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猫の恩返してあるんだね
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何十年も昔の話である。
縁側に座って庭を漫然と見ていたら猫が現れた。ニャーと啼くので、ニャーと答えると、またニャーと啼く。妙に気が合う。そのうち縁側に小屋を置いたら居ついた。
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秋が深まり、寒さが増した頃、毛布をひいてやり、さらにセーターを着せたりした。母が湯たんぽを入れてあげたが、朝には冷たくなっていた。
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夕方縁側で遊んで、自分だけ部屋に入ったら、恨めしそうにニャーと泣いた。そして、障子の隙間から室内を覗き、物欲しそうにしていた。障子を開けたら入ってきて、それから室内に住むようになった。
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慣れてきた頃には、明け方に私の掛け布団の上で寝ていることもあった。気づいていない私に父親が「猫がお前のふとんの上で寝ていた」と教えてくれた。
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しばらく姿が見えないと思ったらネズミをくわえて帰ってきた。後で人からネズミを捕ったらほめてあげないといけないと教わった。
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歳だったのか次第に弱っていった。冬のある日、具合が悪そうなので、動物病院に連れて行った。最後には、熱が低すぎて、もうだめだと言われた。連れて帰り、台所の一番温かい場所に置いてあげた。全く食べなくなった。
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死ぬ前の日に魚を皿に置いたら、啼いてすり寄ってきた。その後は小屋に入ってじっとしていた。最後は体をぶるっと震わせて亡くなった。父親が数珠を手に取り読経して弔ってくれた。
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母が、近所の人に猫の話をしたら、「そのうち猫の恩返しで、いいことがあるわよ」と言われたらしい。そしたら、その後、本当に姉の結婚やら、私の就職やらと良いことが続いた。「猫の恩返しって、あるんだね」と母が笑いながら言った。