VRChatで既存楽曲を弾き語りしたいのでJASRACとNexToneへ許諾申請を行った
はじめに
VRChatは、YouTubeやニコニコ動画と違って著作権利用料の包括契約はされていないサービスなので、権利が切れていない一般的な既存楽曲の弾き語り等の利用については、各々自身で許諾を得る必要があります。
そこで先日、日本におけるメジャーな管理団体であるJASRACとNexToneの2つに対して、「VRChatで弾き語りを行う」というモデルで許諾申請を行い、無事許諾番号が発行されました。この一連の流れについて事例として紹介します。
注意事項
本記事の内容は事実に基づくものですが、他の様々なケースに適合する保証はありません。あくまで「これで通った事例があるよ」という程度であり、参考に留めて下さい。
適宜スクリーンショットを貼りますが、各サイトの最新状況と同じであるとは限りません。画面の流れや内容に変更を伴う可能性を常に念頭において、実際に申請を行う際はサイトの画面内容を熟読の上、ご自身の利用に沿った内容で申請を行って下さい。
本記事の内容を、JASRACやNexToneに問い合わせるのはご遠慮下さい。また、筆者は本記事に関する質問は基本的に受け付けません。
実績報告のやり方や料金の支払いに作業については、本記事では扱いません。
今回の申請モデルケース
VRChat上でひとりで弾き語りを行う。路上ライブのようなイメージ。
JPインスタンスで演奏を行う(*1)。
あるタイミングで演奏されるのは1曲のみ。同時に複数曲が演奏されることはない。
録画をアーカイブに残し視聴可能にさせる、という行為は行わない(*2)。その場でのストリーミング配信のみ。
非商用。演奏によるいかなる収入も発生しない。
(*1) 著作権管理に関しては日本国内が対象となるので、海外サーバで行われるサービスについては許諾が降りにくい側面があります。そこで、JPインスタンスだけで行うよ、という建付けにし、日本リージョンの範囲だよ(海外には配信しないよ)という名目にしておきます。VRChatの仕組み上厳密に言えば万全な線引にはならないグレーな部分ですが、それを言うといつまで経っても許諾されないので、両社ともこれで通してもらいます。
(*2) 例えばVRChat上の演奏を録画し、それをYouTubeにアップするようなケースは実際にありそうな運用ですが、その場合はYouTubeのサービスの範疇でのアーカイブ適用になる(のでYouTubeの包括契約扱いなので問題無し?な)のかな……と考えています。とはいえ、今回の許諾申請においてはそういうケースも一旦含めないで行っています。
申請上の扱いとしては、次のようになります。
インタラクティブ配信で、非商用
利用方法:音声/映像 (*3)
配信形態:ストリーム配信
同時送信可能曲数:1曲
(*3) 弾き語りなんだから音声だけじゃないの?と思うかも知れませんが、VRChatはメタバース空間でアバターが動いているという「動画」を伴うので、許諾対象としては「音声/映像」という扱いになります。
JASRACの申請の流れ
利用者登録
サイト上に詳しい説明や案内があります。実際の手続きは J-TAKT という会員用のサブシステムで行うので、まずはそこへのアカウント登録を行い、その後許諾申請を行います。
JASRAC公式トップページから、上部メニュー「利用者の皆さま」にフォーカスを当て、表示されるサブメニューから「インターネット上での音楽利用」をクリックします。
「インターネット上での音楽利用」というページに遷移するので、内容を読んだ上、「STEP3:ご利用方法に応じた手続きをとる」の「動画配信」~「一般的な動画コンテンツ(音楽ライブやドラマなど)」をクリックします。
「動画配信」というページに遷移します。ダウンロード形式やストリーム形式の料金例が高くてビビりますが、実は今回のケースは「3 その他」の冒頭1項目めにある「非営利団体や個人の方が、(中略)無料(広告収入もなし)でストリーム配信をする場合」に相当するので、「こちらをご覧ください。」の「こちら」をクリックします。
「手続きの流れ(非商用配信)」というページに遷移します。重要なので熟読します。
今回はこの中のSTEP.1~3を行います。STEP.4 以降は許諾が下りた後に行う作業なので、把握はしておきましょう。
よければSTEP.1にある J-TAKT の申し込みへ進みます。青ボタン状の J-TAKT リンクをクリックします。
J-TAKTのページへ遷移します。
新規でアカウントを作るのであれば、4つ画像が並んでいるうちの「個人」を押下します。
既にアカウントがあるならログインの上、以降の登録部分を読み飛ばしてテキトーなとこから本記事へ合流下さい。確かログイン後の画面で「新規/追加のご申請」からイケるのではないかな。
申込区分の属性の確認になります。非営利の個人での登録でしょうから「上記のどれにも該当しません」を選び、右下の「次へ」を押下します。
ところで上記の画面ですが、本記事執筆時は上記スクショの内容なのですが、自分の登録時は以下のような画面でした。ここで非商用を選んでいます。参考まで。
申込区分の選択を行います。
ストリーム形式における配信についての注意事項等が表示されます。
ここでは外国曲に関しては動画を伴う場合に別の規定となる旨が書いてあります。この部分がVRChatでどういう扱いにあるか解らなかったので、実はこの後にJASRACとのメールのやりとりの中で「外国曲かどうかを判断する必要があるか」と明確に訊いたのですが、許諾が下りたメールには対象と出来る楽曲の条件として「内国曲に限る」条件は記載されていませんでした(後述します)。ですので、現時点では「外国曲かどうかは気にしなくてよい」と認識し、利用実績報告もそれに則るつもりでいます。
次へ進みます。
映像配信に関する注意が示されます。著作者人格権の部分は意外と重要ですので、遵守するよう心がけましょう。
同意チェックをし、次へ。
利用許諾条項が表示されます。「承諾します」で進みます。
申込人の登録を行います。
相応に入力し、次へ。確認画面でるので良ければ次へ。すいません、この辺りのスクショを取りそこねていて残ってないので、適宜進めて下さい。確かこの入力過程でJ-TAKTのログインIDが発行され、通知のメールが飛んでくるハズです。あとパスワードが画面に出てくる局面があるので、忘れず控えましょう。
許諾申込入力
いよいよ許諾申込内容の登録となります。
ホームページ名は全角で「VRChat(日本サーバー)」とし、リージョンが日本国内であることを示しておきます。
URLはVRChatの個人プロフィールにしようか迷うところでしたが、とりあえず汎用TOPページで指定。
ハンドル名は、厳密な一意性が求められる部分とも思えないので、VRChatのネームを(同じく全角で)入れました。
同時利用可能曲数は、まぁ個人なので1曲ですよね。音楽系イベントのような複数の参加者が同時にあちこちで演奏するようなケースになれば相応の指定がいるのかも知れません。知らんけど。
入力内容の確認と、「なんか予定してる曲を1曲入れろ」って出ます。
J-WIDから好きな曲でも検索し、入力しておきます。予定なので、別になんの曲でもいいと思います。検索結果の曲の詳細情報の「管理状況(利用分野)」が「複合」→「配信」に「◯」がついているものが対象になりえます。
確認画面になるので、よければ次へ。
もう1回確認。よければ次へ。
料金が表示されます。
年額1200円、税込みで1320円です。これで1年間演奏し放題!
最後に許諾申込書の印刷ボタンが現れます。
自宅のプリンターで印刷するなり、PDFで保存してコンビニの複合機で印刷するなり、なんとかしてA4の紙に印刷します。
許諾申込書の郵送
前項で印刷されるのは下記のような内容です。
これに捺印し、封書として宛先のところへ郵送します。
メールでの確認
郵送後、何日か後(2週間以内くらいがメド)に、メールにてJASRACから申込内容の確認が届きます。メールをこまめにチェックするようにしておきましょう。
自分の場合、ざっくりいうと次のような内容でした。
そこで、
(2)については「作成インスタンスはあるタイミングで1つのみ、同時に複数は立てない」「路上ライブのイメージ」
(3)については「非商用でいかなる収入もない」「個人の趣味の範疇」
(4)当該のような料金付与や広告収入はない
とメールで回答しました。
併せて同返信メールで、
「J-WIDによる検索結果において、どのようなものが利用可能となりますでしょうか? 特に、外国曲であるかどうかを勘案する必要はあるでしょうか?」
と質問を付しておきました。
すると翌営業日に返信があり、まとめると次のような内容でした。
というワケで前述のように、「外国曲はダメなのか?」という質問は明確にスルーされ、単に「管理状況(利用分野)の複合「配信」が「〇」になっている」との条件提示でした。
あと「申請者がおひとりで弾き語りを行う生配信(1つのステージのみ)の場合」とあるので、他の誰かとセッションするようなケースはこの許諾では賄えないということには注意が必要です。
許諾
で、更に翌日、めでたくメールで許諾が下りた旨、届きました。
楽曲利用可否の確認
ある楽曲がJASRACで管理しているかどうか、またその楽曲が許諾対象となるかどうかは、JASRACの検索しすてむである J-WID を用います。
タイトルやアーティスト名、著作者名などから検索出来ますが、表記の揺れなどがあってヒット性に乏しい場合があるので、前方一致や中間一致などを工夫してながら指定するなど、検索のコツを掴んでおくと良いでしょう。大抵は作品名で直接ヒットしなくても、アーティスト名や著作者名から追える場合が多いので、そっちから絞り込むと良いかも知れません。
本記事の許諾では前述のように、「管理状況(利用分野)の複合「配信」が「〇」になっている」が許諾対象の条件となります。もちろん、クラシック等で著作期限が明らかに切れているものや、パブリックドメイン(PD)となっているものも演奏自体は可能です(利用実績の報告義務は無い)。
NexToneの申請の流れ
NextTone公式トップページ から、「音楽利用者の皆さま」→「インターネット上で音楽を利用」を選択します。下記スクショでは上部メニューの「著作権管理サービス」にフォーカスを当てる形でアクセスしていますが、トップページ右側の「音楽利用者の皆さま」から辿ってもよいでしょう。
「インターネット上で音楽を利用」ページにて各種解説が並びます。ざっくり目を通し、「お手続きの流れ」の「1 利用者情報の登録 ※初回のみ」にある「こちらから利用者情報の登録を行ってください。」の「こちら」リンクをクリックして進みます。
約款への同意を求められるので、同意するで進めます。
基本情報の入力を行います。
担当者の情報を入力します。メールアドレス以外はほとんど基本情報の転用でイケると思います。
アカウント情報と管理システム用にメールアドレスの再入力を行います。
確認画面になるので内容を確認します。
メールで確認を送りましたよ、の画面になります。
届いたメールにあるURLをクリックし、利用者登録を完了します。
「こちらより利用者許諾申請へお進みください」の「こちら」をクリックして先へ進めます。
インタラクティブ配信の申請入力をします。
ただし、この後のメールのやりとりで、スクショの内容から次のように申請内容を変更しています。
・利用内容:その他 → ミュージックビデオ等
・サービス会員登録:あり → なし
・許諾種別:サブスクリプション → ストリーム形式
上記入力内容で、添付ファイルとしてサービス概要を記した文書を作成~アップロードする箇所があります。
自分は次のような内容のテキストファイルを用意、添付しました。
確認画面が出るので内容を確認します。
申請が完了します。
メールでの確認
2週間チョイ結果し、先方から確認のメールが届きました。
ざっくり次のような内容でした。
JASRACに比べると単価が高い気もしますが、上限設定があるので青天井にはならないのと、現況ではNexTone管理楽曲を演奏対象として取り上げるのはレアケースかと思うので、問題にはならないと捉えています。
許諾
更に2週間弱経過後、メールにて許諾番号の通知が届きました。
これでめでたくNexTone楽曲も堂々と演奏出来るようになりました。
楽曲利用可否の確認
トップページから「著作権管理サービス」の「作品検索」で楽曲検索や許諾対象かどうかを確認出来ます。
インタラクティブ配信の場合は「配信」が「◯」になっている楽曲が許諾対象となります。
また、インタラクティブ配信対象楽曲のリストはファイルでも配布されています。→ https://playn.nex-tone.co.jp/pc/pieces/public の確定作品リストで「インタラクティブ配信」
許諾の表示
JASRACもNexToneも、許諾番号はTOPページ的な場所への掲示義務があります。
Webページでの楽曲利用等であればホームページにロゴ画像と許諾番号表記をすべきなのですが、VRChatだとそんなの無理なので、自分はプロフィール文言に加えておきました。
さいごに
ぶっちゃけ現況のVRChatの演奏勢で、然るべき著作権の許諾を得て演奏していないプレイヤーも少なくないような気はします。
しかし言うまでもなく、楽曲利用については許諾を得た上で著作権利用料を支払うのは法的な枠組みで、それを無視してフリーライダーになるのは音楽文化の首を締める行為でしょう。
正当な許諾を得て楽曲利用料としてアーティストに対価を支払うのは何よりの直接的な貢献ですし、VRChat正々堂々と演奏が出来るのは精神的にも良いでしょう。
本記事が、許諾を得るプレイヤーの増加に少しでも繋がれば、幸甚です。
記事執筆に先立ち、先人として許諾申請の実績を作って共有頂いた、もすこさん、むりえらさん、その他の先輩諸氏に感謝いたします。
Ver.1.00 2024/09/04