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虹の広場にて

少年が半円形をした噴水の上に座っている。降りるときにつるっと滑り転げないかと気をもんでいると器用にもスピードをコントロールして、スルスルと滑ってきた。今度はよく登ったものだと感心していると、ゆっくり登り始めたら天辺まで登り切っていた。向こうの方には長い壁に白滝が落ちていて、その下で子どもたちが水遊びをしている。

樹の下のベンチに座り、こんな様子を見ていた。蝉がしきりに鳴いている。虹の広場という江戸川区の公園なのだが、このあたりから臨海公園に至るまで公園が多い。何でも都区部のなかで公園の面積が一番なのは江戸川区だそうだ。それも開発が遅かった南部には特に公園が多い。以前、義父が自転車で柏からやって来て、「ここは道路も広いし、公園もあるし良い所だ」と言っていた。ふたりして自転車をこいで清新町の団地の先を海岸の方まで行ったが、臨海公園が建設中で工事柵が設けてあった。公園のことからこんな30年以上も昔のことが思い出される。

公園には、それにまつわる偉人がいる。江戸時代に隅田川や飛鳥山に桜を植えて江戸っ子を楽しませてくれた徳川吉宗や日比谷公園はじめ多くの公園を造った公園の父と言われる本多静六がそうである。こうして公園でひとり座っていられるのも公園文化をもたらしてくれた偉人たちのおかげである。自宅の庭をいくら綺麗にしても樹木の植わる公園には敵わない。ベンチに座りただ眺めているだけで静かな心持ちになれる。全ての人に平等に開かれている公園の有難みを感じる。

空の色が次第に変わり始めた。そろそろ雲行きが怪しくなって来たので帰るとするか。子どもたちはなおも水遊びをしている。蝉は依然として鳴いている。

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