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20歳も21歳も同じだよ

昔、伊豆湯ヶ島の湯本館という川端康成が『伊豆の踊子』を執筆したという宿に泊った。私の部屋の名前は「川端さん」といった。「ここで書いたんですか」と聞いたら、案内の寡黙な老人がうなずいた。

夕方ぶらりと外に出て、狩野川の川辺まで降りた。川風に当たって涼んでいると、浴衣姿の男性が寄って来て話しかけた。一言二言ことばを交わした後、20歳(はたち)かと聞くので、21歳ですと答えた。すると「わしらにとっては、はたちも21歳も同じだよ」と笑った。その言葉がいつまでも記憶に残った。

最近、その言葉が身に染みて分かる年齢になったことに気づく。

数日前に電車の座席に腰掛けて車内を見渡すと、私の子どもの年齢に近い人たちがずらっと座っていた。しかし歳が読めない。数歳の違いどころか、10歳の差もあやしい、高齢者になった自分は人の歳が読めなくなっている。狩野川の川辺で言われた「20歳も21歳も同じだよ」ということは、こういうことなのかと、つくづく自分の歳を感じた。                         

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