
良寛の和菓子
お悔やみを述べたら、薄墨色の箱の和菓子をいただいた。越後出雲崎大黒屋の銘菓で、良寛の書が包装紙に書かれている。ハガキには亡くなられたご主人が好まれていたとある。包装紙が破れないように丁寧にセロハンテープをはがした。
包装紙には、鉢の子の良寛の歌と鉢の子と雀の絵が印刷されている。
はちのこをわがわするれど
とるひとはなし
とるひとはなし
はちのこあわれ
托鉢にいつも持ち歩いていた鉢の子を子どもたちと花摘みに夢中になり、忘れてきたことに気づいて引き返し、道端の草むらの中に見つけた話を子どもの時に「りょうかんさん」という本で読んだ。それから、良寛に関する本は何冊か読んだ。
更に中の包装に、書を読む良寛の画に添えた歌
世の中にまじわらぬには
あらねども
ひとり遊びぞ われはまされる
箱中には以下の和菓子が・・・・
月の兎の饅頭
ーお腹をすかした老人の為にキツネは魚をとってきて、猿は木ノ実をとってきたが、何もできない兎はわが身を食べてと火に飛び込んで、それを憐れんだ老人(帝釈天)は兎を月に昇らせたという昔話
天上大風等の字が刻まれた瓦せんべい5枚
ー解良家で急に書きたい気持ちが沸き上がり鍋蓋に書いた「心月輪」(しんげつりん)のせんべいは入ってなかったが、
「一二三いろは」「天上大風」「忍是功徳本」(忍これ功徳の本なり)「独醒」(独り醒めたり)「積徳厚 受己薄」(徳を積むは厚く己に受くるは薄く)の5枚があった。食べるのがもったいない、見つめていたいせんべいだ。
良寛が好きだったという白雪糕(はくせつこう)
ー昭和5年に大黒屋の主人が再現したもの、その年は奇しくも良寛禅師百年忌に当たる。落雁の一種。
食べずに、包装紙や和菓子を見ているだけでも楽しい。ご主人が好きだった和菓子だという。きっと良寛のことが好きだったのだろう。故人のように良寛に親しみ、そしてその心に少しでも触れられたらと思う。


