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「ねえ、わたしの話きいてた?」


「髪切ったんだけど…どうかな?」


「あ、やっぱり聞いてない…もう知らない(ぷいっ)!」

あわてて彼女のあとを追いかける。


彼女がひょうたんに見えることがときどきある。しばらくすると元に戻るし、彼女に言っても悪口にしか聞こえないだろうから、言わないままでいる。

ひょうたんに見えているときも、彼女は彼女だ。そう思えることに、すこしホッとする。これってすごいことかも、とも思う。


「…あ、きれいな空。」


彼女がそう言うと、彼女の表面がスッとうすあおく色づいた気がした。さっき落ち葉をこどもみたいに踏みつけていたときも、ちるちると秋の色が濃くなってみえた。

見つめていると、ことばが出てこなくなる。そうでなくても僕はぼんやりしがちなので、いつもとそう変わらないかもしれないけれど。

なにかに集中しているときの彼女は、特別にきれいだと思う。いつだって。


ねぇ、あのさ。

「ん、なあに?」

…やっぱり、ひょうたんだなあ。
どうしてひょうたんなんだろう。じつは好きなのかな、ひょうたんが。そんな風に思ってると、

「何ニヤニヤしてんのー?」

と小突かれた。なんでもないよ、とこたえて、また歩きはじめる。


「君ってときどきよく分かんないよね。」

そう彼女が笑って、僕も笑った。




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