桜前線
これは、実にくだらない内容である。
ほんとーに、バカげてるのだ。
先に謝ります。
すみません…。
少しだったが、とある飲食店で働いていた。
昼ごろになればそこそこ賑わうが、
昼過ぎると、コーヒーだけ頼んで、
あとは長時間、話の尽きないおばさん達が、
やーだー!そーなのー!やめてよー!と、
キャハハと騒いでいるのだ。
そんなお店のオーナーであり店長が、
かなり変わった人なのだ。
ここでちょっとお下品な話になる。
いわゆる隠語と言うものだ。
トイレに行く時、何かしらの隠語を使う。
番号だったり、お花を摘みに…等。
その店長は桜を隠語に使うのだ。
そして店長みずから、従業員に聞くのだ。
それが、これだ。
お前桜前線は来たか?
つまりトイレに行きたいかという事。
なければ桜前線はまだきてないですね。
と答える。
少しでもあれば、
もう少しで桜前線が来ます。
と答える。
そうなると、店長はまた聞いてくる。
今何分咲き?
それは、どのくらいでくるのかという事。
それからしつこく聞いてくる。
今何分咲き?…つぼみくらいっす。
今何分咲きになった?…三分咲きくらいっす。
大丈夫か?何分咲き?…五分咲きくらいっす。
おい何分咲きなんだ?…七分咲きくらいっす。
お前そろそろだろ?…満開近いっす。
すると、よし桜前線に乗ったな。
今だ!舞い散ってこい!と指示する。
この隠語意味あります?
と店長に聞いてみたのだが。
意味あるぞ。
客の入りを考えてだな。今ならお前らを
トイレに行かせれると思ったら、聞いてよ。
まだなら、また時間帯とか客の入り具合を、
見てだな、今だ!って時に行けるように、
心配りしてんだぜ。
我慢はよくないしな。
忙しくなったら、なかなか行けないじゃん。
しかもまわりを気にして言えないヤツとか。
だから、聞いてやってんの。
おれ、頭いいよな。優しいよな。
お前もそう思うだろ?
優しい店長で良かったって思うだろ?
優しさの押し売りはごめんだが、
確かに理にかなってる様な説得力があった。
本当にそこまで考えて、店を回転させる為に、
従業員に気を配っているのだろうか…。
だとしたら、只者ではないな。
そんな店長だが、経営には向いてなかった。
そこまで頭は良くなかったんだな。
次第に客足が遠のいて、店は潰れた。
だが、潰れるまでは従業員は、
時給が発生しないように、
タイムカードを早めに切って、
サービス残業を進んでやっていた。
人望には恵まれていた店長であった。
今も私は、
どの職場でも事前に桜前線を知らせて、
満開近いので散ってきますと言っては、
トイレに向かうのであった。
店長げんきかな…。
この季節になると、どうしても思い出す。
あの優しさの押し売りを…。