見出し画像

ぼくはChromebookをこの観点で選びました(ASUS Chromebook Detachable CM3 レビュー)

 政府の推進する「GIGAスクール構想」での標準とされる、ハードウェア構成が貧弱なPCのスペックがネットで話題になるようになりました。メインメモリ4GBのWindowsパソコンでは、Windows10とアプリケーションを動かすには荷が重いとかそういう話題です。

 並行して、Chromebookなら数値上は貧弱なスペックに見える安価なマシンであっても、そもそものOSが違うため軽快で日常的な利用には十分である、という記事もよく見かけます。

 ぶっちゃけ、パソコンの選び方に関しては「使い方によりけり」としか言いようがないです。ただ、「人権」と揶揄される最低限度のスペックは必要なのですが、OSや用途別にそれらのスペックを定義するような気配りは、GIGAスクール構想をはじめとして市井の「オススメPC」を謳っているものたちの、いずれにも見られません。「Webブラウジングに最適!(Windows10のくせにメモリ2GB)」に誠意など微塵も無い。

「大手のメーカーが売っているのだから、一般市民の自分は想定顧客として見られているはずだ」という牧歌的な仮定においては、一番安いやつでも自分が謙虚に望む最低限度のことはできるのだろうな、と誤解してしまっても仕方ありません。

 そして、人は往々にして自身によるパソコンの使い方はどの程度なのかということを追求していないし、望んでいる時点で謙虚さなど無いし、わからない状態でわからない物を雰囲気で選んで買っている。

 そんな状況ですと、予算内で不快にならない程度の動作を求めたがるわりに、買ってみたら不満だらけで、結局一番の解決方法がカネを惜しまないことだったという「いつものやつ」になりがちといえます。ほんとうに人というのは幸せになるようにできていない。青い鳥はツイッターにしかいない。

 というわけで、安い端末を買うとして、何を割り切ってそれを選択したのか、そんな使い方で堪忍袋の緒が切れるようなことはないのか、というユースケースを示すのは意味があるかなと思いました。

 2021年3月下旬に発表されたASUS社のChromebook端末「Chromebook Detachable CM3(CM3000DV)」を入手したので、どんな観点で選択したのか、不満などはどの程度発生するものなのか、というところをあらためて書いてみたいと思います。

 なお、ぼくはChromebookを買うのは初めてというわけではなく、2年ほど前からASUS社のC101PAを使ってきました。Chrome OS は慣れっこです。

 いざ新機種を選ぶとなると各機種似たりよったりに思えるようで細かなハードウェアに違いがあります。帯に短し襷に長しという、そのあたりをどう割り切るかという注目点なども紹介できたらと思います。


Chromeブラウザに依存しているならオススメ

 ぼくはWindowsパソコンでChromeブラウザを使っているのですが、豊富な機能拡張や、便利なリーディングリスト、パスワード保存といった機能に依存しているだけでなく、Googleドキュメント、スプレッドシートはどこでも(スマホでも)執筆や参照ができるので重宝しています。

 先日の #NFTアート 小説も、必要なETHを扱うのにChrome拡張のMETAMASKを用いる必要がありました。

 逆に、ブラウザがChromeでないと不便なケースですが、iPadを使う際に顕著です。iOSのSafariブラウザでは前述のことがスムーズにできません。ChromeブラウザはiOS版アプリが用意されていますが、当然ながら、Google社製のサービスはApple社製のiOSアプリとの連携が悪いので、垣根を感じます。

「え、iOSのSafariだとここでそれ再確認されるの? パスワードがだいぶ前にSafariで保存したときと、先日Chromeで新しく設定して保存しなおしたの、違うけど覚えてないよ?」みたいなことがしょっちゅう起こります。今使っているOSやブラウザがどういう挙動をするのかをいちいち気にしたり思い出したりしながら、デスクトップとモバイルで違う使い方をするストレスというのは、なんというか本末転倒です。

 なので、すでにWindowsパソコンを使っていてGoogle社のサービスやChromeブラウザに依存しているならば、Chromebookはオススメです。パソコンとChromebookで使用するGoogleアカウントが同じであれば、見事に同期してくれるからです。

 さらにWindowsパソコンを使っている人がChromebookを買ったときに得られる最大のユーザー体験は「Windowsアップデートでパソコンが使えない長い時間というやつがChromebookには発生しない」ことです!

 ぼくはChromebookを手に入れて、モバイル系のWindows端末を3台ほど売り払いました。メインで使っているゲーミングPCはWindowsですが、それにプラスして3台も似たような時期にWindowsアップデートがやってきて使い始めるまで待たされるというイライラ極まりない現象が起こっていたわけです。Chromebookにもアップデートはありますが、通知が出たら再起動するだけで終わります。1分かからない。

Windowsアップデートという苦行から解放されるのに、Chromeブラウザの使い勝手はWindowsと一緒。これはかなりの魅力といえます。

初心者にChromebookは勧められるか?

 まったく別の状況として、これまでWindowsパソコンを使っておらず「マイ・ファースト・パソコン」を探している場合は、オススメでもあり、勧めづらいこともあり、の両極端です。

 初心者にとってWindowsパソコンは「本来詳しくないと使いこなせないものを、表層的にだけ使って深みにハマらないようにする」という使い方になりますが、そもそも複雑なOSですので、往々にして「何もしてないのに壊れた」を引き起こします。

 Chromebookはそういうことはほとんど無いですし、もし調子が悪くなったとしても、端末をまるっとリセットしてからの復旧がやりやすいので初心者に勧めたくなります。

 ですが、Chromebookは「やりたいことができない」「やりたいと言いつつもどうせやりもしないことではあるが、アプリが満足に動かない等でできないとわかったのでポーズとして萎えてみせたり批判してみせたりするオレかっこいい」が多くなります。

 以下にぼくがChromebookのC101PAやCM3を選んだ観点や使い方を書いていきますので、ご自身が使うイメージと合っているなら、初心者だろうが熟練者だろうがOKかもしれません。

選択ポイント「1Kg以下」「1366x768 pixelは却下」

 前から使っているC101PAを購入したときから観点は一切変わっていないんですが、ぼくが端末購入時に重要視するポイントに「持ち運ぶため、1Kgは超えたくない」というものがあります。C101PAで890g、今回購入したCM3でカバーとキーボードをつけて915gです。

 当然、人によって体格差などありますので、1.5Kgくらいなら平気という人の選択肢はだいぶ広くなりますし、もっと軽いのが良ければ今はWindowsノートパソコンでも700g台のものがあります。ぼくはもうWindowsアップデートに付き合いたくないのでモバイル系のWindows端末を選ぶことは無いと思いますが……。

 液晶画面は部品の中でも重い部類です。軽いモデルは画面サイズが小さいと言えます。その際に犠牲になるのが画面のピクセル数です。安価なノートPCを買おうとすると概ねカタログスペックに書いてあるのは「1366 x 768 pixel」になります。かつて「1024 x 768」という画面が主流だった時代があり、それをいい感じにワイドにしたら1024→1366になった、というわけです。ですがドキュメントというのは概ね縦に長いので、このピクセル数では縦が短くて文書作業の多いぼくにとって使っていられるものではありません。

 C101PAは1280 x 800だったのですが、縦幅は768に比べて32pixelだけ大きい。それがCM3になると1920x1200なので、横画面でウィンドウを分割して左右に配置する使い方をしてもまったく不便がないです。端末を立てて縦型にした際も、短辺が1200 pixelというのは本当に良い。1280 x 800だと、画面を縦にした際に左右幅が足りなかったんですよね。

競合製品「IdeaPad Duet」とどこを比べたか

 ASUSのCM3に直接競合する端末にLenovoのIdeaPad Duetがありますが、ぶっちゃけ好みや購入店舗での金額で選んでしまってもよいレベルだと思っています。

 ぼくがDuetではなくCM3にした理由は、画面に書き込めるペンが標準装備されていること、CM3は背面スタンドが「フレックスアングルスタンドカバー」という「田の字」に折れ曲がるもので、横置きだけでなく縦置きにも対応していることです。

 そして重要なのがキーボードの打鍵感で、CM3を扱ったレビュー記事では大抵「キーボードに角度をつけるために少し奥側が浮く構造になっているので、打つとたわむ」という内容が書いてありますが、ぼくはまったく気にならなかった上に、そのたわみを含めての打鍵感が良く感じました。実際に店頭で打ち比べてみると良いかなと思います。

 細かいことをいえば、CPUが違うとか、オーディオ用ミニジャックがCM3にはついてるとか、バッテリー持続時間や、消費電力の違いなんかがあるんですけれど、気にしていません。

 CM3もDuetのどちらにもある「弱点」としては、USBポートが少ないこと、microSDなどの外部記憶メディアを挿せないことがあるかなと思います。C101PAは、USB Type Aが1ポート、USB-Cが2ポートあったので、とても便利でしたが、後発のCM3でポートが限られているのはちょっとがっかりな感じもします。「充電用USB-CコネクタがついているUSBハブ兼microSDカードリーダー」みたいな小物が必携になります。

 CM3を縦置きにしたときに、付属のキーボードは使えなくなります。さらに、USBコネクタが底面に来るので、HUBはもとより有線のキーボードやマウスが繋げないため、Bluetooth接続ができる周辺機器があるとベターです。少し高さのある頑丈なスタンドに縦型のCM3を載せてUSB端子を活用する、というのもアリです。

 ハードウェアの選択ポイントとしてはこんなところです。もちろん、Chromebookでも画面が12インチ以上の大きなものであれば、そもそもタブレットとキーボードが分割されるデタッチャブル方式ではなくノートパソコンの姿をしたものがほとんどですし、キーボードの作りも違うと思います。USBポートやmicroSD等の拡張性を重視するなら、その点でも12インチ以上の端末を吟味することでお、満足する結果が得られやすいんじゃないかなと思います。

WiFiが利用できない環境では魅力半減

 Chromebookは、ネットワークに繋がっていない状況では威力を発揮できないことがあります。WiFiが四六時中使える環境にないなら、Chromebookを選択肢に入れない方が良いとさえ言えてしまうかもしれません。それくらい、ネット環境が使用感を左右します。

 ですので、モバイル用途を考えているなら、ワイヤレスルーターを持ち歩いている人、ギガが尽きるのを無視してスマホでテザリングしまくれる人は、問題ありません。とくにAndroidスマホと連携するための「Phone hub」という機能がありますので、テザリングでの運用ができるなら快適といえます。

 もちろん、SIMスロットを内蔵したChromebookもありますが、ハイエンドモデルに用意されていることがほとんどで、安価ではありません。

 USBタイプのワイヤレスモデム(SIMフリーUSBドングルという呼び名のほうが違和感あります)を使うという手もありますが、端末側がCM3のようにUSB Type Aポートではない場合は、変換コネクタをかませるなど、ちょっと工夫が要りますね。

 Chromebookは「ノートPC」や「スマホの画面が超でっかくなったやつ」では無いため、通信環境が無くても重厚長大なアプリケーションがしっかりと動くWindowsノートPCや、SIM(eSIM)を入れて使えるiPadと比較してしまうと、Chromebook使えねーということになりかねないので、念の為WiFi環境のことを書きました。

Android用アプリはどれくらい使える?

 ChromebookはAndroid用アプリも使用できる、という触れ込みではありますが、今のところあまり期待しないほうが良いです。動けばラッキーという感じで入れたいものを入れて試す、というくらいの感覚です。

 例えばビデオミーティングのZoomは、Androidアプリではなく「Chrome機能拡張」版のZoomを使う必要があります。LINEもそうで、スマホで使っているアカウントでログインします。

 かたやTwitterはインストールすると、Chromeブラウザで開いた画面からタブやアドレス欄を省いたようなウィンドウが独立して動きます。

 この、何がAndroidアプリで、何がChrome機能拡張で、何がプログレッシブWebアプリ(PWA)で、何がWebサイトのブックマークをアイコン化しただけなのか、ということがユーザーからはハッキリしない状態なのがChromebookなので、そのへんは慣れていくしかないのかなと思っています。

 例えば、Chromeブラウザで「Googleドキュメント」を開いた場合と、インストールした「Googleドキュメント」アプリを開いた場合では、ユーザーインターフェースが違っていて、Chromeブラウザで利用したほうが使いやすいです。TwitterはPWAなのでアプリっぽく動きますが、Chromeブラウザでアクセスしたときよりも独立ウィンドウである分、便利さはアップしていると感じます。

 できる限りWiFi環境を確保して、ChromeやChrome機能拡張、そしてちょっと区別のつきづらいPWAを使いこなす、というのがベターな使い方といえます。

iPad 8th でよくね?

 ところで、ここまで読ませておいてChromebookではない選択肢を提示するのはどうかと思いますが、AppleのiPad 8thはとてもよい端末です。logicoolブランドから、ファブリック調のキーボードカバーが別途販売されているので、これを装着すると、ぶっちゃけCM3と似たような使い勝手になります。しかもSIMを挿すことができる。

 コンピュータ生活がChromeに依存していない人や、普段使用しているスマホがiPhoneであるという人は、迷わずiPadとApple Pencilと好みに合わせてキーボードを購入すると良いかもしれません。

 iPadにはAirやProといったスペックの高いシリーズもありますが、Chromebook並みの予算の天井を考えると、ここで上位機種を検討する必要がありません。反対に、型落ちしたiPadの中古購入を考える人もいると思いますが、7th→8thの進化が飛躍的だったので、そこは8thを選ぶべきだと思います。

まとめ:持ち歩いて嬉しい道具かどうか

 最終的にぼくが決め手としているのは、毎日触りたい道具かどうか、ってことに尽きます。

 必要に迫られて仕方なく買うなら買うで、毎日使っているうちに愛着が湧くものと湧かないものでは、人生のモチベーションは変わってくるからです。

 高機能なパソコンを支給されても、カスタマイズできなければ無味乾燥で、道具を使っているのか、道具に使われているのか、わからなくなりますからね……。

 機能が劣っても、色が好きとか形が好きとか、好きなステッカーを貼れるとか、持っている自分の姿がかっこいいとか、そういう点があると道具と自分との関係が長持ちして、使う上でもパフォーマンスが上がるんじゃないかと思います。

 今回買ったCM3は、最近の流行であるファブリック調のキーボード&カバーを有していて、持ち歩いていて楽しいです。使い慣れたGoogleドキュメントがWindowsパソコンと同じように使えることや、Windowsアップデートでイライラしなくてよいこと。そのあたりも、結局愛着に通じるのかもしれませんね。

 ということで、Chromebookについて、なんとなく掴めたのであれば嬉しいです。大事なのは「自分がその端末で何をするか」なので、ぜひ良い道具と巡り合っていただきたいです。

いいなと思ったら応援しよう!

しおにく/塩肉
投げ銭大好きですが、なるべく折りたたんでお投げくださいますようお願いいたします。