購入型クラウドファンディングで泣き寝入りしないために、1ヶ月やりとりして満額を取り戻した話
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泣き寝入り状態にある人、泣き寝入りしたくない人、どうしたら良いかわからない人、事前にリスクを知りたい人には一例として参考になると思います。
著者のクラウドファンディング経験値
・日本で一番最初のクラウドファンディングに募集側で参加
・クラウドファンディング購入経験10回以上
・クラウドファンディング主催者実施5回前後
・泣き寝入り経験1回
・(プロジェクトは実施されたが)主催者・プロジェクトの事情でリターンは無くなったけど説明に納得し、返金などは求めていない経験2−3回
クラウドファンディングが日本でまだ実施していなかった頃に、私が参加していた若手農家プロジェクトにReadyforの米良さんから連絡がありました。日本でもクラウドファンディングを立ち上げたいとのことで、そのプロジェクトから参加を決めました。
残念ながら、私は若手農家プロジェクトと仲違いし途中離脱。そのままクラウドファンディングも成功にはならず仕舞いでしたが、日本のクラウドファンディングの最初に立ち会えたのはありがたい経験でした。
また、日本には実績も成功例も失敗例もなかったので、主に米国の情報を集めて実施に備えたコツを見出していました。
「クラウドファンディングには3つ、寄付、購入、投資がある。」
「購入型クラウドファンディングは【先行販売】に近い。
より正確には、先行常連客/先行エバンジェリスト集め。」
「通常の購買よりもリスクがあるため購入者を出来るだけ厚遇するべき。」
「特に情報発信や情報公開は大事。でないと心配される。」
こうした知識や経験を事前に持っていた人間です。
(ある程度詳しい人間と思って下さい。)
クラウドファンディング会社は基本的に仲介役であり、そのプロジェクトの実施について責任を負う存在ではない事は理解済みです。リスクあるサービスを購入し、その責任を負うべきは自分自身です。
ですので、こちらは最初からプロジェクト主催者と直接争うつもりでした。
しかし今回わかったのは、当事者間での対応をするつもりだけど、特定商品取引法によって義務化されている「情報の表記(プロジェクト主催者の氏名、住所など)」がなかったので訴状が送れない。という問題があることです。
(全てのプロジェクトではなさそう。今回のプロジェクトはたまたまそうだった)
そこに特定商品取引法として表記されているのがクラウドファンディングのプラットフォーム企業だが、プラットフォーム自体は「プロジェクトの成否の責任を負わない」と規約にあります。
特定商品取引法に沿って考えれば、訴状の送り先がクラウドファンディング企業になってしまいます。
もちろん「寄付だ」「投資だ」と言い張って、特定商取引法表示違反ではないと主張することも出来ます。
ただ【寄付】なら寄付で明記すべきですし、紛らわしいリターンなど用意すべきではありません。
【投資】なら投資で、下手すると特定商取引法表示以上に詳しい情報開示が求められます。
現時点でクラウドファンディングは、寄付とも、購入とも、投資とも言い切れないグレーゾーンでグダグダにやっている部分があったようです。
これは問題だと思うので、業界の改善を願い今回の顛末を記載します。
今回の経緯
長いのでまず事実状況だけ羅列します。
1.クラウドファンディングにて昨年に購入。納品は数カ月後の予定。プロジェクトは無事達成。
2.主催者から購入した商品が、何の音沙汰もなく納期に届かない。
3.こちらから確認のメッセージ連絡。(プラットフォーム上のメッセージ機能を利用)
4.主催者から返信来る。「1ヶ月以上遅れそう」とのこと。
(この時点で、当初の購入物利用目的が実施不能に。さらに納期時期が確定しない。)
5.こちらから、返品+返金を依頼するメッセージを送付。
6.主催者からの返信「返金しない。当初の通りで頼む。」と
7.再度こちらから「嫌だ。返金して。」と連絡。
8.主催者からの返信「返金しない。当初の通りで頼む。」と同じ論旨がしばらくして届く。
9.主催者とのやりとりは同じことが繰り返されたのでここでの交渉を諦め、こちらからクラウドファンディングR社へメールで連絡。事情を伝えた上「返金を主催者に依頼しているが、そちらで出来ることはあるのか?」と確認。
10.R社から返信が来る。主催者に報酬の用意状況などを確認と連絡の上、返金に務めるとのこと。(こちらから、御礼メールは返す。)
11.R社から連絡あり。主催者に連絡はした上で、主催者のメッセージを伝えてくる。
・プロジェクトは実行されているのでもらった金額は使用済み。
・新型コロナの影響で遅れている。
・購入者が新型コロナで資金繰りが厳しいなどがあれば返金を検討する。
※主催者からの「お前が金に困ってるなら返金を検討してやるよ」という内容のメッセージと、それをそのまま送ってくるR社に私が大激怒。
12.こちらからR社へ返信。
・こちらの懐具合をなぜ話す必要があるのか?
・したとして、返金の検討に留まるのはなぜか?
・失礼にもほどがある。
と連絡。
R社はこれを主催者に伝えるとのこと。
このあたりから弁護士相談や、内容証明と少額訴訟の調査と準備を並行して行う。
この時点でプロジェクト主催者の住所が掲載されていない事に気づく。プロジェクト実施団体も任意団体のよう。
13.(反応が遅いので)
返信を待たず、こちらからR社に連絡。
・主催者が○月末に商品を送るとしているので勝手に送られると困る。
・法的措置を取りたいが、主催者の情報(住所など)が掲載されていないので教えて(本来であれば特定商品取引法に沿って記載されているべき内容なので聞く必要はないはず)。
14.R社からこちらへ返信
・主催者情報は主催者に確認の上、合意できたら出します。
・再度主催者に返金依頼します。
・また法的措置を取ろうとしている旨を伝えていいか?
15.こちらからR社へ連絡
・こちらの法的措置準備は主催者に伝えて良い。
・募集ページ上で特定商取引法上の表記がない。特定商取引法上で規定されている情報は即座に教えろ。
・場合によっては、R社もプラットフォームとして特定商取引法の表記がない時点で法令違反をしていると考え、消費者庁などに相談するぞ。
16.R社からこちらへ連絡
・特定商品取引法に関しては記述してあるとしてURLを提示。それ以上の言及なし。
※プロジェクトページに記載がない事項については、支援募集期間中に当社又は実行者までお問合せ頂いた場合、遅滞なくご案内いたします(ただし、実行者が販売業者等に当たる場合に限ります。)。
・募集期間中だけ?
・問い合わせないと教えない?
・遅滞なくって今遅滞しているとこちらは認識しているぞ。(イラッ)
・記載がない場合ってことは、表示しないことがある前提か。
17.消費者庁や関東経済産業局中小企業相談室などに相談を始める。
18.R社から主催者のメッセージを転載する形でこちらに連絡あり。
主催者より
・R社から伝わっているか不明。
・支援金がプロジェクトに対するものか、リターンに関するものかよくわからなかった。(プロジェクト自体が「○○というプロダクトを作りたい」だったにも関わらず?)
・R社の指示に従って返金する。
R社より
・主催者は「返金する」と言っている。
・返金のやりとりは、自分たちを挟んでも直接でも良い。
・主催者情報は目的が達せられるから提供しない。問題が発生したら提供するかも。
19.こちらからR社へ連絡
・特定商品取引法の表示はしないと認識した。
・返金に対し問題が発生した際、責任の所在があるとも認識した。
・返金処理は主催者と直接やる。
20.R社からこちらへ連絡
・理解した。
・返金が遅れたら教えて欲しい。
・主催者には返金依頼を再度する。
21.こちらから主催者へ連絡
・口座はこちら。
・○日までに振り込みなければ予定通り法的措置を行う。
・伝わっている内容はこれこれだ。伝達ミスがあるならその責任を明らかにして、責任を取らせる必要があるから、R社とのやり取りのスクリーンキャプチャを送れ。
21.主催者からこちらに連絡
・振り込んだ。
・スクリーンキャプチャは検討する。
返金!!(やっと!)
22.こちらからR社へ。
・振り込みがあった。
・対応ありがとう。
・特定商品取引法に関しては何かする。
23.こちらから主催者へ。
・振り込み対応ありがとう。
24.その後、主催者からは連絡なし。
・こちらはR社との連絡ミスではなく、主催者がそういう言い訳をしているだけと認識。
以上経緯でした。
大した話ではないのですが、長いですね。
今回なぜ泣き寝入りしなかったか?
1.コスパに合うかもしれないと思った。
・購入金額がそこそこ大きかった。(2−3万円ではない。)
2.裁判まで行っても勝ち目が高いと思った。
・自身が企業代表なので顧問弁護士が居る。(今回はほぼ稼働なし)
・購入型クラウドファンディングと確実に言える。
・プロジェクト主催者のFacebookは先に抑えていた。かつ彼らの活動フィールドや所属企業には知人友人がたくさんいた。
3.怒っていた。
・プロジェクト主催者からの連絡がこちらの主張の無視か、よくわからない言い訳ばかりで、連絡を貰えば貰うほど怒りがこみ上げた。
・R社がいつまで経っても特定商品取引法に則った表示をしないのでこちらの対応にも不満が溜まった。
(私はクラウドファンディングの他、寄付、継続寄付などをしています。それぞれの事情により当初のリターンがもらえなかったり、プロジェクト遂行が遅れたりする事は多々あります。
でも、ほとんどはその説明責任を事前に果たしてくださっています。
怒る気はさっぱり起きません。こうした納得している場合は、返金を求めるなどはしておりません。)
今回の騒動から学んだクラウドファンディングで気をつけること3つ
1.クラウドファンディング社の選び方
2.購入時に確認すべき事
3.主催が裏切ったら怒りや失望が大きくなる”ヘイト増幅装置”だった
1.クラウドファンディングのプラットフォームによっては、プロジェクト成否の保険制度があった。
→こちらを使ったほうが購入者には安心。もちろん条件や適用範囲には限りがあるので全額保証ではないけどないよりよほどマシ。
今後私が主催するときは、保険制度があるクラウドファンディングでしかやらないでしょう。今の所日本ではCampfireのみのようです。Campfireはこれをめっちゃ推したら良いと思う。
2.購入型クラウドファンディングでも、主催の情報が記載されていないことがある。
→クラウドファンディング購入の際は、特定商品取引法に準ずるレベルで主催の情報が明記されいているか確認すべきです。(住所、氏名、連絡先などがわからないと内容証明や訴状が送れない)
3.(個人的には)クラウドファンディングでは、購入者はリスクがあるのに買ってくださるので、主催者が出来るだけ厚遇すべきものと考えています。しかし、それを雑に考えむしろ真逆の行為をする主催者がいるのと、リスクを取って応援した分憎悪が増幅されました。
→彼らはヌルいので、本気で対応すると降伏する。
本格的な犯罪のつもりならとっくに手が届かないところに行っているはず。クラウドファンディングに対して、あるいは顧客に対して、ただただ考えなしに非常に軽く見ている。
こうした主催者にはきちんと不満を伝え、場合によっては争うべきと考えます。でないと雑に扱っても問題ないと思われるでしょう。
最低限の法律知識を身につけるなり、弁護士に依頼するなりしましょう。最低限内容証明を送るだけでも違うと思います。
弁護士に頼むのは費用もかかるし、取り返せるかわからないからやりづらいという人は、弁護士費用保険なるものがあります。クラウドファンディングに限らず、法的リスク対応として良いと思います。(特に回し者ではないので下記サイトから購入しても私へのバックは一切ありません)
ご注意
今回の対応が他の方々にとって必ず適切とは言い切れないので、ご自身の状態に合わせて、使い分けて下さい。
クラウドファンディング業界に期待すること
クラウドファンディングという仕組み自体は素晴らしい活用ができるものだと思っています。当事者同士で問題を解決することも当然と思います。
しかし、仕組みはあくまで「ちゃんと運用する人」がいることが前提です。
日本でも自治体がクラウドファンディングを活用したりして、それなりに認知度が上がってきた制度だと思います。
一方で、今回の事件でプラットフォーム側がプロジェクト主催者に対して訴訟をしようとしても最低限必要な情報をなかなか提供してくれないことがわかりました。
少なくとも、購入型をうたっているクラウドファンディングは、ネット通販と同じように特定商取引に関する法律に基づいた販売者情報がないと、今回のようなトラブルに陥ったときに泣き寝入りする以外になくなってしまい危険だと思いました。
多くの人が知り、利用されるようになってきたクラウドファンディングが多くの人に受け入れられる素晴らしいサービスとして今後ますます発展していくよう、こうしたトラブルにも素早く対応できるようになってほしいと思います。
具体的には、購入型を掲げるクラウドファンディングは全て特定商取引に関する法律の表記を必須にした方がいいんじゃない?と思う次第です。
参考:クラウドファンディングの法整備
「役立った」
「お疲れ様」
「まぁ、美味しいもの食べな」
「飴ちゃんやろうか?」
という奇特な方は下で御布施を承ります。
(※支払って見れる記事はありません。お礼文のみです。ご注意下さい。)
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