MRIを体験した話
頭が急激に痛くなった。
元々頭痛はなかったが、社会人になって仕事で毎日10時間以上PCを見ることも多く、眼精疲労から偏頭痛持ちになった。
慢性的な痛みには慣れたものだったのだが(それでも痛いが)、ある日から突然急激な痛みに襲われた。
頭が痛い
あれは11月も初めの頃、会社の上司との飲みで発症した。
特にそれまでは変わりなく、普通の会社員として過ごしていた。
たまに、偏頭痛がひどくなる時があったり、頭がずっと重い時もあった。
だが、その日は違った。
アルコールが進んでくると、急激に左目の奥の方の頭が痛くなったのだ。
でもその時は、ぼくはそんなにお酒が強い方ではないので、「飲み過ぎたかな」と言う風にしか思っていなかった。
それも間違いではなく、確かに割とお酒は進んでいた。
その会社の人と行く時は、ぶっちゃけつまらないし、ぼくの話はほとんど聞いてくれないので、頷くか飲み物を口に運ぶくらいしかなく、手持ち無沙汰(口無沙汰?)になるのだ。なので飲みすぎる。
まあとはいえ、奢ってくれるので薄給のぼくとしては1食分浮くので背に腹は変えられない。
なんだかんだ言って面白い話をする時もあるし(ごくたまにだが)、お付き合いも大事な時がある。
と言い聞かせている。
もちろん楽しい人と飲むのは好きで、それはそれでお酒が進むというもの。
さておき、ぼくはその日を境にお酒を少し飲んだだけで、自分でも驚くくらいの頭痛に悩まされることが多くなった。
症状
特に普段は変わりなく、それでも偏頭痛はあるので頭全体が重い時もあるが、日常生活に支障はなかった。
お酒を飲んだ時の酷い頭痛も、アルコールを取らなければ基本的に表に出てくることはなかった。
だが、お酒を3口くらい飲むと、死ぬほど痛くなる。
左目奥の頭のあたりに小人が住んでいて、鉄パイプで思いっきり頭蓋骨を叩かれているような痛みだ。
しかもその小人は1人ではなく、10人以上いる。
織田信長の鉄砲隊のように入れ替わり入れ替わりに鉄パイプを振り回している。
頭を揉んでみたが、特に効果はない。
恐らくお酒の成分によるところが大きいのだろうと、勝手に思って放置した。
そこからお酒をやめて1時間くらいたつと、痛みが引いていった。
断りを入れておくと、ぼくはお酒は強くはないが、よく飲む方で、今までこんな痛みが走ることはなかった。
というか、お酒は好きなので早く治したい。
そんな風に思って、病院に行くことにした。
脳神経クリニックに行った
原因は何なのか。
ぼくは2週間くらい様子を見たが一向に治る気配がなかった。お酒を飲んだらやはり痛みが酷かったので脳神経クリニックに行った。
脳神経クリニックは初診だったのでアンケートやら、問診票やら書くものを書いて、1時間くらい待っていた。
すると呼ばれたので診察室に向かうものだと思ったら、まずは問診のようなものを看護師さんに話すところから始まり、もう30分くらい待つことになった。
とにかく病院は待ち時間が長いのだ。
やっと診察室に入って、またもや問診をすると、お医者さんは
「じゃあ、MRI撮って――」
ということで、MRIを撮ることと相成った。
また撮るまでに30分くらい待つ。
30分後、パーカーを脱いで、貴金属の類を外す。スマホやお財布もロッカーにしまい、また20分くらい待つ。
パーカーを脱いだので寒い。
そしてスマホを預けたので暇。
いろいろ妄想や考え事をしていると、前の人がMRI室から出てきて、2~3分したら「しおさーん」と呼ばれた。
「はい」と返事をして入ると、どでかく白い筒状の機械がある部屋に通された。
イメージ↑
(こいつがMRI...)
MRIの初体験だ。MRIバージンを卒業だ。
「座ってこの耳栓をしてください」と言われるがまま、ぼくは座り、耳栓をした。
次に寝転がる。
頭の部分だけ機械で覆われていて、そこに頭をぶつけないようにしながらすっぽりとはまる。
そしてさらに隙間をスポンジのようなもので覆われて、耳も塞がれる。目もつぶるように言われ、ぼくは言われるがまま目を閉じる。
MRIがぐおおおと動き出すと、顔が筒状の機械(MRIの本体はこっちなのか)の中に入っていくように感じ取れた。目を閉じていたのでわからないが、体全体が入っていたのかもしれない。
そんなこんなで脳みその中までぼくは他人の目に晒すことになった。
MRIの中
MRIの中はうるさい。
「工事中のような音がずっと鳴っているような感じです」と看護師さんに言われていたが、本当にその通りで、耳を耳栓で塞ぐ意味が分かった。
とにかく「がっこんがっこん」「じじじじじ」といった音がしている。
10分くらいMRIの中でじっとしている必要があるので、ぼくはとにかく考え事をしていた。
「狭いところが苦手な人、閉所恐怖症の方、体内に貴金属などが入っている方はMRIができない」という話を看護師さんに聞いていたので、「確かにこの暗闇やら、狭いところやら、自分でどうしようもない状況というのは恐怖を覚える人もいるだろうな。」と。
「では、閉所恐怖症の人はディズニーのアトラクションは大丈夫なのだろうか?」
ふと、そんなことを思った。
たぶん、無理なものもあるだろう。
海底2万マイルというアトラクションがある。狭い乗り物にのって深海に行くという演出があるのだが、あれは閉所恐怖症の人はもちろん、「海」や「深海」に恐怖を覚える人も苦手ではないだろうか。
そう思うと、「宇宙」を感じるスペースマウンテンはどうだろうか。
乗り物は閉鎖的な部分は感じないが、暗闇を超スピードで走るアレは、自分が閉鎖的な部分にいると錯覚しかねない。
ぼくは「宇宙」は好きだが、恐怖を覚えることもある。
あの深淵・暗闇には人が生きるために必要な空気がない。
昔から宇宙の本は好きだったし、今でもネットで宇宙の画像を眺めるときがあるが、どこか怖いなと思っている時もある。
だから宇宙に行きたいとは思わない。
ただ安全な場所から眺めているのが好きなのだ。
あの神秘や暗闇を、ただ眺めるだけで良い。
そう思うと、「海」もそうかもしれない。最近「サブノーティカ」というゲームを触ってみたことがある。どこかの星の、どこかの海に投げ出され、海で獲れる部品や食料で生き抜いていくというサバイバルゲームだ。ゲームでもやはり深海ともなると少し恐怖があった。
閉所恐怖症の人は、狭いところでさらにひどい苦しみを感じているんだと思うと、共感できた。
閉所恐怖症でもないぼくが「共感」なんておこがましいだろうが、ちょっとだけMRIの中でそんな感情に触れた気がした。
MRIの中は暇すぎたので、そんなことを考えていた。
そもそもなんでこんなことを考えたのかと言うと、MRIに入る前に、看護師さんに「嫌な気分になったらこれを握ってください」と、コードで繋がれた丸いボールのようなものを持たされたのだ。
(そっか、このMRIで初めて「閉所が恐い」と思う人もいるんだろう。もしくは閉所恐怖症だが言い出せなかった人や、普通に体調が悪くなる人などにも考慮しているんだろうな)
本当のところどうかは知らないけれど、ぼくは勝手にそう思って、閉所恐怖症に思いをはせていたのだった。
MRIの結果
さて、頭まで他人に晒してから約1時間が経つと、ぼくは再び診察室に呼ばれた。
MRIで撮られた写真をお医者さんと一緒に見る。↓こんなかんじのやつだ。
「これを見る限り特に異常はないですね。血管が極度に細くなっていたり、詰まっているということもないです。腫瘍のようなものもないですね」
「...なるほど...」
「うん、やはりアルコールが起因となって頭痛が引き起こされているんだと思います」
「今までは普通に飲酒できていたんですが、急に、その頭痛が起こるようになるものなんでしょうか?」
「そうですね、ふと急になる人も珍しくありません。中には味の素などで頭痛になる人もいます」
へえええ、と、変な好奇心を掻き立てられたが、同時に「お酒はあまり飲まないように控えた方が良いかもしれません。それか少なくするかなど考える必要があります。うまくアルコールと付き合っていくしかないですね」と宣告された。
......まじか......
ぼくは先にも話したように、お酒が好きだ。
それをこれからうまく付き合っていく必要があるとは...。
なんという皮肉か。
好きな物でもアレルギーが出るという人もいると聞く。
つまりぼくも同じようにお酒と付き合う必要があるということだろう。幸い、痛みに我慢さえすればお酒は飲めるが。そこまでして飲むかと言うと、いささか疑問が残る。
ぼくの楽しみであり、ストレス発散であり、お付き合いの手段でもあったお酒。
なんだか色んなものがいきなり奪われた気がした。
「ありがとうございました」といって診察室に出る。
そうして待つこと30分....
診察料は8600円だった。
高いなー、と思ったが、「なんともなかった」という安心感を買ったと思えば、まあ安いのかもしれない。
これからのお酒代が減ると思えば、すぐに元は取れるのかもしれない。
でもなんだか、失った物も大きい気がするなあ。
調べた結果
いろいろ自分でも調べてみたが、どうやら眼精疲労とお酒も関係なくはないらしい。
眼精疲労によって血管が収縮しているところに、お酒の成分が入って急激に血管が大きくなることで頭痛を引き起こすだとかなんとか。
でもこれはぼく個人が調べたことなので「当てにはしない」方がいい。
でも眼に疲れがたまっている時は、お酒とは相性は良くないと思っておくことにした。
とりあえず、これからはお酒は控え、目を労わりながら生活したい。
追記
のちのちさらに症状がひどくなったので、受信し直したところ、群発頭痛と診断された。
群発頭痛に関しては下の記事がかなり詳細にまとめられていて、ぼく自身勉強になったので載せておきます。
とりあえず、びっくりするぐらい痛い。
でも書くことはやめないぞ。