今年の花火大会
今年も荒川の花火大会を見に行った。昨年よりは、人出が少なく、騒々しさが減っていた。江戸川区と江東区を繋ぐ荒川・中川に架かる葛西橋から見ることにした。橋は一方通行で、行きは橋の川上側を歩き、帰りは川下側を歩く。
花火大会が始まり、夜空に大輪の花が開いた。
歩くうちに見物人が増えたか、「立ち止まらないで下さい」という警備員や警察官の声がする。立ち止まると後から来る人の道を遮り、転倒すると大事故になる。橋桁に寄りかかり花火を見る人たちは、どうなるのだろうか。今日は人出が少なく、橋桁にも隙間がある。この人たちを動かすべきかそのまま花火見物をさせるべきか。警備員等の判断は人それぞれのようだ。人間観察は面白い。
「立ち止まらないで下さい」というアナウンスに橋桁から動かない人がいると公権力が通じないことに不満を覚え、あるいは不安になるのか、近づいて来て執拗に「聞こえてますか」と問い詰める人もいる。
ある警備員は「ここに立ち止まって見ていると花火が飛んで来てケガをしますよ」と移動を促している。確かに火煙の臭いがするが、少し意地悪な感じを受ける。よく言えば知略、悪く言えば虚言。川原には有料席があり、こちらの方が花火に近い。有料席では「花火が飛んで来てケガをしますよ」とは言えないだろう。
しかし、気持ちの良い光景には出会うものだ。警備員が高齢の私たち夫婦を見て、「ここ空いてるから入って」と橋桁の隙間を指さして案内してくれる。人に優しい行為には勇気がいる。もし仮に警備の原則は見物客を停滞させないことなら、やはり勇気ある行為であり、人間的な行為だ。見物客は花火を楽しむためにここに来ている。この行為に甘んじて、しばらく花火を楽しんだ。
こういうジレンマに人間は一生に何度か出会う。利用時間が過ぎたときに規則ですからと締め出すのは簡単だ。駆け込んでくる客に締めかかったドアを開けるかどうか。
帰ったら知人に花火の動画を送った。
ある友人から「花火綺麗」に続いて「ペルセウス座流星群の流れ星を30分位前に見た。ハッキリと赤い火の玉だった」と返信が来た。
流れ星が東京の夜空で見えたとはと驚いた。気持ちは、すでに宇宙に飛んでいる。花火がみすぼらしく見えてきた。やはり人工物より自然にロマンがあるようだ。