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ポストとタバコ屋
赤い円筒のポストとタバコ屋は、あちこちにあり、昭和の町並みを代表する風景だった。今では、ポストは四角い形に変わり、都心には余り見られなくなった。実家近くの喫茶店前にレトロな赤いポストがあって昔ながらの円筒形をしている。これは珍しいと近寄り見ると投函口がふさがれていた。タバコ屋は、時々その店構えを残した家を見かけるが、店は閉まっている。
以前に銀座で友だちが郵便を出したいと言って、ポストを探そうとしたが、ローソンに郵便投函箱があると教えてあげた。うろうろ探していると、やはりポストは見つからず、ローソンが簡単に見つかったので、用を足すことができた。小さなポストを探すより、ローソンを探す方が簡単に見つかる。
住まい近くでは、歩いて10分程の範囲にローソンは7店舗、郵便局は3店舗ある。これでは、ポストが無くても不便でないだろう。私が知っている路上のポストは2つだけだ。いつもローソンの郵便箱に投函する。特に雨の日は安心感がある。路上のポスト内に雨が浸透するとは思えないが、投函の際に濡れるのを無意識に嫌うのだろう。
育った町には、ポストの先にタバコ屋があった。小学生の頃に、父からときどき「たばこを買ってきてくれ」と40円を渡されて、小学校の前にあるタバコ屋に買いに行った。店にはいつもおばあさんが座っていた。「しんせいをください」と言い、40円を出すと、黙って黄土色のタバコ箱を渡してくれた。
今では、タバコ屋もなくなったし、子どもがタバコを買うこともできなくなった。タバコだけが父親から頼まれた唯一の買い物だったが、私自身は、感化されずに喫煙とは縁のない生活を続けてきた。父が心臓発作を起こしてからタバコを吸えなくなったことが心のどこかにあるのかとも思うが、やはり不思議なものだなと思う。