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小伝馬町から茅場町に

小伝馬町から茅場町に歩いた。水天宮に向かっている人形町の大通りを行くより、その方が近そうだったので、中側の通りを歩いたら、椙森神社(すぎもり)に着いた。参拝する人もまばらな静かな神社である。境内の説明板によると祭神は、倉稲魂大神(ウカノミタマ)、素盞嗚大神(スサノオ)、大市姫大神(オオイチヒメ)、大己貴命大神(オオナムチ)、四大神、恵比寿大神とあり、公式ホームページだと伍社稲荷大神とある。稲荷社のようだが、狛犬が両側にいて、きつねではない。日本橋の神社の不思議に、祭神からみると稲荷社なのに外観が稲荷社らしくない例が多い。正月には七福神巡りで賑わい、尚さら稲荷社であることに気づかない。最近、七福神が増えた気がする。神社の不思議のひとつだ。

堀留公園を過ぎて、日本橋川に近づいたあたりに小網神社があった。先程の椙森神社とは打って変わって、沢山の参拝者で賑わっていた。神社の祭礼かなと思ったが通常の参拝らしい。車が時々通るために、警備員が出ていて、安全確保に気を遣っていた。参拝の列に並ぶが、前の人が参拝にすごく長い時間をかけていて、とくに最後の一礼が長く、中々頭が上がらない。社務所で「健やかのお守り」を買いながら、「随分参拝者が増えましたね。数年前に来た時は、誰もいませんでしたよ」と言ったが、増えた理由は聞けなかった。

江戸時代から終戦直後まで日本橋川から堀留公園の先の方まで堀(東堀留川)があり、その跡が堀留公園になっている。掘ったのではなく、江戸時代に埋め立てながら埋め残して堀にしたらしい。それで堀留という。数年前に、そこからかつての堀を偲びながら小網神社に参拝した。受付は不在だったが、しばらするとご婦人が現れた。小網神社の外観からどういう神社か想像できなかったので、「ご祭神は何ですか」と尋ねたら、「福禄寿です」という。「あの〜七福神ではなく、本当のご祭神ですが」と再度、尋ねたら「お稲荷です」と言う。稲荷社と分かり落ち着いた。神社が得体が知れないとどうも落ち着かない質のようだ。とは言っても、記紀にない稲荷神が私的には落ち着かないのだが(伏見稲荷大社の全国展開らしいが)。堀留公園の方から来たと言ったら「主人が小さい頃は、神社の裏が堀だったと聞いてます」と言われた。目の前に堀があった、それを見て知っている人がいるということだけで、感動的である。

今日頂いた由緒書によると、小網神社の祭神は倉稲魂大神(ウカノミタマ)、市杵島比売神(イチキシマヒメ)、福禄寿である。ウカは食物の意味で、ウカノミタマは食物に宿る御魂、食物の神格化である。スサノオノミコトと神大市比売から生まれた。すると先の椙森神社には、倉稲魂大神、素盞嗚大神、大市姫大神の親子の三神がなかよく祭られていることになる。なお、市杵島比売神は、スサノオノミコトの剣から生まれた水の神で神仏習合により弁財天と同一視されている。

それにしても、この小網神社の賑わいは何事だろう。若者たちの信仰が厚いようだ。椙森神社の静けさとは対照的である。

小網神社
椙森神社

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