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持続可能なサプライチェーン構築を目指して。流通・小売業のDXを支える開発者の足跡

株式会社シノプスで流通業界向け自動発注システムの開発に携わる永山 友和。入社以来、18年以上にわたって製品作りをけん引し、サプライチェーンが抱える課題解決に取り組んできました。「自分が作ったものが役に立っていると実感できたときが一番嬉しい」と語る永山の開発者としての軌跡をたどります。

経験や勘をシステム化。小売業における、人・もの・金・時間・情報の無駄を削減

永山 友和/執行役員

永山が執行役員を務める技術部では、流通業界向けに自動発注システムの開発を行っています。中でも最も注力しているのが、小売業向けの製品・サービスです。

永山 「技術部では、スーパーを中心に、ドラッグストアなど店頭で物品販売する店舗向けの自動発注システムを主に手がけています。発注内容を最適化することで、売上の増加、ロスの減少、人的作業の削減など、企業の業績改善に貢献できるようなシステムの開発・運用がわれわれ技術部の担当領域です」

自動発注システムとは、商品や店舗の特性に応じて、需要予測数・発注数をAIが自動計算するというもの。その最大の利点は、在庫に関わる人・もの・金・時間・情報など、あらゆる無駄を見える化し改善へとつなげられる点にあります。

永山 「過去の販売実績をシステムと連携させて売上予測を行い、欠品が出ないよう、向こう数日分の発注を自動で行います。また、一口に自動発注システムといっても、製品の種類はさまざまです。商品カテゴリーごとに特性が異なるので、日配品や精肉などそれぞれに特化した製品のほか、客数を予測するものもあります。
たとえば、惣菜のようにロスが出やすい商品の場合は、時間帯別のレベルにまで落とし込んでデータを細分化し、タイムリーな売上・在庫推移に基づいて売上アップ・ロス削減を実現できるような仕組みになっています」

2022年3月の時点で、小売業における全製品の契約社数は84社。実に5400店舗以上で稼働し、18%以上ものシェアを獲得するなど、自動発注システムへのニーズが高まっている背景のひとつに、小売業界における人材不足があると永山はいいます。

永山 「2010年代くらいから、発注業務をできる人が減ってきているんです。かつては、どの店舗にも発注スキルがあるベテラン社員がいました。ところが、最近はスキルが十分でないアルバイトの人が現場で活躍していて、売り場の状況に応じた適切な発注ができないケースが少なくありません。そんな状況下でも、自動発注システムがあれば、人材の発注スキルに依存することなく、発注にかかる作業時間を大幅に削減することができます」

シノプスの製品やサービスは、ただ単に現場の業務を効率化するだけでなく、現場で長く培われてきた経験と勘をシステム化し、深刻化する人手不足の課題を解決するツールとしても受け入れられていることがわかります。

「sinops」誕生の経緯と開発事例。すべてはお客様の課題解決のために

入社した当初、主に卸売業を顧客としていたと振り返る永山。小売業界向けに製品を展開し始めたことが、急伸のきっかけとなりました。

永山 「ドラッグストアさんから、自動発注の仕組みを導入したいという話をいただいたんです。当時は小売業向けのシステムがなかったので、卸売業向けのシステムを応用して対応することにしました」

最初の頃は思うように機能しないこともあったという永山。改良を繰り返し、完成度を高めていきました。

永山 「予測数に基づいて必要な分だけ発注すれば、不良在庫を削減できるはずでした。でも実際にそうすると、棚がスカスカの状態になってしまうんです。売れにくい商品をシステムが発注対象から外してしまうため、最初は補正する必要がありました。そうやって改善を重ねていくうちに、大きなスーパーさんから引き合いをいただくようになっていって。最初は20店舗ほどのスーパーさんでしたが、3年目には200店舗以上を展開するスーパーさんにも導入していただけるほど、口コミでどんどん広がっていきました。

そのタイミングで、『戦略的在庫最適化ソリューション(Strategic Inventory Optimum Solution )』 の頭文字をとって製品名を『sinops』としたんです」

そんなsinopsシリーズの中で2022年7月現在の主力製品となっているのが、クラウド型サービスの『sinops-CLOUD』です。中でも永山は、惣菜に特化した製品『sinops-CLOUD 惣菜』が印象に残っていると語ります。

永山 「『AI値引き』を開発したときのことはよく覚えています。スーパーで惣菜が値引きされる際、20時になったらとりあえず20%引き、閉店間際になったら50%引きという具合に、価格設定があいまいなケースが少なくありません。しかも、製造時間などによって値引き率が変わるため、商品を探したりラベルを貼り分けたりする煩雑な業務が発生していたんです。
AI値引きとは、最適なタイミングで最適な額の値引きを提案する製品です。商品のバーコードをスキャンするだけで値引きラベルを発行することができます。スーパーでは惣菜が利益の中の大きなウェイトを占めることに加え、売り場担当の負担を大幅に軽減できることから、多くの反響がありました。端末上で操作するだけでなく、バーコードを活用する点や、実機が動作に反応して動くところには、開発者として独特のおもしろさを感じますね」

システム開発に携わりたい。業務上の課題を解決する機能に惹かれ転職を決意

前職では、システム開発ではなく、材料発注システムの運用を担当していた永山。初めて「sinops」を知った際、充実した機能に驚かされたといいます。

永山 「sinopsには在庫の推移をグラフィカルにシミュレーションできる機能があるんです。当時、発注システムの運用を担当していたので、sinopsを活用すれば業務の大幅な改善につながるとすぐにわかりました。この画期的なシステムを作ってみたいという気持ちが湧いてきて、開発担当として入社させてもらったんです」

sinopsが備えていたのは、まさに前職の自分の助けになるような機能だったという永山。

永山 「20年ほど前、ボタンを押して2時間待機し、またボタンを押すという業務で、ボタンを押し損なうと、とんでもないトラブルにつながるような環境があったんです。それを回避するために詳細なチェックリストを作成して、必ずその業務をこなすという毎日でした。かつて手作業でやっていたことを、sinopsはすべて自動で計算して、面倒から解放してくれたわけです」

流通・小売業のデジタルトランスフォーメーション(以後、DX)に取り組んできたシノプス。変わることを恐れず、新しいことを積極的に取り入れるスタンスを貫いてきました。

永山 「ここ10年でいえば、クラウドサービスが登場したことで、開発者を取り巻く環境が大きく変わりました。以前は、サーバーを購入し、それが3カ月後にようやく届いたところでセットアップするという具合でしたが、今ではサーバーはすぐに立ち上がるし、それと同時にいろんなシステムが動き始めます。2022年現在は、AWSが提供するサービスを活用してsinopsを運用しているんですが、新しい技術がとても多く、開発者としても楽しいです」

お客様の満足が、やりがいに。サプライチェーン全体の在庫最適化を目指して

製品の開発にあたっては、現場に足を運び、お客様の声を拾って課題解決につなげることも多いという永山。

永山 「スーパーに協力してもらいながら、現場研修を実施しています。実際に発注業務を行い、見つかった課題点についてレポートを作成し、製品の改善に活かすようにしています」

現場に寄り添ってきたからこそ、開発者としてのやりがいを感じるのもまた、現場から声をもらったときだと永山はいいます。

永山 「利用されたお客様に『効果があったよ』と言われたときが、やっぱり一番嬉しいですね。作ったり考えたりすること自体も好きなんですが、本当の喜びが感じられるのは、自分が作ったものが世の中の役に立っていることを実感できたときだと思います。社内の他の技術者も同じじゃないですかね」

今後は小売業や卸売業だけでなく、物流全体の改善にも取り組んでいきたいと話します。

永山 「実は、メーカー、卸売業、小売業の商習慣に由来する無駄を解消しようという壮大なプロジェクトを構想しています。買い手である小売業からの発注に対応するために、卸業は在庫を抱えなくてはなりません。同じことが、卸業とメーカーの間にもいえます。
上流から下流までの在庫最適化を一気通貫で実現できれば、今ある無駄をすべて削減できると考えて、当社のスローガンでもある『世界の無駄を10%削減する』とも共鳴するサービスを準備しているところです」

そんな永山が考える、これからのものづくりに求められる組織作りとは?

永山 「リモートワークが主流となってメンバーが直接会う機会が減っている分、密に連絡を取り合うようにしています。目指しているのは、誰かが悩みをひとりで抱え込むことなく、情報を共有しながら皆で解決していけるような仕組み作り。そのためには、業務を標準化して、誰にとっても“できないことがない”状態にしていきたいですね」

システム開発者として、流通・小売業のDXの影の立役者として、これからも永山はサプライチェーンが抱える課題解決に取り組み続けます。