ロッカー
私は、仕事をコロコロ変える。
持病の影響もあるが、自分に正直に生きてる為、
いわゆる、厄介者なのだ。
雇用を更新出来ずに、辞めさせられるのだ。
かあちゃんの影響なのか、納得のいかない、
権力をかざして無理難題を押し付ける会社の、
反逆者として、声を上げて、勢いに任せて、
みずから、辞める事もある。
そして、仕事するにあたり、
ロッカーを割り当てられる事が多々あった。
ロッカーには、私が頑張って仕事をしていた、
モノがたくさん詰まっているのだ。
辞める時は、いつもそのロッカーを、
せっせと、片付けなければならない。
片付けているとついつい、
色んな事を思い出して、泣けてくるのだ。
あまりモノを、
ためる人間ではないのだが、
長く在籍し、毎日使っていると、
それなりの私物が、嫌でも溜まってしまう。
勤めていた時に、
もらう書類等は困ってしまう。
ヘタに捨てると企業秘密が、
もしかしたら他社へと漏洩してしまうと、
考えてしまい、恐ろしくなってしまうのだ。
その時、小心者の私は、
こっそりシュレッダーで、
ちまちまと隠ぺいする気分で処分する。
私が働いていた形跡を、消し去りたい。
例えば、
文房具等は、同僚に押し付ける。
出来るだけ、私物を持ち帰りたくない。
そして、何もなくなったロッカーを、
これでもかってぐらい綺麗に掃除して、
新品の様に磨きまくるのだ。
この、掃除は儀式みたいなモノ。
今まで、ありがとうございました。
大変、お世話になりました。
あなたのおかげで、毎日仕事が出来ました。
次に使ってくれる人が気持ちよく、
ロッカーを使ってくれます様に…。
と呟きながら、ロッカー磨いていくのだ。
とてつもなく頭のいかれ具合なのである。
だから退職の日は、大抵会社の人間が、
いなくなるのを待って、時間をかけて、
ブツブツ言いながら、ロッカーの掃除をする。
そして、ピッカピカになったロッカーに、
名残惜しい気持ちで、さようならと言って、
一人ひっそりとお辞儀をして、帰るのだ。
この儀式がないと、前へ進めない。
不器用なので、私なりの切り替えが、
どうしても必要になるからだ。
ロッカーがない場合は、
職場のどこかを、必ず掃除する。
デスクだったり、談話室だったり。
時に階段を、剥離剤を使って一旦汚れた、
床を剥ぎ取り、その後でワックスをかけて、
綺麗なピッカピカの階段にした事もある。
流石に、かなりの時間がかかったが、
それだけ、お世話になった職場であった。
綺麗な印象は、
会社の顔みたいなもんだから。
トイレもそうだ、
会社の好感が持てる様な、そんな気持ちで、
雇ってくれたお礼として、綺麗にしたいのだ。
ロッカーは、次に来る人が、
心機一転、頑張れる様に応援したいから。
そんな、ひねくれ者の思考の私。
ただの、自己満足にすぎないのだが、
やらないと、モヤモヤしてしまうのだ。
今は、就労支援のロッカーを使っている。
以前は、職員として使っていたロッカー。
そのロッカーを、今は利用者として、
使っている。
あの時、綺麗に掃除したロッカー。
また、再会するとは…。
でも、立場が違うのだ。
今度は私が心機一転して、頑張ろう。
なるだけ、長くこのロッカーは、
使いたくないな…。
こんな私を雇ってくれる職場は、
あるのだろうか…うむ…うむ…心配。
就労支援の職員に、頼りまくろう!
何もかも、サポートしてもらうんだ!
そう言いながら、ロッカーに向かい、
わかめおにぎりを、取り出し頬張りながら、
パソコンで求人をポチポチ探すのである。
ん?人付き合いが問題だって?
私だって、伸びしろあるんだ!
わかってるよ、ムササビ君。