新幹線は速いから・・・
昨年の暮れに、新幹線のぞみから自由席がなくなり、全席指定になった。旅は気ままに、ふらっと電車に飛び乗り、空いている席に座るのが、旅の醍醐味で、どうも指定席は必要悪の感じがしている。
今、頭の中は、半世紀も前の新幹線の思い出に浸っている。
今では新幹線の速さは当たり前のことだが、在来線から新幹線に乗り換えた世代、いや乗り換えざるを得なかった世代には、驚異の速さだった。昔は、東京から大阪方面に「瀬戸」という夜行電車が走っていた。夜東京を立つと関西では夜明けになっていた。乗った列車は満員で、小さな子が立ち疲れて泣いていることもあった。それに比べたら、新幹線は快適そのものだ。
はじめて新幹線に乗ったのは、高校の修学旅行だった。あるクラスメイトは、洋食を食べながら、食堂車に座り続けていた。
いや、そんなことはどうでもよい。
とにかく新幹線は速く快適だった。1本タバコを立てると倒れずに立ち続ける程に揺れが少ないことに旅友だちと感激しあった。
新幹線が開通して10年位が立った頃だと思う。ある日、東京から豊橋まで乗った。しばらくして、ひとりの女性がドア際に立って泣いているのに気づいた。その泣き声が座っている自分の所まで聞こえた。何かあったのだろうか。脳裏に「駆けつける」という言葉が浮かぶ。肉親の不幸だろうか。速い新幹線が、緊急車両のように女性を駆けつけさせている。危篤ー速いー駆けつける、そんな言葉を連想した。
新幹線は速いから、泣いている人もいる。半世紀も前の新幹線の思い出だ。
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