長ネギと玉ねぎ
長ネギと玉ねぎは、同じネギなのだが、似ているような感じもすれば、違うような感じもする。
長ネギにも玉ねぎにも辛味成分の硫酸アリルがあり、血液が固まるのを抑える働きがある。加熱すると硫酸アリルが揮発して、甘みが感じられるのも、長ネギ、玉ねぎ共通している。
ただし、柔らかくなった時の食感が、長ネギにはシャキシャキ感があり、玉ねぎにはなくて柔らかい。
調理の方法は、それぞれ違う。玉ねぎの茶色の皮を剥くのは面倒だ。皮には栄養があるらしいが、長ネギにはそういう皮がない。長ネギは洗ったら、そのまま使える。泥のついた外皮は出荷時に剥いてるらしい。
自分のイメージでは、長ネギは和食、玉ねぎは洋食に使われることが多いかな。例えば、すき焼きには長ネギだが、シチューやカレーには玉ねぎが使われる。
長ネギは和食、玉ねぎは洋食だと思いたいが、はたして、そう言い切れるだろうか。やはり、例外はある。肉じゃがには玉ねぎが、親子丼にも玉ねぎが使われる。このように和食にも玉ねぎが使われている。
その親子丼のこと。父がよく、台所で作っていた親子丼には、長ネギが使われていた。長ネギを斜めに細く切ったのを玉ねぎの代わりにしていた。玉ねぎでなくても美味しかった。農家育ちの父は、料理が好きで、よく調理場に立っていた。長ネギを使った親子丼なんて、完璧な和食ではないか。
若い頃、玉ねぎのスライスにかつお節をかけて、それに醤油をたらすのが美味しいと知った。生の玉ねぎには効用があると聞き、簡便な食べ方としてスライスを知った。
平井の一平さんというスナックで若いママさんが、私のために玉ねぎスライスを作ってくれたことがある。どういう経緯でそうなったのかは覚えていない。玉ねぎをスライスして、かつお節をかけて醤油を垂らすと伝えたら、すぐに作ってくれて、「これだけ!」と拍子抜けしたように言ってカウンターに置いてくれた。私が飲食店で玉ねぎスライスを食べた唯一の思い出だ。それだけに貴重な思い出だ。玉ねぎスライスにかつお節と醤油、これは和食だろう。
玉ねぎが、親子丼や肉じゃがに使われても、洋食には欠かせない食材であることに変わりはない。カレー、シチュー、ハンバーグのつなぎ等に多用される。
チャーハンには玉ねぎか長ネギか悩ましい。個人的な好みでは、長ネギのみじん切りが合うと思う。どちらも使える料理は、親子丼だが、すき焼きに長ネギなので、牛丼も玉ねぎでなく、長ネギも合うと思える。カレーに長ネギを入れたら溶けて存在感がなくなり、残っていても噛んだシャキシャキ感が合わないと思う。やはり玉ねぎの方が良い。
長ネギは和食向き、玉ねぎは洋食向きと勝手に思っているが、父親の長ネギ親子丼のように、新たな長ネギと玉ねぎの使い道があるかも知れない。蕎麦つゆの薬味は、普通は刻みネギだが、玉ねぎのみじん切りはどうなのだろう。すき焼きに玉ねぎは牛丼のような甘みが感じられるかも。あさりと長ネギのクラムチャウダーはどうだろう。長ネギと玉ねぎの入れ替え戦術がどこまで成功するか、楽しみだ
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