じですか?
その名も「現美新幹線」!各車両がギャラリーのようになっていて、乗車しながら現代アートを鑑賞できる新幹線。まさに走る美術館です。
残念ながら2020年12月に運行終了してしまったのですが、その前にさよなら乗車をしてきたので、中の様子中心に乗車レポートをお送りします!
現美新幹線とは?
現美新幹線がスタートしたのは2016年。上越新幹線「とき」の臨時列車で、週末を中心に越後湯沢〜新潟の区間を1日3往復程度していました。
車窓からの景色を楽しむ旅はよくありますが、現美新幹線の運行区間は、トンネルが多くて景色が見づらかったんです。それを逆手にとって「だったら車内を見て楽しんでもらおう!」という発想。素晴らしい!
各車両には勢いのある現代アーティストが手がけた作品や空間が広がっており、ゆったりめに配置された座席で鑑賞を楽しめます。車両の老朽化のため、2020年12月に惜しまれながら引退しました。
越後湯沢からアートな旅スタート!
運行終了直前の2020年11月、越後湯沢から新潟までフルで乗車することに!といっても走行時間は約50分なので、アート鑑賞していたらあっという間に終わってしまいそうです。
ホームに入ってきた現美新幹線、先頭車両は黒っぽいブルーでカッコイイ!(ちなみに大雨だったので車体が濡れています)
シックな外観だな〜と思っていたら、後ろのほうはピンク!外観のデザインは写真家・映画監督の蜷川実花です。有名な長岡花火の写真が使われていて、華やかかつスタイリッシュ。外から見ただけで気持ちが盛り上がります!
窓から車内のアートが見えていて、さらにワクワク!ちなみに手前に映っているのは、いつも旅に同伴している相棒のカピバラ2号です(1号はスイス旅行中に行方不明に…)。
いよいよ乗車!各車両のアートに大興奮
6両編成で、11号車のみ指定席、13号車がカフェ&キッズスペース、他は全席自由席となっています。
特別料金もなく、予約しなくてもふらっと乗車できるのが魅力。狙って乗ることもできますが、たまたま乗ったのが現美新幹線、ということも起こるわけです。思わずアートな新幹線に巡りあえたら、旅の楽しさが倍増しそうですね。
50分間という限られた時間なので、座席でマッタリする暇はないだろうと思い自由席で乗車。それほど混雑していなかったので座って休憩したりもしましたが、ほぼウロウロして過ごしました。
とはいえ指定席の11号車も気になるので、人でいっぱいになる前にチェック。
内装を手がけたのは、絵画からインスタレーションまで幅広く手がける新進気鋭のアーティスト松本尚。本来立体的な装飾が二次元で表現されていて、派手さもありながらうるさくないゴージャスな空間です。
12号車に入ると、鏡面ステンレスでキラキラ!人々や景色が映り込んで広々としたスペースに感じられます。こちらは小牟田悠介によるもの。名和晃平、宮島達男らが所属するSCAI THE BATHHOUSEのアーティストです。
12号車から16号車は窓が片面のみで、もう一方の壁は完全なる展示スペース。座席は窓際のゆったりソファになっていて、くつろぎながら鑑賞できます。
13号車は林泰彦と中野裕介のアートユニット、パラモデルが担当した楽しげな空間。チビッコでにぎわっております。側面にも床にもレールのような模様が張り巡らされており、さらにプラレールを敷いて遊べます。
キッズスペースに併設されたカフェスペースには、古武家賢太郎の色鉛筆画が。ビビッドな色使いで温かみがあり、人が集う場所にぴったり。人が多くて断念しましたが、カフェでは魚沼産米粉のパンケーキや燕三条のコーヒーなど、新潟の名物を販売していました。
14号車は、風景写真で知られる写真家・石川直樹による展示。パキスタン・カラコルム山脈のK2(標高8,611m)頂上へ向かう道中で撮影した写真だそうです。美しい雪山の風景に、旅心がくすぐられます!
15号車は、目[mé]としての活動も行っているアーティスト荒神明香によるインスタレーション。糸でゆるやかに留められたオブジェが、新幹線の振動とともにゆらゆら動きます。
瀬戸内国際芸術祭の時、犬島で似た作品を観たことがありますが、カラフルな造花でつくられた有機的な形がとても魅惑的です。いつまでも見ていられそうな不思議な力がありました。
最後の16号車には映像が流れています。AKI INOMATAによる《ヤドカリに「やど」をわたしてみる》シリーズの新潟里山編。
静かな映像で、観ているだけでは何が起こっているのかよくわからなかったのですが、あとで調べたらヤドカリに3Dプリンタでつくった「やど」を渡して、引っ越すかどうか見てみるというおもしろいプロジェクトでした!
アート×実風景の不思議なコラボ
車内の作品が窓に反映され、現実の風景と重なり合って幻想的なイメージをつくりだしていました。トンネルとトンネルの間に新潟の里山が見えると、のどかな景色にアートが浮いているように見えることも。移動しながら風景とアート鑑賞を一度に楽しめるなんて、なかなかない体験です!
あっという間に新潟駅に到着。素敵な車体との別れを惜しみながら新潟観光へ向かいました。大地の芸術祭とも親和性が高いし、またぜひ同じようなプロジェクトをやってほしいです!
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