龍と私
空を翔ける龍。
そんな龍が、ここにいてくれたらいいのになって思う。
キノコを手にした小人。
草ぼうぼうのうちの玄関のあたりに、そんな小人がいてくれたらなって思う。
だから草むしりをする時は、ごめんね、隠れにくくなっちゃうけど大家さんが心配するからむしっちゃうよって、草むらに告げる。
蝶と戯れる妖精。
光が踊るのを見かけたときは、光の中にじっと目をこらす。
チラとでも見える瞬間をけして逃さないようにって。
どうか私に姿をみせてって、祈りながら。
私には、見えない。
見えないから、想像する。妄想する。そして感じようとする。
ここには大きな龍がいて、薄い透きとおった深い紫の体をしてて、ふわりと宙に浮かんでいて、いつもは私のブレスレットの中で眠っている。
私も一緒に眠りたい、ずっと。
この世界が嫌になって元気がなくなったら、その龍の巣で眠るの。
またこの世界に戻ってもいいかなって思えるまで。
そして、時々学校をズル休みして、海まで龍の背に乗っていくの。
風を切って。
雲を裂いて。
雷と共に地に降りて。
海を眺めるの。共に。
海から昇る朝日を眺めて、夕陽の沈む様を眺めるの。
ただそれだけで、私の身体に力が漲ってくるのがわかる。
何者にも負けない、何者をも受けとめる力をね、私は得るの。
そしたら、教室の女子のよくわからない空騒ぎも平気になる。
その中に、入ってさえいける私になる。
すこし疲れたら、私は龍の巣に閉じこもり眠る。
朝日をあび、夕日を眺めて私に戻り、この世で私を演じる。
そのくりかえし。
その くりかえし。
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