日本橋店舗くずし字歩き
東京の日本橋には老舗と言われる店が多く残っている。街歩きをしていると古い個人商店の看板の文字がくずし字で書かれていることがあり、何の字かとふと歩みを止めて眺めたりする。
中央通りから入ったむろまち小路にある蕎麦屋の利休庵の暖簾と行燈の文字だが、生蕎麦の字はよく蕎麦屋で見かける。蕎麦の「そ」は「楚」、「ば」は「者」に濁点である。昔の人はよくこの者を使っていた。右の縦のニ文字は何だろう。御猪か、いや御緒のようだが、意味は分からない。右の行燈は、「蕎麦處」である。
左側の看板は、文久3年創業の割烹料理とよだのもの。「た」は「多」を使っている。「初代豊田米𠮷が屋台店から商いを始め、 以来、5代 160年に亘り」営業をしてきた老舗である。
上は、はんぺんやおでん種の販売で有名な日本橋の神茂(かんも)の看板、日本ばしの「ば」は「者」に濁点である。くずし字に注意して歩いていると、次第に目が慣れてくる。
中央通りからむろまち小路に入る角地にある鰹節の大和屋だが、和風建築を残す建物に江戸時代の町並みを彷彿とさせる。くずし字の屋がよい。その奥は、蕎麦屋の吉田の看板だが、大きな字で「そば處」とある。
江戸前の味を継承するあなご専門店の玉ゐ(たまい)の看板である。「玉ゐ」の文字が洒落ている。蒲焼きのあなご重を箱飯というらしい。
東京都中央区日本橋室町 4-3-6
次第に日本橋は再開発で大きなビルが建ち、こういう個人の建物が少なくなっている。それでも、まだくずし字を看板に使っている店が残っていて、往時の日本橋を偲ぶことができる。歩いて時々見かけるくずし字に各店が伝統を継承していきたいという気持ちを感じている。
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