自転車に乗らなくなった
高齢者の仲間入りをしてからのこの数年、自転車に乗らなくなった。乗らなくても体は覚えていると言われているので、乗ろうとすれば乗れるだろうが、走り方が分からない。転倒による骨折も怖い。
かなり前になるが、国が急に(自転車と歩行者の事故が増えたからか)自転車は軽車両だから車道の端を走れということを言いだした。そして、車道には自転車レーンが設けられた。歩道を走る自転車が歩行者に接触しそうになると「自転車は車道を走れ」と罵声をあげる光景が見られた。
自転車にはしばらく乗っていないとどこをどう走るのが良いのか覚束なくなる。自動車が猛スピードで走り行く車道を自転車で走るなんて怖くてできない。歩道を走れば、違法走行かと自己嫌悪になるだろう。ますます高齢者から自転車は遠ざかって行った。
そう思う日常のなか、お巡りさんが歩道を自転車で通行しているのを見ることがある。先日、自転車に乗った5、6人のお巡りさんが前後に連なって歩道を走っていた。あれ、自転車は歩道を走ることができるのかと、改めて調べてみたい気持ちになる。
自転車は、騎馬、馬車、牛車、リヤカー、大八車と共に軽車両であり、車道の左側を通行することになっている。本当に自転車は、歩道を走ってはいけないのだろうか。
警察庁のHPに丁寧な自転車の走り方が載っていた。
「道路交通法上、自転車は軽車両と位置付けられています。したがって車道と歩道の区別があるところは車道通行が原則です。そして、道路の左側に寄って通行しなければなりません。」
車道を通行しないといけないが、原則だから例外があるのだろう。
「歩道を通行できる場合は、車道寄りの部分を徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げる場合は一時停止しなければなりません。」
歩道を通行できる場合があるらしい。
警察庁HPにある「交通ルール」をクリックして見るとこうある。
「(2)例外的に歩道を通行できる場合
自転車は、車道通行が原則ですが、
○ 道路標識等により自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき
○ 自転車の運転者が、高齢者や児童・幼児等であるとき
○ 車道又は交通の状況に照らして当該自転車の通行の安全を確保するため当該自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき には、歩道を通行することができます」
高齢者と児童・幼児は歩道を走れるか。確かに自転車乗りはじめの幼児が車道を走るなんて考えただけで恐ろしい。常識ある交通ルールに得心した。
最後の項は、自動車の通行量が激しい道路を自動車が通行するのは危ないから歩道を通行できるということかと思われるが、都心の道路のほとんどは自転車にとって安全ではない。例外でないほど例外が多い。先日見たお巡りさんが自転車に乗って歩道を通行していたのは、道路標識がある歩道か安全確保のため歩道を通行することがやむを得ない場合だったのだろうか。合法行為なのだろう。
とにかく自転車は車道左側通行が原則であるが、実際には、原則のままでは自転車の安全が確保できず、例外として、歩道通行を認めざるを得ないという流れのようだ。
自転車とは行き場所のない哀れな存在だ。車道を走れば自動車から危なっかしい邪魔な存在であり、歩道を走れば歩行者にとって危険な乗り物である。軽車両として軽視された存在が、近年の性能アップで歩行者との事故が増え、急に大きな存在になった。本当は、最初から自動車、自転車、歩行者の三区分に道路が整備されていたらいいのにと思っても、未来予測不可能は世の鉄則で、状況の変化に適応しようとしても困難なことが多い。わが国の狹い道路環境では、自転車レーンがせいぜいなのだろう。自転車レーンは、自転車が通行する道路の端の部分を明確化しただけで、安全が確保されていないのには変わりはない。柵や縁石で車道や歩道と区分された自転車専用道路がもっと作られると自転車乗りも安心だと思うのだが。
ただ、高齢者は、どうどうと歩道を自転車通行できる。それが警察庁から示されていただけでもうれしい。
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