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吉野ケ里遺跡の前漢鏡の銘文「久不相見 長毋相忘」

2012年の夏、吉野ケ里遺跡を訪ねた。熱い日だった。入口にあるミストのシャワーが火照った体を暫し冷やしてくれた。公園内をバスが走っていた。それに乗り終点で降りて、遺跡内を散策した。

いくつか印象的な光景が目を引いた。復元された楼閣や倉庫等があったが、そんな中で、あれっと思ったもののひとつが、環濠の堀と柵の位置関係だ。通常、城の堀と石垣の関係は、堀が外側にある。が、吉野ヶ里遺跡は、柵の内側に空堀がある。柵をよじ登って来た敵を堀で撃退しよういうのか、不思議だった。

ムラの入口にある門の上に鳥が復元されていた。雲南や東南アジアの高地民族の門にも鳥がつく門を写真でみたことがある。吉野ヶ里遺跡の門は、弥生文化が大陸の高地民族と関係深いことを示していた。重層的な日本民族のひとつの起源がここにあるようだ。

火起こし体験も初めてだった。舞ギリ法という火起こしの方法だった。回転式の火打道具にある横棒を上下に動かすと紐を通じて動力が伝わり中心の棒が回転し、やがて摩擦で煙が出始めるので、頃合いを見て、もぐさに火を移すのだが、なかなか火はつかず、かなり格闘した。適温に達したときにスタッフの方が来てくれて上手く、もぐさに火を移してくれたが、ふーと息を入れると勢いよく火が燃え上がった。

展示してある前漢鏡の銘文には心打たれた。
その銘文は、

久不相見 長毋相忘
(久しく相見えずとも、長く相忘ることなからむ)

「長いこと会わなくても、お互いにいつまでも忘れないでいましょうね」という前漢時代の人の心持ちは、今の人と全く同じだと思えて、人間の普遍性に気づかされた。国を越え、時を越えて、人間の感情は変わらないのだなと思う。 (写真がなくてすみません)

  2023.1.21 


                                       

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