記憶ってなんだろう ~道具と記憶~
この記事は、前回の「記憶ってなんだろう ~言語と記憶~」の続編です
<前回の記事より>
人類の進化で獲得した他の生物の圧倒的な違い
それは、「言語」と「道具」が使えることです
今回の記事では「道具」について少しだけ触れます
ヒトの進化の中で語らずにはいられない道具ですが
チンパンジーも「道具」を使うことはできるのです
実際、下に示す写真のように
木の枝を使って、木の中にある虫や実を取る姿は多く観察されています
道具を使うという点においては、チンパンジーでもできるようです
最近では、自動車の運転を行うシュミレーションをさせると
見事にハンドルを使って運転してみせたという報告も目にしました
石を使って餌を得る動物は意外と多く、
道具を使うという点においてはできるのかもしれません
では、人間は何がすごいのか
「道具を作るための、道具が作れる」
人間が他の動物と圧倒的に違うのはココです
道具を使える動物は多くいますが
道具を使うための、道具を作ることができる動物は
人間だけだと言えます
「ドライバー」や「ペンチ」などの工具はもちろん
書き残すための「紙」や「ペン」を人間は”作れる”
さらには物理学の仕組みも、道具の構造も理解できている
道具の発達の元は「手」
mm単位で調整でき、あらゆる動作に対応可能な
最高の道具こそ「手」でしょう
人間がこれほど緻密な構造の機械を作るに至るまでに
手が必要不可欠だったのは言うまでもありません
赤ちゃんが脳を発達させる過程で
外界を認識するために重要なのは触覚ですが
その中でも、口と手は別格に重要です
しかし、これは赤ちゃんだけなのでしょうか?
成人した人は、もう関係ないのでしょうか?
そんなことはないようです
手の細い作業ができる人ほどIQが高いことや
集中力や、自己抑制が得意であることは多く報告されています
ゲームのコントローラーはもはや脳
最近のゲームのコントローラーは
右側に4つの押すボタン、左側は十時ボタン
左右に360°動くアナログスティック
さらには、コントローラーの側面に
左右二つの押し込み式ボタン
合計 16 種類以上の動作が組み合わせて
ゲーム内の世界を楽しめます
これほど複雑で多数のボタンがあったとしても
慣れていくと無意識で操作が可能になります
さらには、瞬時に変化する状況に応じて
持ち方を変えたり、ボタンを組み合わせる必要があります
「ゲームは頭に悪いからやめた方がいい」
という話はよく耳にしますが、とんでもないです
ゲームの脳活動は、勉強しているときの活動とはそもそもが別ですが
頭に悪いということは言えないでしょう
むしろ「頭を使う」という点においては
緻密な手の作業を目まぐるしく行なっているため
良いとすら言えます(評価する尺度が異なりますが)
話が逸れましたが、
これだけの複雑な組み合わせとボタンの内容を覚え
瞬時に使うわけですから、これはまさに勉強(テスト)と同じ構造です
道具の使い方は忘れない
スプーンを見れば、食べる時に使う
ドライバーを見れば、ネジを扱うのに使う
シャーペンを見れば、書くために使う
当たり前のことですが、私たちは道具と用途を組み合わせで覚えています
そして
自転車は一度乗れるようになると、その後も乗れる
これはこれで、体が転ばない重心操作を覚えているのです
認知症患者がスプーンを見てスプーンと言えなくても
自然と手にとって、丸い部分を口に含む動作をする
道具の名称を忘れたとしても、
道具の使用方法と用途はなかなか忘れません
スマートフォンには多種多様な設定がありますが
その設定を行う手順や、行った後のシステムをある程度は認識しています
経験あると思いますが、目覚ましを寝ぼけた状態でも止められるのも
どういう手順を踏めば止まるのかを覚えているからです
そういう点から考えていくと
道具に関する記憶は消えにくいようです
なぜでしょうか?
生きるために必要だから;毎日、使うモノだから
道具を一定時間や一定回数以上使うことで
その操作を無意識下で行えるようになり
さらには、道具からの感覚をより鮮明に感じ取れるようになる
繰り返し使うもの、使わなくては死んでしまうものは
勝手に記憶してくれるように設定されています
そしてさらには、その能力は時間と回数に応じて上がるようです
勉強を道具として捉えることで
ゲームコントローラーも、あれほどの操作量でも
いつかは無意識で操作ができるようになるわけですから
勉強についても同じことが言えるのではないでしょうか
仮に学ぶ内容を道具として捉えたら
「繰り返し」「使う」ことで記憶できそうですね
ではなぜ、勉強しても記憶できないのか
それは、「使ってない」から
”学び”を”使う”ことで記憶はより強化されます
単純に記憶能力が人よりも劣ると感じるなら
誰よりも学んだことを実践することです
今日学んだ内容を
まるでゲームコントローラーのように扱って
目の前の課題を解決していくと世界が変わるかもしれません