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地名の読み方雑感
高崎線が上野を出ると次の駅は、尾久である。隣席で妻が「尾久をオグと言う人がいるが、オクだ」と言う。わたしもオクだと思っていた。
高校受験で、ある都内の私立高校を受けた。その時に話をした受験生が住まいはオクだと言う。尾久を知らなかったわたしは、ボク?と聞き返した。だから、自分の中で尾久はオクだ。地元の人が言うのだから間違いなくオクだ。
地名の読み方は難しい。発音しやすい方に流れることもある。呼び方が先にあり、後から漢字が当てられて、それが当て字のこともあるから益々読み方は難しい。
秋葉原を子どもの頃、ずっとアキバハラと言っていた。周りの人たちが言ってるからそう覚えたのだろう。アキバハラかアキハバラかと家で話題になったことを覚えている。
秋葉原には明治3年創建の秋葉神社があったが、明治21年に秋葉原駅舎ができるときに台東区松が谷に移っている。秋葉神社があったから秋葉原と言われる。
ウィキペディアを見ると、秋葉大権現は「あきはだいごんげん」、秋葉山は「あきはさん」、何れも清音だ。秋葉原が誕生したときに、江戸っ子は、あきはっぱら、あきばっぱら、あきはがはら、あきはのはらと呼んだようだ。秋葉(あきは)なら秋葉原(あきははら)だが、「はは」と続くのは発音しづらいから、どちらかが濁音になるのが自然だ。秋葉と原がどちらかが濁音にならなければならないとすると原が折れて原(ばら)になったということだろう。「は」の後に濁音がない音がくると「ば」になる。往年の相撲力士秋葉山は、「あきはやま」でなく「あきばやま」だ。秋葉山の秋葉の火祭りは、「あきはのひまつり」になるのだろうが、言いにくいから、「あきばのひまつり」と言ってしまう。これらは、正誤の問題でなく、音韻学上の問題だと思える。
なお、駅名秋葉原のホーム看板のひらがなは「あきはばら」で、東京神社庁HPの秋葉神社(台東区)は「あきばじんじゃ」である。
雑司が谷の鬼子母神は、「きしもじん」か「きしぼじん」かも面白い。仏教用語は、伝統的に呉音で読まれる。母の呉音は「モ」、漢音は「ボウ」だから、寺院の鬼子母神は「きしもじん」だ。聖徳太子、聖林寺、聖観音、聖人いずれも、聖は呉音ショウである。ただし都電鬼子母神前は「きしぼじんまえ」だ。仏教に関わるものは呉音ということは、日本文化のひとつである。
千葉県に下総松崎という駅があるが、この松崎を「まんざき」と読む。これを知ってから、松崎を見ると「まんざき」と読みたくなる。西伊豆に松崎がある。職場友達と修善寺に行ったとき、地図を見て松崎を「まんざき」と言ったら、先輩から「まつざき」だよと笑いながら正された。失敗した。
尾久のように地名の読み方は、地元の人に従いたい。聖林寺、長聖寺のように寺院は呉音で読む。これは伝統的日本文化で、やはり大切にしたい。地名の読み方は音韻学的に自然な読み方に変わることがある。間違いだ何だと余り目くじらを立てるのは大人気ない気がする。