となりの国宝。
一筋の長い石段を辿って行くと、背の高い木々たちが鬱蒼とざわめく森の中へと入ってゆく。
その姿はいつ目に入ってくるのか、どこからどうやって姿を現すのか。
少しの緊張と高揚感を持って歩みを強めていると、薄暗いざわめきの合間から、ついに羽黒山五重塔が姿を現す。山形屈指の国宝だ。
目に入ってきた瞬間、森と五重塔の威厳ある共鳴に、うおおおぉぉ…!と私の心が雄叫びをあげる。
そんな私に反して、目の前の五重塔はただ寡黙に鎮座し、その圧倒的な存在感に私の心は弥立つ。
物凄いものを見てしまったような気がして、その塔は、なんだか私たち大人にとっての”トトロ”のように感じてしまった。
生茂る森に囲まれ雨に打たれる姿は、森の珍獣とも言える重鎮。
夜が明け、雨が止んだら、また違った姿を見せてくれるのだろうか。
私はきっとまた会いたい。
夢じゃない!夢じゃなかった!!
期待に心を弾ませて、またここに会いに来てもいいかい?