春に咲く白菊の綿毛
道端の白い菊のいくつかが花の盛を過ぎて、綿ぼうしをつけいていた。
この間、たんぽぽの綿毛を子どもがフーと吹いいた。綿毛は風に乗ってふわふわと飛んでいく。よい季節になった。いい気分だ。
今日の白菊の綿毛も風が吹けば、ふわふわと飛んで行くのだろうな。私は、手で綿ぼうしをたたいてみた。意外だった。パラパラと落ちて、少し飛んだものもあるが、大部分は下の地面に落ちてしまった。風がない日に綿ぼうしをたたいてはいけないのだ。
悪いことをしたなと思った。人間の手の不必要な力が、菊の運命を変えてしまった。自然のままに、風が吹いたら、風に乗って遠くへ飛んで行っただろうに。
綿毛は遠くに飛んで、生存領域を広げて、子孫を繁栄させるために生まれてきた。それなのに不必要な人間の力が綿ぼうしの首をたたいて、地面に落としてしまった。人間のすることはこの程度なのだろう。黙って自然の成り行きにまかせておけばよかったのにと悔やまれる。
あれから、道端の白菊の綿毛を見ると、上手く風に乗って飛んで行ってほしいと見守る気持ちでそこを通り過ぎる。