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巻機山の思い出

こんなメモ書きがアルバムにあった。

― 越後国南魚沼郡塩沢にある名山にして、秋の紅葉が見事である。

― 遥かに見える円錐形の山は、割引である。巻機山の北方に位置し、登りゆくと常に左方にある。

― 様々な色に染まった木々を眺めながら、4時間程で山道を登りきり、広々とした尾根に至れば、夏山のように緑におおわれて、秋から夏に戻った心地がする。

その秋に登った。その時の思い出が蘇る。

前夜は、民宿に泊まった。座布団ほどの大きな笊に山盛りの蕎麦が出てきて、驚いた。これがホントの大ざるだと若者4人ががむしゃらに食べたが、食べきれずに残した。

民宿を出て登山道を探す

翌朝、民宿を出てから、登山道の入口を目指した。W君が先頭を歩きながら、地図を見ている。それについて3人が歩く。30分程歩いたが、登り口がない。「おかしいな、通り過ぎたのではないか」と、地図を見ていたW君に聞くと、「いや地図を見ていただけだよ」と言うのに一同あきれ、「何だあ、地図を見てるから登山道入口が分かってるのかと思ってたよ」とA君が大笑いする。私も笑う。いつも、A君はトラブルを笑いに変えてくれる。

来た道を戻ると、民宿からすぐの所に登山道があるのがすぐに分かった。この時点で1時間のロス。

紅葉が進んでいる落葉樹の林を登りきったら、巻機山は、高原のように広々としていた。緑の灌木に覆われて、季節が戻ったようだ。写真を見ると一人はランニングシャツである。

登り切ると山は緑の絨毯に覆われていた

巻機山頂に行く時間がないのに気づく。一番年長のTさんが、山頂に行く時間がないから、ここで引き上げようと言う。私たちは、登頂は諦めて、昼食をニセ巻機でとった。その時の写真を見ると、いつの間にか全員長袖シヤツを羽織っている。やはり秋なのだ。山の気温は変わりやすい。日も短くなった。1時間のロスが計画に大きく影響した。

久しぶりに蘇る巻機山だが、記憶はこの位だ。アルバムの写真の色が薄くなったように記憶も霞んでいる。アルバムから蘇る懐かしい青春の思い出 ― 巻機山。

下山

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