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飛行機の席は窓側か通路側か

友だちと飛行機に乗る時に決めなくてはならないのが、座席の窓側か通路側かだ。何度か一緒に旅行した友人は、トイレが近いので、通路側に座りたがる。私は、窓の外の景色を見たいので窓側がうれしい。団体旅行で席が決められていて、通路側が見知らぬ外国人だとトイレに立つときに、英語ですみませんを言うのが、ちょっと煩わしいが、それでも窓側が良い。最悪なのは、大型旅客機の3人席の真ん中だ。飛行時間の大半は、睡眠と食事に費やされるから窓からの景色を楽しめるのは、離陸後、着陸前の数分間で、それ以外は窓は閉ざされている。

景色を見るのが好きなのは私だけではないようで、エストニアのタリンを夜に離陸したときに、10代の若者が、写真を撮りたいから席を変わってくれと、窓側の私に言ってきたので、変わってあげたことがある。確かに、タリンの夜景は綺麗だった。のぞき見た若者のカメラにも美しい夜景が写っていた。アニメが好きで日本に行きたいが、1000ユーロ必要だからと言っていた。日本のアニメの影響は大きい。時々、日本人であることでずいぶん得をする。

空から見た成田の夜景も満更ではない。成田上空を飛んでいたヨーロッパからの航空便が着陸しようと旋回したときに成田市街の夜景が乗客を覆うように目に入ってきた、その瞬間、わーと言う歓声が上がった。その後も、そういう光景に会えるかと思っていたが、歓声が上がるほどの夜景には出会えていない。何度か成田に夜到着しているのに不思議だなと思える。航路が変わったのか、成田市街から夜間の光が消えたのか。

いくつか、飛行機の窓から見た景色を覚えている。アンカレッジから北極経由で飛んだ時に乗客が窓を開けたらまぶしい北極の光が入ってきた。ギリシャからパリに飛ぶ途中で見たアルプスの白い山々。リマからクスコへの飛行機から見たアンデスの山々。上海から成田に向かう帰路に見た九州、瀬戸内海、近畿、東海の地図で見るのと同じ景色。屋島、関西空港、駿河湾からの富士山、伊豆の大室山が分かった。

飛行機の座席は窓側か通路側かという自問から、こんな個人的な思い出になったが、旅行好きな友人に話しても、どうも体験が違うようだ。どうも海外旅行は窓からの景色を楽しむようにはできていないようだ。だいたいツアー旅行は夜立つことが多い。夜間飛行である。

飛行機に乗るとしばらくすると食事が運ばれ、座席にある画面で映画を見て、やがて機内は暗くなり睡眠時間になり、数時間するとガタガタとした音で目を覚ます。CAがワゴンを押して食事を運んでくる。窓側に座っていても恐る恐る窓を開ける。青い空、白い雲が目に入り、まだ寝ている乗客のことを考えて窓を閉じる。

飛行機の座席は窓側か通路側かという問自体が意味がないのかも知れない。トイレに行きやすいかどうかが正解なのだろう。ただ数少ない海外旅行の経験だが、窓からの景色が貴重な思い出として残っていることだけでも幸運なのかも知れない。



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